ゾルドロ

 ゾルルはドロロが好きだ。そうはっきりと自覚もしている。だが、目の前にドロロがいても何をすべきか分からない。子供の頃から下手な愛情表現。大事なものが育たないまま大人になってしまった。その心を柔らかく包み込むドロロの優しさに甘えるように、ゾルルが自分から動くことはできない。
「こういうときはね」
 ドロロがゾルルの腕を持って自身の背中へ回した。じわりと広がる体温。あたたかい。五感を通じて感じるドロロにゾルルは頭がぼんやりした。
 いつか、同じことをされたことがあった。訓練所からの帰り道、ゾルルは道端に咲いてる花を見つけた。青い花はゼロロを思わせたがとうとう彼に花を渡すことがないまま時は過ぎてしまった。その話を数千ケロン年後、彼に話したのだ。ゾルルはゼロロに花を渡したかったのだと改めて自分の思いに気が付いた。感情に鈍感過ぎる、そうドロロに笑われた。そしてドロロに抱きしめられた。気持ちだけありがとう、そう伝える言葉と体温に胸の奥がぼうっと熱くなった。満たされる感覚? ゾルルにはよく分からなかった。常に乾いた感覚だったからこそ、ドロロから与えられるものは非常に大きかった。
「愛おしい……」
 ゾルルは大きな金属の手でドロロの頭を撫でた。ドロロにそうしろと教わったわけではない。ゾルルが自分から動いたのだ。ドロロは驚いたようにゾルルを見てそれから嬉しそうに笑った。
「君はもっと自分に素直になるべきだよ」
 ドロロは頭の上に乗せられたゾルルの手を握る。あれだけ手に入れたかったドロロに触れられている、何度経験してもおかしな感覚だった。
「僕のこと、どうしたいの?」
 ドロロが口布のなかで微笑んだ。ゾルルは分からない。頭から手を離してドロロの青い目を見つめた。
「俺は、どう……したい……?」
 ドロロの目がゾルルの目に近付く。あの頃と変わらない綺麗な青い目。吸い込まれるようにただ見つめることしかできない。
「好きにしていいのに」
 ドロロがいたずらっぽく笑った。あの頃のゼロロがすることのない悪い笑みにゾルルは見惚れた。あの頃からずっと追い続けてきた。あのゼロロを好きにできるというのに。ゾルルは右手を伸ばしてドロロの手を握った。あの青い小さい手をずっと握ってみたかった。ゾルルはゆっくりと口を開く。
「殺してもいいのか……?」
 ドロロは何も言わずゾルルを見て笑った。そしてゾルルへ顔を近付けると頬に口付けを落とした。それが了承なのか、ゾルルには分からない。ただゾルルを見つめる青い目はどこか嬉しそうに見えた。
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