その他

 日向家の地下室に設けられたケロロ軍曹の部屋、いわゆる軍曹ルーム。この部屋を通らない限り秘密基地への出入りはできないという不便な作りになっている。だからなのか隊員たちはみな平気で彼の部屋に入り浸り、またノックもせずに部屋を開ける。だからノックの音がすればそれが誰であるのか、ケロロにはすぐに分かった。
「隊長殿、失礼致す」
 あぐらをかいて漫画を読んでいたケロロは適当に返事をする。
「どーぞ」
 ドアが音を立てて開くとドロロが入ってきた。ケロロはドロロがいようと漫画から目を離さない。ドロロはそんなケロロを見て言った。
「また漫画など読んでいるのでござるか」
「何しようが我輩の勝手であります」
「それでギリギリになって提出書類をみんなに押しつけたりしないでよ」
 ドロロの言葉にイラッと来てケロロは彼を見た。
「ドロロだって昔はよく漫画読んでたじゃん!」
「昔は昔。大人になってからは漫画など読まないでござる」
 ドロロの冷たい言葉にケロロは言い返す気にもならず溜め息を吐いた。
「ドロロ、昔は可愛かったのになぁー」
 ドロロはその言葉に意外そうに目を丸くした。
「ケロロ君、僕のことそんなふうに思ってたの?」
「オレの言うこと何でも聞いてさ、後ろ追いかけてきてたじゃん」
「ケロロ君は昔の僕が好きってこと?」
「……なんか、めんどくさいでありますな」
「もう今の僕は可愛くないってこと!?」
「ああー! もう! しつこいでありますよ」
 ケロロは漫画を放ってドロロに向き直る。
「今の強いドロロも好きだけど、たまには昔のドロロが、いやゼロロに会いたくなるの!」
「それならクルル殿に頼んで」
「そういうことじゃねぇよ!!」
 ケロロは大声を出したせいではぁはぁと息切れを起こしていた。
「ケロロ君……大丈夫?」
 ドロロはケロロの顔を覗き込む。その顔は年を取っても昔から変わらないケロロの顔だった。黒い目はドロロを捉えて離さない。遠くに突き放したいくらい嫌いだった。会うだけでトラウマが蘇る、そんな存在。
「……ケロロ君、僕ね」
 言いかけて言葉は止まる。君のことが大好き。でも、大嫌いなんだよ。初めてできた大好きな友達。いつもいじめてくる大嫌いな友達。その二人は同じ人。
「お前はオレのこと好きだろ」
「……」
 心を読んだような言葉にドロロは黙る。自分でもよく分からない感情だった。だというのにケロロは自信たっぷりにそんなことを言うから余計に分からなくなる。
「じゃあさ、オレのこと殺せるわけ?」
 黒い目が言った。いつもと違う真面目な声色にドロロは固まった。必死に答えを探しても頭は動いてくれなかった。ケロロがニコッと笑う。
「オレのこと大好きじゃん」
 ケロロの手がドロロの頭を撫でた。まるで子供のように。だがそれは好きだから、とは何かが違っていた。ドロロは違和感を胸に抱いたまま何も言うことができなかった。圧力、あるいは。
「あ~腹減った! 何か食べ行こ、ドロロのおごりで」
「なんでだよ……」
 そう言いながらもドロロはケロロの後を追って冷蔵庫の中へ入っていった。
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