ジラドロ
シスターパロ
森の奥にあるその修道院は現世の生活を離れたように厳格だった。シスターであるドロロは太陽が昇る前に起きて神に祈りを捧げる。表向きは敬虔な信者であり人々の手本となるようなシスターだった。黒いベールに包まれた本当の姿を知っているのは神父であるジララだけだった。
軽い朝食を済ませ、シスターたちは畑に行き野菜を収穫していた。ここでは自給自足が基本となっていた。ドロロは特に農業に関する知識が豊富でシスターたちの中でも畑仕事を任されることが多かった。ドロロはカゴを手に丸々と実ったトマトを収穫した。真っ赤に色づいて実に立派なトマトだった。
「ドロロはいるか」
突然ジララの声がしてドロロは返事をする。カゴを持ったままジララのもとへ駆け寄るとジララはトマトを目にして言った。
「今年も豊作だな」
「はい。無事に実ってくれて……神様のおかげです」
ドロロの模範的な言葉にジララは頷く。ドロロは人前での振る舞いはシスターとして満点だった。
「奥の部屋に来てくれ」
ジララがそう言って背中を向けるとドロロはカゴを地面に置いて彼のあとを追った。修道院の最奥にある部屋は滅多に人が出入りすることはない。ジララがドアを閉め二人きりになるとドロロをじっと見た。そして義手を伸ばすとドロロの頬に触れる。
「あの、仕事がまだ残って……」
「顔が見たくなった」
ジララは冷たい義手で頬を撫でた。鋭利な指先で器用に口布を外すとその端正な顔を満足気に眺めた。
修道院の中で神の意に背くような行為をすることに罪悪感がないわけではなかった。祈りさえすれば許されるなど甘い考えが身を滅ぼす。それでも二人は禁断の果実に手を伸ばした。神に忠誠を誓ったはずのドロロのベールがジララの顔を掠めた。そして互いの唇が触れる。
「神父様」
「名前で呼べ」
「……ジララ様」
指を絡めてじっくりと味わうようにキスをした。こうも二人を燃え上がらせるのは、ここが失楽園だからだろうか。
(ああ、神様。どうかお許しください……)
ドロロは目を閉じて神に祈った。せめてもの祈りで自分の行いをなかったことにしようと思った。ドロロは止められない強い思いをここに来て初めて知った。自分はシスター失格なのではと思う度にジララになだめられては流されてきた。毎回今日こそ最後にしようと思うが、愛しいジララに抵抗などできない。甘いキスにうっとりと酔いしれて頭の中は真っ白になった。
ドロロはその晩懺悔室へ赴いた。ジララはドロロの懺悔を見越したように口を開いた。
「もう手遅れだ」
「……神様は分かってくださいます」
ドロロは弱々しくそう言う。内心自信はなかった。
「俺とは終わりにすると言うのか」
ジララの言葉にドロロは黙り込む。ドロロは神の伴侶としてシスターになった。だが心はジララに強く惹かれてたまらない。それがいけないことだと頭では分かっている。
「ドロロ」
低い声で囁かれると胸が疼いて仕方がない。懺悔室の仕切りが邪魔に感じた。ジララの顔が見たい。
「ジララ様……僕は」
続きの言葉は喉から出てこなかった。しばらくドロロが黙っているとジララは懺悔室から姿を現した。そしてドロロへ近付くと体を優しく抱いた。
「俺はお前となら地獄に落ちてもいい」
ドロロはゆっくりとジララの背中へ腕を回した。温かな体温に安らぎを求めていた。胸の中が甘く満たされていく感覚。見えない神には触れることもできない。ドロロにはジララが神以上の存在に思えた。ジララの手がドロロの頭を撫でる。これ以上の言葉はいらない。ドロロはジララの温もりの中で目を閉じる。その目の奥には燃え盛る真っ赤な地獄が映し出されていた。
森の奥にあるその修道院は現世の生活を離れたように厳格だった。シスターであるドロロは太陽が昇る前に起きて神に祈りを捧げる。表向きは敬虔な信者であり人々の手本となるようなシスターだった。黒いベールに包まれた本当の姿を知っているのは神父であるジララだけだった。
軽い朝食を済ませ、シスターたちは畑に行き野菜を収穫していた。ここでは自給自足が基本となっていた。ドロロは特に農業に関する知識が豊富でシスターたちの中でも畑仕事を任されることが多かった。ドロロはカゴを手に丸々と実ったトマトを収穫した。真っ赤に色づいて実に立派なトマトだった。
「ドロロはいるか」
突然ジララの声がしてドロロは返事をする。カゴを持ったままジララのもとへ駆け寄るとジララはトマトを目にして言った。
「今年も豊作だな」
「はい。無事に実ってくれて……神様のおかげです」
ドロロの模範的な言葉にジララは頷く。ドロロは人前での振る舞いはシスターとして満点だった。
「奥の部屋に来てくれ」
ジララがそう言って背中を向けるとドロロはカゴを地面に置いて彼のあとを追った。修道院の最奥にある部屋は滅多に人が出入りすることはない。ジララがドアを閉め二人きりになるとドロロをじっと見た。そして義手を伸ばすとドロロの頬に触れる。
「あの、仕事がまだ残って……」
「顔が見たくなった」
ジララは冷たい義手で頬を撫でた。鋭利な指先で器用に口布を外すとその端正な顔を満足気に眺めた。
修道院の中で神の意に背くような行為をすることに罪悪感がないわけではなかった。祈りさえすれば許されるなど甘い考えが身を滅ぼす。それでも二人は禁断の果実に手を伸ばした。神に忠誠を誓ったはずのドロロのベールがジララの顔を掠めた。そして互いの唇が触れる。
「神父様」
「名前で呼べ」
「……ジララ様」
指を絡めてじっくりと味わうようにキスをした。こうも二人を燃え上がらせるのは、ここが失楽園だからだろうか。
(ああ、神様。どうかお許しください……)
ドロロは目を閉じて神に祈った。せめてもの祈りで自分の行いをなかったことにしようと思った。ドロロは止められない強い思いをここに来て初めて知った。自分はシスター失格なのではと思う度にジララになだめられては流されてきた。毎回今日こそ最後にしようと思うが、愛しいジララに抵抗などできない。甘いキスにうっとりと酔いしれて頭の中は真っ白になった。
ドロロはその晩懺悔室へ赴いた。ジララはドロロの懺悔を見越したように口を開いた。
「もう手遅れだ」
「……神様は分かってくださいます」
ドロロは弱々しくそう言う。内心自信はなかった。
「俺とは終わりにすると言うのか」
ジララの言葉にドロロは黙り込む。ドロロは神の伴侶としてシスターになった。だが心はジララに強く惹かれてたまらない。それがいけないことだと頭では分かっている。
「ドロロ」
低い声で囁かれると胸が疼いて仕方がない。懺悔室の仕切りが邪魔に感じた。ジララの顔が見たい。
「ジララ様……僕は」
続きの言葉は喉から出てこなかった。しばらくドロロが黙っているとジララは懺悔室から姿を現した。そしてドロロへ近付くと体を優しく抱いた。
「俺はお前となら地獄に落ちてもいい」
ドロロはゆっくりとジララの背中へ腕を回した。温かな体温に安らぎを求めていた。胸の中が甘く満たされていく感覚。見えない神には触れることもできない。ドロロにはジララが神以上の存在に思えた。ジララの手がドロロの頭を撫でる。これ以上の言葉はいらない。ドロロはジララの温もりの中で目を閉じる。その目の奥には燃え盛る真っ赤な地獄が映し出されていた。
