ゾルゼロ

 一言で言うとスパイスが欲しい。最近特に珍しいこともなく日々がマンネリとしている、ゼロロはそう感じていた。兵舎の中はどんよりと空気が重苦しい。そんな中、ゾルルはゼロロの唯一の気分転換だったのだ。ゼロロの部屋でゾルルは首を捻る。
「スパイス……?」
「日常に彩りを添える、アクセント」
 ゼロロは人差し指を立てて揺らす。ゾルルにはその意味が分からなかった。ゾルルはただゼロロと話しているだけで楽しかったし満足だった。マンネリなど感じたことはない。だがゼロロはそうではないという。正直に言うとゾルルは面白い男ではない、そんな自覚はあった。冗談を言うことも少ない。一緒にいて楽しいかと問われると確かに素直には頷けない。マンネリした日々にどうしたらゼロロの言うスパイスを与えられるだろう。
 考えた末、ゾルルは休暇に街へ行った。歩きながら眺めたショーウィンドウに目を引くものがあった。眩しいライトに照らされた店内に入るとあるものを購入した。
「プレゼント?」
 ゾルルがゼロロの部屋を訪ねるとその手には青い小箱があった。ゼロロは何のつもりかと少々疑いながら小箱を受け取る。紙でできた蓋を開けると中にはシルバーの十字架を象ったネックレスが入っていた。ゾルルは自らの首に下げたネックレスを指差す。四角く平たい面に十字架の凹みがついている。
「もしかしてペアネックレス?」
 ゼロロは目を丸くした。想像もしなかったロマンチック加減に思わず吹き出す。ゾルルは笑われるとは思っておらずその様子に驚いた。
「でも、君らしい」
 ゼロロは手を伸ばすとゾルルのネックレスに触れる。十字の窪みをゆっくりとなぞった。
「今度出かける時に着けていくよ。だから誘ってね」
 優しく笑うその顔にゾルルの心は満たされた。これがスパイスなのか……。二人並んでペアネックレスをするのは少し照れくさいが、それもスパイス。たまにはこういうのもいいかもしれないと、ゾルルは次の休暇の予定を入れるのだった
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