ゾルゼロ

 闇夜の中を俺たちは歩いていた。立ち入り禁止のフェンスの下には枯れた草が生い茂っていた。ゼロロはフェンスを軽々と登ると反対側へ降りた。
「置いていくよ」
 ゼロロは調子乗りな発言をして俺を振り返った。先程までの行為が噓のように感じられる。俺たちは闇の中をただひたすらに歩いていく。どうしてあんなことになったのか、何も覚えていない。ただ気が付けば俺はゼロロを抱いていた。しかもこれが初めてではなかった。闇の中なら誰にも見えないからと地面の上で体を重ねた。ゼロロは相変わらず可愛さの欠片もなかった。冷たい体を横たえて俺に全てを委ねていた。そしてゼロロは絶対に俺の名前を呼ぶことはない。俺がゼロロのマスクを外し口の中に指を突っ込もうと、だ。
「君は少し強引すぎるよ」
 ゼロロは前を向いたままそう言った。夜の風が冷たく肌を撫でた。
「好きな男ならもっと優しく抱くべきだ」
「誰が貴様を好きと言った」
 俺は反論する。ゼロロは溜め息を吐いて言う。
「おかけで腕が傷だらけだよ」
 俺の金属の鋭い爪ではゼロロの腕を掴むたびに柔らかい皮膚を傷付けた。俺は自らの指を見たが暗くてよく見えなかった。
 ゼロロは早足で俺より先を歩いた。風が白い帽子を揺らした。俺は考えた。好きでもない奴を抱こうとは思えない。ということは少なからずゼロロに好意があるということになる。だが……。あの憎まれ口を? 俺が? 
「そういえば舌も切れた。今も口の中が血の味だよ」
 ゼロロは文句ばかりつけてきた。俺は腹が立って言う。
「だったらそういうことをしたお前が悪い」
「君が優しくしてくれればいい話じゃない」
 ゼロロは立ち止まって振り返る。俺の目を見て言い放つ。
「ケダモノ」
 その声はからかいを帯びていて俺は怒るに怒れなかった。ここで怒ったら奴のツボだ。ぐっと両手を握りしめその場を耐えた。
 ゼロロはくすくすと笑うとまた歩き出した。完全にからかっている。何が目的なのか分からない。オレはただ黙ってゼロロの後を歩いた。
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