その他

「川辺に菜の花が咲いてたでござるよ」
 ドロロはクルルと同じ黄色の花を手にし、ラボを訪れた。菜の花を見た時、真っ先にクルルの姿が浮かんだのだった。花を贈ったら喜んでくれるだろうか、そんな淡い期待を胸に辿り着いたラボでクルルは容赦ない言葉を口にする。
「それ、虫でも付いてるぜ。機械に入り込んだらどうすんだよ」
 モニターに向かいドロロに背を向けたまま言い放つ。ドロロは思いもしなかった言葉に驚き一瞬言葉を失った。
「……かたじけない。しからばこれは拙者の家に飾るとするか……」
 クルルの手が止まる。ドロロの声のトーンが落ちたのを察したようだった。クルルに悪気はなかった。ただラボ内に虫が入ったら困るのは本音だった。クルルはデスクに腕を伸ばす。置いてあった空の酒瓶を取ると椅子を降りドロロに手渡す。ドロロは驚いたようにそれを受け取った。
「花瓶が必要だろ?」
「あ、ありがとう」
 ドロロは瓶をまじまじと見る。貼られたラベルを見るに相当強い酒のようだ。
「クルル君ってお酒強いんだね」
 呑気な返しにクルルがにやりと笑う。
「アンタが潰れてるとこ、見てェな」
「拙者はアサシンでござるよ」
 クルルはドロロに触れそうなほどに顔を近づける。
「アサシンだから、見てェの」
 ドロロは身構える。だが、「あ、キスはしませんよ」というクルルの言葉で我に返った。ドロロは急に恥ずかしさがこみ上げてきた。一人だけ顔を赤くして、その様子すらクルルに面白がられている。
「もう、帰るでござる」
「今度飲みましょう、強い酒用意しときます」
「望むところ」
 ドロロは家に帰ると酒瓶に菜の花を挿して飾った。鮮やかな黄色はやはりクルルを思わせた。
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