ジラドロ

 ドロロは月を見ながらジララを思う。秋の夜空に浮かぶ月は強い光でドロロを照らしていた。夜になると無意識に昔のことばかり思い出してしまう。もう何百年も会っていない彼に、今でも会いたくてたまらない。
 ドロロは昔、突然除隊を言い渡されて気持ちの整理もできないままにアサシン部隊を去った。憎いはずの冷たいコンクリートの兵舎があれほど恋しくなったのをよく覚えていた。彼があのようなことをしたことを許せないと思っている自分が居ながら、今更変わることではないと気持ちを落ち着けた。
 月をぼうっと見ていると目頭が熱くなってくる。色々なことを思い出しては愛おしく感じてしまう。悲しいわけでもないのに涙が出そうになって慌てて指で拭った。堪えた涙で鼻の奥がツンとする。ドロロはゆっくりと息を吐いて呼吸を整えた。涙で揺れる月が眩しい。
(僕の涙が真珠ならあなたにプレゼントしたのに)
 受け取ってくれなくてもいい、ただ自分の思いを形にして贈りたいと思った。今どこで何をしてるのかすら知らない相手を思っても無駄なだけだと分かっていた。だが愛しい記憶は溢れ出て止まらない。頬を濡らす涙はただの水で、美しくも何ともなかった。ドロロには眩しい月を見上げてジララを思うことしかできなかった。
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