ジラドロ

 今日も雨だった。梅雨真っ只中の六月だが、こうも梅雨らしい梅雨も久しいものだなとドロロは地球人のような感想を抱く。地球に来てからは相当な年月が経った。梅仕事も地球に来て学んだことだった。ざるに青い梅を並べながらぼんやり思うのはジララのことだった。彼が今どこで何をしているのか、ドロロは知らない。地球にいるのか、はたまた別の星にいるのか。ケロン星を脱走して地球に来て、死んだふりをしてまで自分に助けを求めるあの人のことが気になって仕方がない。ドロロは手を止めて雨の音に耳を澄ませてみる。パタパタと屋根に落ちる雨が唯一ドロロを癒しくれた。
 ずっと好きだった。部隊に配属された時に既に恋に落ちていた。だがただ待つことしかできず、それが自分なりの恋の形だったのだと、今思う。ジララが自分を好きになることはないと分かっていた。それでもいいと思っていた。ただ風のようにそこにいるだけで構わなかった。彼の目に入ることが自分の幸せだと、そう覚悟を決めて恋心をひた隠しにした。そして突然除隊を言い渡され、ドロロはジララの元を去った。彼から離れてから夢の中でたまに会えるとそれだけで幸せになれた。怖ろしいはずの存在はいつしか愛しさに変わっていた。幸せになって欲しい。それがドロロの願いであり、それ以上のことは望まなかった。自分の知らないところで幸せに暮らしているならばドロロは幸せだった。青い梅が熟して赤くなるように、人は変わっていくものなのだ。それでも本音では、心の奥底では彼を求めている自分がいないわけでもない。会いたい。会いに行きたい。どこにいるのかくらい知らせて欲しいと思った。梅を漬けたので一緒に食べませんか、そんな手紙を贈りたいのに。それすらも叶わない。自分は本当にジララにとってただの風でしかない。梅雨に吹く生温い風のようにじめじめとしている。彼を思いながら漬けた梅も彼とは食べられない。皮肉なものだなとドロロは溜め息を吐いた。
 雨は止みそうになかった。予報によれば夜まで降り続くらしい。ドロロは梅仕事を終えると温かいお茶を入れてゆっくりと飲んだ。その間もずっとジララのことを考え続けていた。
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