ゾルゼロ

91話ネタ

 宇宙人街で久しぶりに会ったドロロは妙な格好をしていた。黄色いシャツを羽織り赤いサングラスをかけて酔ったようにふらふらと歩いていた。そしてゾルルを見つけるなり肩を叩く。
「あれ、ゾルっぴ?久しぶりじゃん!」
 砕けた口調でケラケラと笑うが明らかに様子がおかしい。見た目だけではなく中身までもがドロロではなくなっていた。薬でも飲まされたか、はたまたあの瓶底メガネの発明品か、ゾルルは考える。だがその考えを跳ね除けるようにドロロは言う。
「こんなとこで何してんのー? 暇なら飲み行かない?」
「……断る」
「パーッと飲もうよ、パーッと!」
 ドロロはゾルルの肩を組み強引にバーへと向かった。ゾルルは乗り気ではなく足取りが重い。それでも抵抗しないのはおかしな様子が気になるからだった。普段のドロロならこのようなことはあり得ない。自分に対して肩を組んだり飲みに誘ったり。不審に思ったゾルルはあえてドロロに付き合おうと思った。
 バーに着くと適当に注文をした。毒に耐性があるようにアルコールにも強いはずだがドロロは既に酔ったかのように千鳥足だった。しきりに目を閉じてはぼーっとしたように笑う。まさか酔っているのではないか。だがゾルルの心配をよそにジュースのように酒を煽った。やはりこれはあいつの発明品だろう。ゾルルは確信して酒に口をつけた。
「もしかして俺に会いに来たの?」
 ドロロは言う。からかった目だった。ゾルルは背を向ける。このドロロとは妙にやりにくい。話し方やテンポが合わない。
「連絡くれればよかったのに」
 ドロロはあっという間に酒を飲み干し二杯目を注文する。
「……あの参謀か?」
 ゾルルは問う。ドロロはきょとんとした顔で酒を飲む。そして急に笑い出した。
「なになに、嫉妬してる? ゾルっぴ可愛いー!」
 店中に響く大声で笑うドロロに思わずゾルルが注意した。ドロロはヘラヘラとしながらその注意を受け流す。それよりも嫉妬という言葉が気になった。だが文脈がおかしい。会話になっていない。なぜ俺があいつに嫉妬をするのだ、ゾルルは思う。
「クルルっちとデキてると思ってんの?」
 ドロロはゾルルに顔を寄せる。
「俺の本命ゾルっぴなんですけど」
 ゾルルは慌てて顔を離す。するとドロロは再び大声で笑い出した。冗談と言うがその声色は冗談のようには聞こえなかった。勿論ゾルルが胸騒ぎを覚えたのは言うまでもなかった。照れ隠しのように酒を煽ると喉が灼けるように熱い。
「あれ……」
 ふとドロロがふらふらとテーブルに突っ伏す。起き上がったドロロは今までの効果が切れたかのように目つきが普段通りに戻っていた。
「なっ……!」
 隣りにいたゾルルを見ると肩を跳ね上がらせる。どうやら何があったのか覚えていないらしい。ゾルルは端的に事を説明するとドロロは申し訳ないと平謝りした。
 先程の台詞が本心なのかは定かではない。記憶のないドロロに問うても返答はないだろう。未だ胸の高鳴りは収まらずゾルルを悩ませた。だがやはりドロロはこうでないといけない。あのようなドロロでは調子が狂うというもの。ゾルルはもう一度あの言葉を繰り返してみる。近い顔がからかうように笑う。
「あの、もしかして拙者失礼なことを……?」
「いいや……」
 ゾルルは首を振る。不思議そうな顔をしてゾルルを覗き込むその瞳は真剣そのものだった。
 バーを出たあともゾルルの胸は収まらなかった。見送ったドロロの後ろ姿にあの言葉を重ねる。気恥ずかしくなって軍帽を思い切りかき乱した。
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