ジラドロ

擬人化

 ジララと剣を交えてから数日が立つがドロロは未だにそのことが頭から離れなかった。彼が今どこへ向かいどう暮らしているのか。
「ドロロ、こぼしてるよ」
「あ……」
 ドロロは手元を見る。ご飯粒が足元へ落ちていた。
「最近のドロロずっとボーッとしてる。……やっぱりあの人が気になるの?」
 小雪は探るように問いかけた。
「そんなことないでござるよ。全ては過去の話。もう良いのでござる」
 まるで話を逸らすかのようにドロロは味噌汁を飲み干した。小雪の表情がいまいち晴れないのはドロロを心配しているからだ。どんなに平静を装ったつもりでも滲み出てしまうものがある。
 小雪が学校へ行くとドロロは水車小屋で一人になった。そしてどうしてもジララのことが気になった。しかし会う勇気はなかった。ならば……と変化の術で猫になることを思い立った。猫ならば怪しまれずに近づくことが可能である。ドロロは顔の前で人差し指を立てると猫の姿に変身した。青い毛の猫である。これなら正体も分からないだろう。ドロロは家を出て大奥村山へ向かった。
 ジララがどこにいるか見当もつかなかった。そもそも地球にいるのかも分からない。しかしいることを信じてひたすらに歩き回った。
 彼は意外にもあっさりと見つかった。大奥村山の大きな木の上に何をするでもなく座り込んでいた。ドロロは木の根元に近づいてみる。見上げるとジララはドロロに気付いたようで視線を向けた。
「ニャァ」
 猫の真似をして鳴いてみる。ジララは地面に降りドロロを見た。地球の生き物が珍しいのか、それとも何か怪しんでいるのか。ドロロはジララの足元へ擦り寄った。ニャアニャアと鳴いて顔を見た。ジララはその場に座り込むとドロロの背中に触れた。そして毛並みに沿って三回ほど撫でた。ドロロは喜んだように顔をジララの脚へ擦り付ける。思い切り甘えた仕草をしたら今度はジララが頭を撫でた。折れた人差し指が痛々しかったがその指先は優しく、とても殺戮者のものとは思えなかった。ふとドロロは反対側の手に何かが握られているのに気が付いた。気になって左手を掴もうとするか阻止された。少しだけ見えた指の隙間にドロロは驚いた。それはドロロが小雪にもらった割れたお守りだった。ドロロは手を止めた。そしてジララの横で丸くなった。
 何故だろう。何のためにお守りを持っているのだろう。ドロロの姿を模したお守りはジララの攻撃で真っ二つに割れた。それを丁寧に、愛おしそうに握る姿を見たらドロロは何もできなくなった。
 ジララはドロロの頭を撫でた。そして手を開いてお守りをドロロに見せてきた。
「俺の大事な物だ」
 ドロロは顔を背けるとジララから離れた。そしてそのまま歩いて茂みの中へ消えていった。ジララは猫の後ろ姿を黙って見つめていた。
2/47ページ
スキ