ジラドロ
その花を見たとき、かつて夜の梅という羊羹を食べたことを思い出した。ドロロの水車小屋で白い皿に載せられた黒い塊を出され、それが羊羹という甘い菓子であることを知った。切り口の小豆の粒が梅の花のようなのだとドロロから教わった。地球の菓子の中でも名付けのセンスがずば抜けていると感じた。
白い花。街灯もない暗い中でその花から甘い香りが漂ってきた。暗闇に浮かび上がる白い花は寒々しく見える。
「梅の花でござるな。別名春告げ草」
ドロロが花を見ながら言う。そしてこんな歌があるのでござるよ、と俺を見た。
「春の夜の闇は無意味。梅の花が見えなくてもいい香りは隠れようがない……。昔の人は香りを大事にしていたのでござる」
確かに暗闇で花が見えずともこの香りは隠れることはできない。月に照らされてほのかに光る白が夜風に揺れる。
「夜の梅、か」
ドロロは驚いたように目を丸くした。俺が羊羹の名前を覚えていたことを意外そうに頷いた。
「羊羹を夜空に見立てたり、梅の花に見立てたり……地球人の発想には脱帽でござる」
ドロロは再び梅の花に目をやった。ドロロの帽子と共に花が揺れては香り立つ。
「春は近付いて来ているのでござるよ」
ドロロがゆっくりと俺の手に触れた。冷えた指先はまだ春は遠そうに感じられた。
白い花。街灯もない暗い中でその花から甘い香りが漂ってきた。暗闇に浮かび上がる白い花は寒々しく見える。
「梅の花でござるな。別名春告げ草」
ドロロが花を見ながら言う。そしてこんな歌があるのでござるよ、と俺を見た。
「春の夜の闇は無意味。梅の花が見えなくてもいい香りは隠れようがない……。昔の人は香りを大事にしていたのでござる」
確かに暗闇で花が見えずともこの香りは隠れることはできない。月に照らされてほのかに光る白が夜風に揺れる。
「夜の梅、か」
ドロロは驚いたように目を丸くした。俺が羊羹の名前を覚えていたことを意外そうに頷いた。
「羊羹を夜空に見立てたり、梅の花に見立てたり……地球人の発想には脱帽でござる」
ドロロは再び梅の花に目をやった。ドロロの帽子と共に花が揺れては香り立つ。
「春は近付いて来ているのでござるよ」
ドロロがゆっくりと俺の手に触れた。冷えた指先はまだ春は遠そうに感じられた。
