ゾルドロ

 ドロロは休暇に地球へ来たゾルルを公園へ連れてきた。今の時期なら花も沢山咲いている。だがゾルルは花になど興味なさそうに石畳の上をせかせかと歩いていた。
「もう少しゆっくり見て回ろうよ」
「興味、ない……」
 ドロロは呆れたようにゾルルを見た。せっかくの逢瀬。いつも家ばかりではつまらないだろうという気遣いだったがそれが裏目に出たようで。ドロロは早足で歩くゾルルの背中を追う。花壇にはこんなにも色とりどりの花が咲いているというのに。だがゾルルは地球の美しさを理解しようなどと思わないのだろう。所詮田舎の星。もとより侵略対象でしかない。
 ふと自動販売機が目に入りゾルルはそこに向かって歩く。五月とはいえ日差しが強くかなり暑い。喉が渇いたのだろうとドロロは近くのベンチに腰を下ろした。しばらくして突然頬にひやりとしたものが触れた。
「わっ! 脅かさないでよ」
 ゾルルは冷たいお茶の缶をドロロの頬に押し当てていた。素直に渡してくれればいいのに、と呟きながらドロロはそれを受け取る。ゾルルはドロロの隣に腰掛けた。
「君はお茶じゃないんだ」
 ゾルルの手にはコーヒーの缶があった。ドロロは自分のためにわざわざお茶を選んでくれたことが嬉しくなった。プルタブを開け、こくこくとお茶を流し込む。冷たさが喉を抜け気持ちがいい。だがそんな様子をじっと見つめているゾルルに気が付いた。ゾルルはドロロに顔を近付ける。
「近いよ」
 ゾルルはそのままドロロにキスをした。いくらアンチバリアを張ってるとはいえ人前でキスなど落ち着かない。ドロロは制止しようと顔を背けた。
「嫌か……?」
 そう問われれば首を振ることしかできない。ゾルルは満足そうにキスを繰り返す。ドロロは照れたように花壇に目を遣った。
「僕じゃなくて花を見てよ」
「ゼロロが、いい……」
 恥ずかしげもなくそんな台詞を口にするとドロロの顔が赤く染まった。ドロロの手に握られたお茶にぎゅうと力が入る。ゾルルはその手を掴むとベンチから立ち上がる。
「貴様の家に案内しろ……」
 ドロロは頷いてお茶を飲み干した。カラカラに乾いた喉にはそれでも足りなかった。缶をゴミ箱に捨てて手裏剣型のフライングボードに乗る。後ろにはゾルルがぴったりと体を寄せている。なんだか体まで熱くなってしまって、少しでも熱を冷まそうとスピードを上げてフライングボードを動かした。
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