ジラドロ
今日は春一番が吹くでしょう。テレビの中で天気予報がそう伝える。女性キャスターの服は既に春らしいパステルカラーだった。ケロロはテレビを見ながらしみじみ言う。
「春でありますなぁ」
日向家のリビングに家主はいない。夏美たちの出払った昼前にケロロとドロロはソファに腰掛けていた。テーブルの上には温かい湯飲みが二つ置かれている。
ケロロがドロロを呼んだのは積極的に侵略作戦に参加するよう告げるためだった。だがドロロはどこか上の空でケロロの話など耳に入らなかった。ドロロは今ジララのことを考えていた。
本格的な春の訪れを告げる、春一番。最後にジララにあったのは十二月の初めだった。もうそんなにも月日が流れたというのか。時の流れの速さに驚きながら同時に実感もする。暖かくなれば寒さで人恋しくなることもなくなる。だが、ただ人恋しいのではなくドロロにはジララが恋しかった。これから咲く満開の桜を二人で見たい。それは叶わぬ願いだった。
「ドロロ、何を考えてるでありますか?」
ケロロの声にドロロは我に返る。湯呑みを手に取り一口すする。温かさが身に沁みた。春が来るというのに心は冷え切っていた。
「……かたじけない」
ケロロは腕を組み目を閉じる。そして言いにくそうに口を開く。
「ウーン、なんかドロロ調子悪そうだし、別に今日じゃなくてもいいってゆーか」
ケロロは回りくどい言い方をしてドロロへの用件を伝えるか迷った。
「端的に言うとでありますな……もう少し、侵略作戦への積極参加を」
ドロロはケロロの目の前に手の平を突きつける。
「お断り申す」
「ゲロ……」
ケロロはあっけなく折れた。だがこれも仕事のうちなのだ。
「用件は以上でござるな、然らば御免!」
ドロロは煙幕に包まれるとその場から消えた。ケロロは慌てたように取り乱すが時すでに遅し。忽然と消えたドロロを追うことはできない。ケロロはぶつくさと文句を言いながらテレビを消した。
「おかしいでありますよ、あの日から」
隊長殿には申し訳ないが、ドロロは内心思っていた。やはり強引な地球侵略には賛成しかねる。自分はドロロと名を変え地球に寝返ったのだ。
強い風がドロロの帽子を揺らした。これが春一番か。春とともにあの人が訪ねてきたら。そんなことを思った。思いに囚われているようでは未熟だと叱ってほしい。舞い上がった土埃にドロロは目を閉じる。まぶたの裏に映るのはあの日のジララの姿だった。
「春でありますなぁ」
日向家のリビングに家主はいない。夏美たちの出払った昼前にケロロとドロロはソファに腰掛けていた。テーブルの上には温かい湯飲みが二つ置かれている。
ケロロがドロロを呼んだのは積極的に侵略作戦に参加するよう告げるためだった。だがドロロはどこか上の空でケロロの話など耳に入らなかった。ドロロは今ジララのことを考えていた。
本格的な春の訪れを告げる、春一番。最後にジララにあったのは十二月の初めだった。もうそんなにも月日が流れたというのか。時の流れの速さに驚きながら同時に実感もする。暖かくなれば寒さで人恋しくなることもなくなる。だが、ただ人恋しいのではなくドロロにはジララが恋しかった。これから咲く満開の桜を二人で見たい。それは叶わぬ願いだった。
「ドロロ、何を考えてるでありますか?」
ケロロの声にドロロは我に返る。湯呑みを手に取り一口すする。温かさが身に沁みた。春が来るというのに心は冷え切っていた。
「……かたじけない」
ケロロは腕を組み目を閉じる。そして言いにくそうに口を開く。
「ウーン、なんかドロロ調子悪そうだし、別に今日じゃなくてもいいってゆーか」
ケロロは回りくどい言い方をしてドロロへの用件を伝えるか迷った。
「端的に言うとでありますな……もう少し、侵略作戦への積極参加を」
ドロロはケロロの目の前に手の平を突きつける。
「お断り申す」
「ゲロ……」
ケロロはあっけなく折れた。だがこれも仕事のうちなのだ。
「用件は以上でござるな、然らば御免!」
ドロロは煙幕に包まれるとその場から消えた。ケロロは慌てたように取り乱すが時すでに遅し。忽然と消えたドロロを追うことはできない。ケロロはぶつくさと文句を言いながらテレビを消した。
「おかしいでありますよ、あの日から」
隊長殿には申し訳ないが、ドロロは内心思っていた。やはり強引な地球侵略には賛成しかねる。自分はドロロと名を変え地球に寝返ったのだ。
強い風がドロロの帽子を揺らした。これが春一番か。春とともにあの人が訪ねてきたら。そんなことを思った。思いに囚われているようでは未熟だと叱ってほしい。舞い上がった土埃にドロロは目を閉じる。まぶたの裏に映るのはあの日のジララの姿だった。
