その他
いつもテントばかりじゃ飽きるでしょ。そうドロロは言った。俺たち二人が会うのは決まって日向家の庭にある俺のテントの中だった。狭く何もないテントでは確かに持て余すこともあった。しんとした空気に気まずくなることもあった。だがそれでも場所を変えようなどと思ったことはなかった。俺はドロロといられるならどこでもいいと思っていたし、何よりテントの中なら人目につくことはない。何かと都合がよかったのだ。だがせっかくのドロロの提案を無碍に扱うわけにはいかない。宇宙人街に男二人で繰り出すのは少し気が引けたが、断るのも申し訳なく感じた。
俺たちはテントを出て宇宙人街へ行くと店を探してふらふらと歩く。最初に見つけたレトロ風な造りの喫茶店に入ると、扉に付けられた鈴がカラカラと鳴りウェイトレスがこちらを見た。
「いらっしゃいませ! 二名様でよろしいですか?」
ウェイトレスに案内され俺たちは窓際の席に着いた。長いレザーのソファに向かい合って座るとドロロが窓の外を見た。
「せっかく窓際なのに建物しか見えないでござるな」
宇宙人街は人工的に作られた場所で空も自然もない。悲しげに笑うドロロを横目に俺は立て掛けてあったメニュー表を開く。ざっとドリンクメニューに目を通して一番無難なレギュラーコーヒーを選んだ。
「ドロロは何を頼むんだ?」
「ギロロ君と同じものを」
「なら、コーヒーだぞ」
ドロロは頷く。普段は茶ばかり飲んでいるが地球に来る前はコーヒーや紅茶も飲んでいたのを思い出す。店員を呼びコーヒーを二つ注文する。腹は減っていない。サンドイッチやナポリタンなどもメニューにはあったが頼む気はなかった。
せっかく喫茶店に来たというのに特に会話も弾まずドロロは窓の外ばかり見ていた。下手に場所を変えたからか、そわそわと落ち着かずどんな話をしたらいいのか分からなかった。これでは逆効果ではないかとテーブルの下で拳を握りしめる。提案したのなら会話の一つでもしてくれと心の中で思った。
しばらくするとウェイトレスが銀のトレーにコーヒーを載せて持ってきた。白いカップに黒いコーヒーが湯気を立てていた。俺はテーブルの上に置かれたシュガーポットをドロロに差し出す。
「砂糖入れるか?」
「ギロロ君は?」
「俺は入れん」
そう言いながらふと気が付いた。ドロロは先程から俺と同じものを飲もうとしている。俺は言葉を選んで口を開く。
「……ブラックは胃に悪いぞ」
テーブルの端に置かれていたミルクポーションをつまみドロロに渡した。
「ギロロ君が入れないなら拙者も入れないでござる」
「……さっきから何を考えている?」
ドロロは丸い目で俺を見た。そして嬉しそうににこにこと笑うとカップを持ち上げる。
「ギロロ君と一緒がいいんだよ」
そう言うとコーヒーを一口啜った。俺は何も言い返せず黙ってコーヒーを飲んだ。温かい苦味と酸味が口の中に広がった。
「同じものを飲めば、同じ味を共有できるでござろう」
今君が飲んでるものと同じ味なんだって思えるから……。ドロロは恥ずかしげもなくそんなことを言った。聞いてる方が恥ずかしくなって俺は溜め息を吐く。
「くだらん……」
俺の言葉にもドロロは相変わらずにこにことしていた。
「だって、せっかくのデートを無駄にしたくないんだもの」
ドロロは両手でカップを握りしめた。
「人目が多いからくっつくわけにもいかないし……こうするくらいしかできることがないから」
ドロロはコーヒーを見つめながらもごもごと言った。
「やはり、テントがいいな」
俺の言葉にドロロはこくこくと頷いた。目の前にいるのに触れられないのは辛かった。
「飲み終わったら帰るぞ、俺のテントに」
