ゾルゼロ

 春になると野原に黄色い花が咲く。それはたんぽぽというらしい。地球という遠い星から来た外来種の花だが、可愛らしいため、ゼロロはたんぽぽが好きだった。たんぽぽを見つけて駆け寄るゼロロをゾルルは呆れたように見た。
「見て、ゾルルくん!」
 ゼロロはたんぽぽを指差す。にこにこと笑う笑顔こそ可愛らしいものの、たんぽぽ自体にゾルルは興味がない。ゾルルはたんぽぽよりも隣にあった綿毛の方が好きだった。ふわふわしていてどこかへ飛んでいってしまう。まるでゼロロのようだと思った。ゾルルは綿毛の茎をちぎり取る。そして綿毛に向けてふぅっと息を吹いた。綿毛は風に乗りながらは散り散りに飛んでいった。ゼロロはその様子を黙って見つめていた。ゾルルは綿毛のなくなった茎を野原へ捨てるとゼロロの手を掴んだ。
「……ゼロロが飛んでいきそうになったら、おれがつかまえてやる」
 まっすぐ見つめた瞳は真剣でゼロロは少し戸惑った。
「うん……」
 ゼロロは照れくさくてうつむきながら返事をした。ぼくはどこにもいかないよ、そう言いかけてたんぽぽを見た。
「たんぽぽの花言葉はね、『幸せ』なんだよ。知ってた?」
 ゼロロはゾルルの手を握り返す。ゾルルには小さく柔らかい手がどこか頼もしく思えた。
 青い空に浮かぶ白い星。地球では雲は星の形じゃないんだって。そんな話をしながら二人はずっと手を繋いでいた。
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