ジラドロ
毎晩、眠る前にジララの姿が頭をよぎる。ドロロの体に合わせた小さな布団に潜り目を閉じると暗闇にジララが現れるのだった。遥か昔のことだというのに未だにドロロの頭を悩ませている。ドロロはせめて夢の中では会いたくないと思っていた。もう忘れてもいい頃だというのに忘れられずにいる。ドロロの記憶の底にジララはいた。すっかり忘れてしまいたいと思うがそう思えば思うほどジララを思い起こさせる。今もドロロはジララに囚われていた。
目が覚めると真っ先に夢の内容を思う。今日もジララの夢を見た。溜め息で起床するのは気分のいいものではなかった。第一、もう会うこともないのだ。昔のことを思い出す暇があるなら別のことに時間を割きたい。ドロロは床を離れると朝食の準備に取り掛かった。
炊きたての白米はツヤツヤに光っていた。温かい味噌汁も香り高い。焼き魚の焼き加減も完璧だった。だがドロロの心が晴れないのは今朝見た夢のせいだろう。
「悪い夢?」
小雪は頭を捻った。
「ドロロ、何かに取り憑かれてるみたいだもの」
「なんと、小雪殿にも気付かれていたとは……」
「無理に取り繕ってるのバレバレだよ。また悪い夢見たら、私に話して!」
小雪は真剣な顔で言った。ドロロは頷く。が、それは形だけのものだった。いくら小雪にでも話せないことはある。ドロロは自分の中に悪い夢を閉じ込めた。
そのせいなのか、ジララの夢を見る頻度は日に日に増えていった。寝ても覚めてもドロロはジララのことばかり考えるようになっていた。正直言うとジララのことは思い出したくもなかった。封印していたはずの記憶が最近になって自分を襲う。頭が痛い。ドロロはこめかみを抑えて痛みに耐えた。
「ドロロってば、聞いてんの!」
ケロロの声に意識を戻すと目の前に眉間にしわを寄せたケロロがいた。
「会議中に寝たら駄目でありましょう!」
「……かたじけない」
小隊がドロロを見る視線が痛い。だがギロロだけは違っていた。
「疲れているんじゃないのか」
「そ、そうかな」
「帰って休むといい」
ドロロはギロロの提案により家に帰ることにした。しかしドロロは乗り気ではなかった。あの布団に帰ると、またジララの夢を見るような気がしたのだ。日向家から帰る途中ドロロは森へ寄った。新鮮な空気を吸えば少しは体調が良くなるような気がした。森の中は人の気配はない。そして静かで落ち着いていた。今だけは全てのことが頭から離れていく気がした。自分の意識が遠のいて自然と一体化する。囚われていたジララという存在すら忘れていた。
「調子はどうだ」
背後から声がして振り返るとそこにはギロロがいた。会議が終わりドロロの様子を見に来たという。
「随分良くなったよ。ありがとう」
「それならいいが……」
ギロロは何かを言いかけて口をつぐんだ。ドロロが何に悩んでいるのか、何となく察しが付いているようだった。
「あまり思い詰めるなよ」
それだけ言い残すと森を去っていった。
夕食を作りながらドロロはギロロの言葉を考えていた。もしかしたら自分がジララを呼んでいたのかもしれない、そうドロロは思った。まとわりついてくる記憶は裏返しに過ぎないのかもしれない。会いたくないと思えば思うほど彼は姿を見せた。
「ただいま!」
元気よく戸を開ける小雪にドロロは笑顔を返す。
「おかえりでござる、小雪殿」
きっと今夜もジララの夢を見るのだろう。だがもしそうだとしても、ドロロは彼を笑顔で迎えることにした。
「もうすぐ夕食ができるでござるよ」
食卓を共に囲むくらい、ジララを受け入れようと思った。お椀によそった味噌汁は白い湯気を立てる。今ここにジララが訪ねて来ても迎えられる自信があった。囲炉裏を囲んだ小雪との夕食は久々に美味しく感じられた。
目が覚めると真っ先に夢の内容を思う。今日もジララの夢を見た。溜め息で起床するのは気分のいいものではなかった。第一、もう会うこともないのだ。昔のことを思い出す暇があるなら別のことに時間を割きたい。ドロロは床を離れると朝食の準備に取り掛かった。
炊きたての白米はツヤツヤに光っていた。温かい味噌汁も香り高い。焼き魚の焼き加減も完璧だった。だがドロロの心が晴れないのは今朝見た夢のせいだろう。
「悪い夢?」
小雪は頭を捻った。
「ドロロ、何かに取り憑かれてるみたいだもの」
「なんと、小雪殿にも気付かれていたとは……」
「無理に取り繕ってるのバレバレだよ。また悪い夢見たら、私に話して!」
小雪は真剣な顔で言った。ドロロは頷く。が、それは形だけのものだった。いくら小雪にでも話せないことはある。ドロロは自分の中に悪い夢を閉じ込めた。
そのせいなのか、ジララの夢を見る頻度は日に日に増えていった。寝ても覚めてもドロロはジララのことばかり考えるようになっていた。正直言うとジララのことは思い出したくもなかった。封印していたはずの記憶が最近になって自分を襲う。頭が痛い。ドロロはこめかみを抑えて痛みに耐えた。
「ドロロってば、聞いてんの!」
ケロロの声に意識を戻すと目の前に眉間にしわを寄せたケロロがいた。
「会議中に寝たら駄目でありましょう!」
「……かたじけない」
小隊がドロロを見る視線が痛い。だがギロロだけは違っていた。
「疲れているんじゃないのか」
「そ、そうかな」
「帰って休むといい」
ドロロはギロロの提案により家に帰ることにした。しかしドロロは乗り気ではなかった。あの布団に帰ると、またジララの夢を見るような気がしたのだ。日向家から帰る途中ドロロは森へ寄った。新鮮な空気を吸えば少しは体調が良くなるような気がした。森の中は人の気配はない。そして静かで落ち着いていた。今だけは全てのことが頭から離れていく気がした。自分の意識が遠のいて自然と一体化する。囚われていたジララという存在すら忘れていた。
「調子はどうだ」
背後から声がして振り返るとそこにはギロロがいた。会議が終わりドロロの様子を見に来たという。
「随分良くなったよ。ありがとう」
「それならいいが……」
ギロロは何かを言いかけて口をつぐんだ。ドロロが何に悩んでいるのか、何となく察しが付いているようだった。
「あまり思い詰めるなよ」
それだけ言い残すと森を去っていった。
夕食を作りながらドロロはギロロの言葉を考えていた。もしかしたら自分がジララを呼んでいたのかもしれない、そうドロロは思った。まとわりついてくる記憶は裏返しに過ぎないのかもしれない。会いたくないと思えば思うほど彼は姿を見せた。
「ただいま!」
元気よく戸を開ける小雪にドロロは笑顔を返す。
「おかえりでござる、小雪殿」
きっと今夜もジララの夢を見るのだろう。だがもしそうだとしても、ドロロは彼を笑顔で迎えることにした。
「もうすぐ夕食ができるでござるよ」
食卓を共に囲むくらい、ジララを受け入れようと思った。お椀によそった味噌汁は白い湯気を立てる。今ここにジララが訪ねて来ても迎えられる自信があった。囲炉裏を囲んだ小雪との夕食は久々に美味しく感じられた。
