ゾルゼロ

 ふと気付くと白い箱のような部屋に居た。ベッドの他に物はなく、俺と小さなゼロロだけがそこには居た。ゼロロは怯えたような目をしていて今にも泣き出しそうに見えた。
「ゼロロ……?」
 ゼロロは驚いたように目を丸くする。
「どうして僕の名前知ってるの?」
 どうして、そう問われても上手く答えられない。何故なら貴様はゼロロで……。俺はゼロロを見つめる。あの頃の姿そのままだ。か弱く細い体。青い目が震えて今にも涙が零れ落ちそうだった。
「おじさん、怖い人?」
 ゼロロは俺に聞く。この見た目では怖がられても仕方ないだろう。俺はゼロロに近付き左の生身の腕で黄色い軍帽を撫でた。ゼロロの尻尾が揺れる。それはまるで犬の感情表現のように分かりやすい。怖くないのだと分かった途端警戒を解く。危うさが本物の子供なのだと思う。
「僕気づいたらここにいたんだよ。この部屋なんにもないし……あっ、でもドアがあるから外に出られるかも」
 ゼロロは白い壁に浮かんだドアを見る。尻尾を揺らしながら歩くとドアノブに手をかけた。
「開くみたい! でも、どこにつながってるんだろう……」
 俺はゼロロの後を追いドアの外を見る。外には野原と青い空が広がっていた。あまりにも不自然だ。俺は気付いた。これは夢だ。そうでなければゼロロがこのような姿になることはないのだから。状況を飲み込みながら俺はソーサーを取り出し乗る。
「掴まれ……」
 ゼロロはソーサーに乗ると俺の体に腕を回した。エンジンをかけるとその腕はより一層強い力をかけた。
 外の世界はのどかだった。今時珍しいほど自然一体で草の中に所々花も咲いていた。
「ねぇ、おじさん」
 ゼロロが背後から口を開く。
「僕のおともだちがおじさんに似てるんだ」
「……」
「目の色とかね、あと優しいところとか」
 ゼロロは背中に顔を埋める。
「大人になったらこうなるのかなぁ」
 背中に伝わる体温がゼロロを語った。その意図が全て俺の願望だと気が付いていた。だが夢でもよかった。もう会うことのできないゼロロに会わせてくれたこの夢がまだ覚めないよう祈るだけだ。
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