俺はドロロの真似をしてカップを両手で握りしめた。するとそれに気付いたドロロは笑って、より一層カップを強く握った。俺がミルクポーションを入れるとドロロも真似て入れた。角砂糖を二個入れるとドロロも二個入れた。ぬるく甘ったるくなったコーヒーを飲み干して会計を済ませ店を出る。甘すぎたねとくすくす笑うドロロの手を繋げないことが悔しかった。テントに帰ったら真っ先にドロロの手を握ろう。そしてコーヒーの味のキスをしよう。
俺たちはテントを出て宇宙人街へ行くと店を探してふらふらと歩く。最初に見つけたレトロ風な造りの喫茶店に入ると、扉に付けられた鈴がカラカラと鳴りウェイトレスがこちらを見た。
「いらっしゃいませ! 二名様でよろしいですか?」
ウェイトレスに案内され俺たちは窓際の席に着いた。長いレザーのソファに向かい合って座るとドロロが窓の外を見た。
「せっかく窓際なのに建物しか見えないでござるな」
宇宙人街は人工的に作られた場所で空も自然もない。悲しげに笑うドロロを横目に俺は立て掛けてあったメニュー表を開く。ざっとドリンクメニューに目を通して一番無難なレギュラーコーヒーを選んだ。
「ドロロは何を頼むんだ?」
「ギロロ君と同じものを」
「なら、コーヒーだぞ」
ドロロは頷く。普段は茶ばかり飲んでいるが地球に来る前はコーヒーや紅茶も飲んでいたのを思い出す。店員を呼びコーヒーを二つ注文する。腹は減っていない。サンドイッチやナポリタンなどもメニューにはあったが頼む気はなかった。
せっかく喫茶店に来たというのに特に会話も弾まずドロロは窓の外ばかり見ていた。下手に場所を変えたからか、そわそわと落ち着かずどんな話をしたらいいのか分からなかった。これでは逆効果ではないかとテーブルの下で拳を握りしめる。提案したのなら会話の一つでもしてくれと心の中で思った。
しばらくするとウェイトレスが銀のトレーにコーヒーを載せて持ってきた。白いカップに黒いコーヒーが湯気を立てていた。俺はテーブルの上に置かれたシュガーポットをドロロに差し出す。
「砂糖入れるか?」
「ギロロ君は?」
「俺は入れん」
そう言いながらふと気が付いた。ドロロは先程から俺と同じものを飲もうとしている。俺は言葉を選んで口を開く。
「……ブラックは胃に悪いぞ」
テーブルの端に置かれていたミルクポーションをつまみドロロに渡した。
「ギロロ君が入れないなら拙者も入れないでござる」
「……さっきから何を考えている?」
ドロロは丸い目で俺を見た。そして嬉しそうににこにこと笑うとカップを持ち上げる。
「ギロロ君と一緒がいいんだよ」
そう言うとコーヒーを一口啜った。俺は何も言い返せず黙ってコーヒーを飲んだ。温かい苦味と酸味が口の中に広がった。
「同じものを飲めば、同じ味を共有できるでござろう」
今君が飲んでるものと同じ味なんだって思えるから……。ドロロは恥ずかしげもなくそんなことを言った。聞いてる方が恥ずかしくなって俺は溜め息を吐く。
「くだらん……」
俺の言葉にもドロロは相変わらずにこにことしていた。
「だって、せっかくのデートを無駄にしたくないんだもの」
ドロロは両手でカップを握りしめた。
「人目が多いからくっつくわけにもいかないし……こうするくらいしかできることがないから」
ドロロはコーヒーを見つめながらもごもごと言った。
「やはり、テントがいいな」
俺の言葉にドロロはこくこくと頷いた。目の前にいるのに触れられないのは辛かった。
「飲み終わったら帰るぞ、俺のテントに」
俺はドロロの真似をしてカップを両手で握りしめた。するとそれに気付いたドロロは笑って、より一層カップを強く握った。俺がミルクポーションを入れるとドロロも真似て入れた。角砂糖を二個入れるとドロロも二個入れた。ぬるく甘ったるくなったコーヒーを飲み干して会計を済ませ店を出る。甘すぎたねとくすくす笑うドロロの手を繋げないことが悔しかった。テントに帰ったら真っ先にドロロの手を握ろう。そしてコーヒーの味のキスをしよう。
