その他
最近めっきり寒くなったと空を見ながらドロロは思う。鰯雲の広がる空が落ちるように近いのだ。晴れていても暑さはなく、むしろ肌寒い。今日は絶好の焚き火日和だろうとドロロが日向家を訪れると、玄関先に居た夏美の手には見慣れない手袋がはめられていた。ピンクの迷彩柄は夏美によく似合っていて、その手袋はまるで夏美のために作られたもののように見えた。夏美は機嫌よくドロロに手袋を見せつけた。
「じゃーん! ギロロがくれたんだ♪」
「ギロロ君が?」
ドロロは驚いて目を丸くした。ドロロはギロロが夏美のことを好きだとは薄々気がついていた。だが手袋を贈るような関係だとは思っていなかった。
「さようでござったか。よく似合っているでござるよ」
ドロロはそう言って笑顔を作ると夏美の下を離れた。そして中庭へ向かい焚き火をするギロロへ声をかけようとして声が詰まった。ギロロの赤い手には無数の傷があり、指には包帯が巻かれていたのだった。ドロロはすぐに察した。あの手袋は買ったものではない。ギロロが作ったのだと。
「ドロロか、来ていたのか」
ギロロはドロロに気が付くと声をかけた。
「……ギロロ君、手が」
「あ、ああ。少し怪我をしてな」
ギロロは木の棒で焚き火をかき混ぜた。ぱちぱちと爆ぜる音が二人の間に流れた。
「夏美殿、嬉しそうだったでござるよ」
ドロロがそう言うとギロロは照れ隠しのように焚き火をかき混ぜることに集中しているふりをした。
好きな人を思ってできた傷なら痛くもないのだろう。羨ましい、ドロロはそう思ってしまう自分が嫌だった。あれだけ愛されている夏美を見て嫉妬しないわけがなかった。無理やり絞り出した言葉を口から丁寧に出した。
「今日は冷えるね」
悟られないように、上手く取り繕う。ドロロはギロロの隣に腰を下ろし暖を取った。伸ばした手が熱い。これ以上近付けない。ドロロは思った。もし彼に愛されたならばどんなに幸せだろう。手の傷など痛くもないほどに深く愛されてみたい。ドロロはギロロの温もりを知ることはないのだろうと火を眺めながら思った。
「ここに来ればいつでも温かいぞ」
ギロロの言葉に他意はない。だが何かを含んだような言い回しにドロロはゆっくりと息を吐いた。
「ギロロ君に甘えて寒い日はお邪魔しようかな」
ドロロがそう言って笑うとギロロもつられて笑った。すぐそばにいるのに、彼との間に阻む見えない壁。この壁を打ち崩せたなら。言葉一つで崩せてしまう脆い壁を崩す勇気などない。それならばずっと壁を造ったまま彼の隣に居ることを選んでしまう。そんなドロロをギロロは軟弱者だと笑うだろうか。そう思いながらギロロの横顔を眺めていた。
「じゃーん! ギロロがくれたんだ♪」
「ギロロ君が?」
ドロロは驚いて目を丸くした。ドロロはギロロが夏美のことを好きだとは薄々気がついていた。だが手袋を贈るような関係だとは思っていなかった。
「さようでござったか。よく似合っているでござるよ」
ドロロはそう言って笑顔を作ると夏美の下を離れた。そして中庭へ向かい焚き火をするギロロへ声をかけようとして声が詰まった。ギロロの赤い手には無数の傷があり、指には包帯が巻かれていたのだった。ドロロはすぐに察した。あの手袋は買ったものではない。ギロロが作ったのだと。
「ドロロか、来ていたのか」
ギロロはドロロに気が付くと声をかけた。
「……ギロロ君、手が」
「あ、ああ。少し怪我をしてな」
ギロロは木の棒で焚き火をかき混ぜた。ぱちぱちと爆ぜる音が二人の間に流れた。
「夏美殿、嬉しそうだったでござるよ」
ドロロがそう言うとギロロは照れ隠しのように焚き火をかき混ぜることに集中しているふりをした。
好きな人を思ってできた傷なら痛くもないのだろう。羨ましい、ドロロはそう思ってしまう自分が嫌だった。あれだけ愛されている夏美を見て嫉妬しないわけがなかった。無理やり絞り出した言葉を口から丁寧に出した。
「今日は冷えるね」
悟られないように、上手く取り繕う。ドロロはギロロの隣に腰を下ろし暖を取った。伸ばした手が熱い。これ以上近付けない。ドロロは思った。もし彼に愛されたならばどんなに幸せだろう。手の傷など痛くもないほどに深く愛されてみたい。ドロロはギロロの温もりを知ることはないのだろうと火を眺めながら思った。
「ここに来ればいつでも温かいぞ」
ギロロの言葉に他意はない。だが何かを含んだような言い回しにドロロはゆっくりと息を吐いた。
「ギロロ君に甘えて寒い日はお邪魔しようかな」
ドロロがそう言って笑うとギロロもつられて笑った。すぐそばにいるのに、彼との間に阻む見えない壁。この壁を打ち崩せたなら。言葉一つで崩せてしまう脆い壁を崩す勇気などない。それならばずっと壁を造ったまま彼の隣に居ることを選んでしまう。そんなドロロをギロロは軟弱者だと笑うだろうか。そう思いながらギロロの横顔を眺めていた。
