ジラドロ
数日前には蕾だった木蘭の花が開いていた。白く大きな花は春になると咲くのだと、ジララはドロロに教わった。
ジララは竹林の中にある水車小屋へ向かい、引き戸を引いた。その瞬間こちらを見るドロロとぴったり目が合った。
「あ」
ドロロはいつもの忍装束に身を包んでいるものの、まだ髪を結っていなかった。長い髪が肩に落ち、さらさらと揺れた。
「早過ぎたな」
ジララが呟くように言うとドロロは首を振る。そしてジララの元へ駆け寄った。
「これには訳が」
ドロロは袂から髪紐を取り出す。赤い髪紐は緩んで解けていた。
「昨日小雪殿と訓練をしていたら刃が入ってしまったのでござるよ」
それで髪が結えなくなったのだとドロロは説明した。ジララは改めてドロロの下ろした髪を見た。あの頃に比べて随分伸びたことに思いを馳せた。ジララの手がドロロの髪に触れる。細い髪が指を伝って落ちる。
「拙者はもうゼロロではないでござるよ」
ジララは少しだけ寂しそうに手を離した。
「……赤色か?」
ジララはドロロの手のひらの上の髪紐を見ながら言う。
「何色が好きだと聞いている」
ドロロは戸惑いながらジララを見ると、ジララはドロロの手首を掴んだ。
「教えろ」
ドロロは少し怯えたような目をして唇を震わせた。
「と、特にこだわりはないでござる」
「そうか」
ジララは手を離すとドロロに背を向けた。まさか今から買いに行くのかとドロロはジララを止めようと思ったが、彼が聞くとも思えない。閉まる戸の音。呆然と立ち尽くすドロロ。そしてゆっくりと息を吐くと自らの髪に触れた。ドロロは引き戸を引いて顔を上げた。木蘭の花が咲いていた。
「……白、かな」
ぽつりと呟いて空を見る。薄い雲がゆっくりと空を流れる。ドロロはこれから芽吹く春に相応しい髪紐かもしれない、そう思った。
ジララは竹林の中にある水車小屋へ向かい、引き戸を引いた。その瞬間こちらを見るドロロとぴったり目が合った。
「あ」
ドロロはいつもの忍装束に身を包んでいるものの、まだ髪を結っていなかった。長い髪が肩に落ち、さらさらと揺れた。
「早過ぎたな」
ジララが呟くように言うとドロロは首を振る。そしてジララの元へ駆け寄った。
「これには訳が」
ドロロは袂から髪紐を取り出す。赤い髪紐は緩んで解けていた。
「昨日小雪殿と訓練をしていたら刃が入ってしまったのでござるよ」
それで髪が結えなくなったのだとドロロは説明した。ジララは改めてドロロの下ろした髪を見た。あの頃に比べて随分伸びたことに思いを馳せた。ジララの手がドロロの髪に触れる。細い髪が指を伝って落ちる。
「拙者はもうゼロロではないでござるよ」
ジララは少しだけ寂しそうに手を離した。
「……赤色か?」
ジララはドロロの手のひらの上の髪紐を見ながら言う。
「何色が好きだと聞いている」
ドロロは戸惑いながらジララを見ると、ジララはドロロの手首を掴んだ。
「教えろ」
ドロロは少し怯えたような目をして唇を震わせた。
「と、特にこだわりはないでござる」
「そうか」
ジララは手を離すとドロロに背を向けた。まさか今から買いに行くのかとドロロはジララを止めようと思ったが、彼が聞くとも思えない。閉まる戸の音。呆然と立ち尽くすドロロ。そしてゆっくりと息を吐くと自らの髪に触れた。ドロロは引き戸を引いて顔を上げた。木蘭の花が咲いていた。
「……白、かな」
ぽつりと呟いて空を見る。薄い雲がゆっくりと空を流れる。ドロロはこれから芽吹く春に相応しい髪紐かもしれない、そう思った。
