ジラドロ

 森が一面赤や黄色に輝く。まさに秋真っ盛り。晴れた青い空に色付いた葉がよく映えた。散りゆく運命だというのに、なぜこんなにも美しい姿を見せるのだろうか。
 ジララは自然の景色を見ている中で美しいと思えることが増えた。地球に来てもうすぐ一年が経過する。ドロロのサポートもあって順調に少しずつ心を取り戻せていた。長年感情が不要なアサシンとして生きてきたジララが今は感情を取り戻したいと思っている、そう思うこと自体彼は変わった。
 秋風に吹かれてひらひらとイチョウが落ちてきた。ドロロは腕を伸ばしイチョウを掴んだ。
「面白い形でござろう」
 そう言ってジララにイチョウを見せながら微笑む。その顔を見るとジララの心に温かなものが宿りそうになった。心などとうに捨ててしまった。感情がどのようなものだったのか、もはや思い出すことすらできない。ジララはゆっくりと手を上げるとドロロの頭を撫でた。なぜだか分からない、だがなぜかジララはそうしたいと思った。まるで子供にするように優しく頭を撫でた。ドロロは先程見せた笑みよりも更に深く笑った。くすぐったいような笑顔にジララの心が心の中が満たされていく感覚に陥った。
「突然で驚いたでござる」
 ドロロはくすくす笑いイチョウから手を離すとジララの手を掴む。
「どうしてこんなことを?」
 ドロロの問いにジララは答えられなかった。自分の感情がよく分からない。感情を取り戻すためどうしてこの行動を取ったのか逐一言葉にするよう心がけていたものの、今の行動は全く言葉にできなかった。
「……頭を撫でたいと思った」
 理由とは言えない理由を述べるとドロロは困ったように眉根を寄せた。だがそれも理由の一つかもしれないと思ったのか表情はすぐに晴れた。
「確かに感情があっても理由のない行動を取ることはあるでござるな」
 しかし、とドロロは続ける。
「頭を撫でるという行為は恐らく……」
 言いかけて口をつぐんだ。ジララは続きの言葉を待った。
「……普通、嫌いな相手にはしないでござるよ」
「何が言いたい」
 要領を得ない物言いにジララはドロロを睨む。ドロロは諦めたように口を開いた。
「少しでも、拙者のことを好き、なのでは……と……」
 声が小さくなっていくと共にドロロの頬が赤く染まっていく。自分で言っておきながら余程恥ずかしかったのか、言い終えてからももじもじと体を縮こまらせた。
「そうか」
 だがジララはその言葉に納得したように返事をすると再び頭を撫でた。それは紛れもなく好意の証だった。
「好きというのはいいことだろう」
 大きな手がドロロの頭を撫でる。傷をつけるために改造された手が今や愛情を与えるものになっていた。ドロロは戸惑ったように目を泳がせていたが、しばらく撫でられているとジララの顔を見た。表情からは何も読み取れないが、心なしか赤い目が優しく見えた。ドロロはその肩に頭を乗せた。
 紅葉が散ってしまうまで時間はない。今だけの美しさを目に焼き付けようと二人は身を寄せ合いながら景色を眺めていた。
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