その他
ドロロは「恋人だから」と事あるごとに口にした。紆余曲折を経てようやく俺と恋人になれたことが余程嬉しかったのか、同じ言葉を口癖のように繰り返した。
「恋人だから、いいでござろう」
ドロロ先輩はそう言って今日一日散々俺のラボに居座った挙句この部屋で夜も眠ろうとした。夜くらい自分の家に帰れと言いたくなるのをグッとこらえる。何せ布団は一つしかない。いくら恋人だろうが俺の布団を譲る気はない。ドロロはそんなの分かっていると言う顔をしてその代わりに椅子を借りたいと言った。俺がいつも座っているモニターの前に置かれた椅子だった。それは構わねェ、そう返すとドロロは椅子に座る。華奢な体がすっぽりと椅子に収まる様子は不似合いに見えた。ドロロ曰くアサシンはどこでも眠れるらしい。恐らくリクライニング機能も無視して直角の腰で寝るつもりだ。どう寝ようが先輩の勝手だが俺にはいささか寝心地が悪そうに見えた。だがそこまでしてラボで寝たいというこだわりに先輩らしさを感じた。否定するわけにはいかない。
「じゃ先輩、おやすみ」
「おやすみでござる」
俺は押し入れを開けて中に入った。戸を閉めると暗い空間でドロロを思った。ドロロがこのラボで寝るのは初めてのことだった。ふと思う。あの人はどんな顔をして眠るのだろう。そしてどんな夢を見るのだろう。そんなことを考えながら俺は眠りについていた。
目が覚めたのは結構早かったと思う。直感だが少なくともドロロよりは早起きだろうと思った。目覚ましをかけたわけでもないのに早起きしたのならやることはただ一つ。先輩の寝顔を見ることだ。俺は先輩を起こさないようそっと戸を開けて押し入れから出る。椅子は後ろを向いていて先輩の姿は見えなかった。背もたれに隠れきった先輩を見に俺はゆっくりと近付く。首を伸ばして覗き込んだ顔は、まるで死んでいるかのように静かだった。俺は思わず顔の前に手をかざす。どうやら呼吸はしているらしかった。先輩は不安になるほど静かに眠りについていた。それにしても綺麗な寝顔だった。閉じた瞼に長い睫毛。サラサラの長い髪がまっすぐに落ちて作り物の人形のように見えた。
「そういうのはよくないでござるよ」
「……起きてたのかよ」
先輩はぱっちりと目を開けて俺を捉えていた。気配を消したつもりはなかったから、当然と言えば当然か。思わず見入っていた顔はどこか気まずそうに目線を逸らす。
「それよりも」
ドロロが俺の服を引っ張る。思い切り顔が近づいて先輩が笑う。そして口布の上からキスをしてきた。
「恋人だから、ね」
ふふ、と笑うドロロは満足そうだった。俺は背を向けると伸びをする。朝からこんな甘い空気は御免だ。ドロロには当分ラボへの宿泊を禁止することにした。
「恋人だから、いいでござろう」
ドロロ先輩はそう言って今日一日散々俺のラボに居座った挙句この部屋で夜も眠ろうとした。夜くらい自分の家に帰れと言いたくなるのをグッとこらえる。何せ布団は一つしかない。いくら恋人だろうが俺の布団を譲る気はない。ドロロはそんなの分かっていると言う顔をしてその代わりに椅子を借りたいと言った。俺がいつも座っているモニターの前に置かれた椅子だった。それは構わねェ、そう返すとドロロは椅子に座る。華奢な体がすっぽりと椅子に収まる様子は不似合いに見えた。ドロロ曰くアサシンはどこでも眠れるらしい。恐らくリクライニング機能も無視して直角の腰で寝るつもりだ。どう寝ようが先輩の勝手だが俺にはいささか寝心地が悪そうに見えた。だがそこまでしてラボで寝たいというこだわりに先輩らしさを感じた。否定するわけにはいかない。
「じゃ先輩、おやすみ」
「おやすみでござる」
俺は押し入れを開けて中に入った。戸を閉めると暗い空間でドロロを思った。ドロロがこのラボで寝るのは初めてのことだった。ふと思う。あの人はどんな顔をして眠るのだろう。そしてどんな夢を見るのだろう。そんなことを考えながら俺は眠りについていた。
目が覚めたのは結構早かったと思う。直感だが少なくともドロロよりは早起きだろうと思った。目覚ましをかけたわけでもないのに早起きしたのならやることはただ一つ。先輩の寝顔を見ることだ。俺は先輩を起こさないようそっと戸を開けて押し入れから出る。椅子は後ろを向いていて先輩の姿は見えなかった。背もたれに隠れきった先輩を見に俺はゆっくりと近付く。首を伸ばして覗き込んだ顔は、まるで死んでいるかのように静かだった。俺は思わず顔の前に手をかざす。どうやら呼吸はしているらしかった。先輩は不安になるほど静かに眠りについていた。それにしても綺麗な寝顔だった。閉じた瞼に長い睫毛。サラサラの長い髪がまっすぐに落ちて作り物の人形のように見えた。
「そういうのはよくないでござるよ」
「……起きてたのかよ」
先輩はぱっちりと目を開けて俺を捉えていた。気配を消したつもりはなかったから、当然と言えば当然か。思わず見入っていた顔はどこか気まずそうに目線を逸らす。
「それよりも」
ドロロが俺の服を引っ張る。思い切り顔が近づいて先輩が笑う。そして口布の上からキスをしてきた。
「恋人だから、ね」
ふふ、と笑うドロロは満足そうだった。俺は背を向けると伸びをする。朝からこんな甘い空気は御免だ。ドロロには当分ラボへの宿泊を禁止することにした。
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