その他
ドロロセンパイがいきなりラボを訪ねてきた。俺は仕事中だから後でと言ってもセンパイは引き下がるどころか何度も俺の名を呼んだ。俺は諦めてキーボードから手を止め、センパイを振り返った。
「いきなり何スか」
センパイはドアの前にぽつんと立っていた。そしてゆっくりと口を開く。
「どうして拙者の無視ばかりするのでござるか」
「あの、今じゃなくてもいいなら」
「クルル殿は頭が良いから分かってるでござろう」
センパイは俺の方へ歩いてきた。これは面倒くさいことになりそうだと戸惑いながらも俺は椅子を回ししっかりとセンパイに向き合った。そして何か言おうと思ったが上手く言葉が出てこない。
「言わなきゃ分からない?」
俺もバカじゃない。ドロロが言おうとしていることは何となく察しが付いた。俺も自覚があった。俺は無意識にセンパイを避けている、というか避けざるを得ない。あの目に見つめられると心の中まで見られているような気がしてつい顔を背けてしまう。そのことがセンパイは気になったらしい。
「あー分かった分かった。俺が悪かったですよ。で? だから何なんです」
俺がそう言うとセンパイは目の前にチケットを差し出した。それは今話題の映画のチケットだった。それも二枚。
「一緒に映画を観てくれない?」
「は?」
俺は思わず間抜けな声が出た。思いもよらぬ展開だった。だがよく考えればこれはもしやセンパイなりのデートの誘いなのでは、と思った。それが答えであるようにセンパイの手はわずかに震えていた。生憎だがその手を握り込んでやれる度量が俺にはない。俺は手を伸ばしてチケットを受け取った。
「週末なら空いてます」
「じゃあその日で」
センパイはその後何か言おうと口を動かしていたが結局何も言わなかった。
「しからば、これにて御免!」
センパイが煙に包まれて消えそうになる。俺は咄嗟に言った。
「デートだと思っていいンすか」
するとセンパイはみるみる顔を赤く染め分かりやすく動揺を見せた。
「そ、それはクルル君が決めることだよ」
「じゃあデートってことで」
俺は人差し指と中指の間にチケットを挟むとセンパイに向かって振り上げた。センパイは慌てて去るように煙の中に消えていった。
「あー……どうすっかな」
俺はチケットをテーブルの上に置く。センパイは紛れもなく俺に期待している。映画中に手を握るなど気の利くことが俺にできるだろうか。センパイとデートという楽しみなものが一転、緊張に変わる。
「俺に押し付けんなよ……」
センパイは割とそういうところがずるい。後輩に重役を任せるなと言いたくなる。だが去り際のあの顔。可愛かったなぁとしみじみ思う。映画中に手を握ったらセンパイはまたあの顔を見せてくれるだろうか。
「いっちょ、頑張りますかぁ」
俺は伸びをしてモニターに向き直った。
「いきなり何スか」
センパイはドアの前にぽつんと立っていた。そしてゆっくりと口を開く。
「どうして拙者の無視ばかりするのでござるか」
「あの、今じゃなくてもいいなら」
「クルル殿は頭が良いから分かってるでござろう」
センパイは俺の方へ歩いてきた。これは面倒くさいことになりそうだと戸惑いながらも俺は椅子を回ししっかりとセンパイに向き合った。そして何か言おうと思ったが上手く言葉が出てこない。
「言わなきゃ分からない?」
俺もバカじゃない。ドロロが言おうとしていることは何となく察しが付いた。俺も自覚があった。俺は無意識にセンパイを避けている、というか避けざるを得ない。あの目に見つめられると心の中まで見られているような気がしてつい顔を背けてしまう。そのことがセンパイは気になったらしい。
「あー分かった分かった。俺が悪かったですよ。で? だから何なんです」
俺がそう言うとセンパイは目の前にチケットを差し出した。それは今話題の映画のチケットだった。それも二枚。
「一緒に映画を観てくれない?」
「は?」
俺は思わず間抜けな声が出た。思いもよらぬ展開だった。だがよく考えればこれはもしやセンパイなりのデートの誘いなのでは、と思った。それが答えであるようにセンパイの手はわずかに震えていた。生憎だがその手を握り込んでやれる度量が俺にはない。俺は手を伸ばしてチケットを受け取った。
「週末なら空いてます」
「じゃあその日で」
センパイはその後何か言おうと口を動かしていたが結局何も言わなかった。
「しからば、これにて御免!」
センパイが煙に包まれて消えそうになる。俺は咄嗟に言った。
「デートだと思っていいンすか」
するとセンパイはみるみる顔を赤く染め分かりやすく動揺を見せた。
「そ、それはクルル君が決めることだよ」
「じゃあデートってことで」
俺は人差し指と中指の間にチケットを挟むとセンパイに向かって振り上げた。センパイは慌てて去るように煙の中に消えていった。
「あー……どうすっかな」
俺はチケットをテーブルの上に置く。センパイは紛れもなく俺に期待している。映画中に手を握るなど気の利くことが俺にできるだろうか。センパイとデートという楽しみなものが一転、緊張に変わる。
「俺に押し付けんなよ……」
センパイは割とそういうところがずるい。後輩に重役を任せるなと言いたくなる。だが去り際のあの顔。可愛かったなぁとしみじみ思う。映画中に手を握ったらセンパイはまたあの顔を見せてくれるだろうか。
「いっちょ、頑張りますかぁ」
俺は伸びをしてモニターに向き直った。
