ジラドロ
夜の森は人の気配がなく、まるで世界に二人だけのように感じられた。どこまでも広く自由で、声の一つも届かない。ドロロは暗闇でジララをぼんやりと眺める。ジララが地球に来て数ヶ月。身を隠しながら地球のどこかで生活をしているらしい。そしてたまにドロロを訪ねてやってくる。そのたびにドロロは胸を弾ませた。愛しい人に会えるというのは嬉しいものだ。
「娘は心配してないか」
娘というのはドロロと同居する小雪のことだろう。ドロロは笑って返す。
「小雪殿なら心配ご無用。今日は夏美殿のところへ行っているでござるよ」
ケロロ小隊隊長のケロロ軍曹の居候先、日向家。ジララは情けない現状に初めは呆れていたが既に慣れたようで何も言わなかった。つまり水車小屋には人は居ない。もちろんこの森にも。そう思うとジララにはこの森がより広いものに感じられた。日向家はさぞかし賑やかなことだろう。ジララは遠い人の声を思う。
「世界に二人だけみたいでござるな」
ドロロの声が森に響いた。ジララはドロロの手を握る。金属の手は氷のように冷えていた。
「二人でどこか遠い星に行こうじゃないか」
「逃避行でござるか?」
ドロロはふふ、と笑うとジララの手を握り返す。空を見上げると暗い空にはいくつも星が瞬いていた。
「ジララ大尉とならどこへでもついて行くでござる」
そう言うとドロロは口布越しにジララの頬へキスをした。照れくさそうに笑うドロロを見るジララの目は満足そうだった。
現実問題小雪を置いて逃げるなどドロロにはできない。ましてや地球を捨てるなど。ケロン軍本部にバレたらタダでは済まないだろう。だがほんの冗談だとしてもドロロが笑ってくれるだけでジララは嬉しかった。
「星には家を建てよう。丈夫な家がいい」
二人は各々のイメージを思い浮かべた。それは温かく幸せな形をしていた。
「拙者は庭に桜の木を植えたいでござる。木が育ったら、毎年春になると桜が咲くのでござるよ……」
星がピンクの花で覆い尽くされる様子を思い浮かべる。実現できたらなんと美しいことか。だがジララは桜を見たことがない。まだ地球に来てから春を体験したことがなかった。
「桜というのはそれほどまでに美しいものなのか」
「それはそれは美しいのでござる。何より地球人は桜が大好きなのでござるよ」
ジララはピンクに染まった星を想像した。
「大尉もきっとお気に召すと思うでござる」
ドロロは強く手を握る。そしてジララを見て笑った。
遠い星に行かなくとも夜の森は遠い星のように静かだった。誰も邪魔をすることのない二人だけの世界がそこにはあった。
「娘は心配してないか」
娘というのはドロロと同居する小雪のことだろう。ドロロは笑って返す。
「小雪殿なら心配ご無用。今日は夏美殿のところへ行っているでござるよ」
ケロロ小隊隊長のケロロ軍曹の居候先、日向家。ジララは情けない現状に初めは呆れていたが既に慣れたようで何も言わなかった。つまり水車小屋には人は居ない。もちろんこの森にも。そう思うとジララにはこの森がより広いものに感じられた。日向家はさぞかし賑やかなことだろう。ジララは遠い人の声を思う。
「世界に二人だけみたいでござるな」
ドロロの声が森に響いた。ジララはドロロの手を握る。金属の手は氷のように冷えていた。
「二人でどこか遠い星に行こうじゃないか」
「逃避行でござるか?」
ドロロはふふ、と笑うとジララの手を握り返す。空を見上げると暗い空にはいくつも星が瞬いていた。
「ジララ大尉とならどこへでもついて行くでござる」
そう言うとドロロは口布越しにジララの頬へキスをした。照れくさそうに笑うドロロを見るジララの目は満足そうだった。
現実問題小雪を置いて逃げるなどドロロにはできない。ましてや地球を捨てるなど。ケロン軍本部にバレたらタダでは済まないだろう。だがほんの冗談だとしてもドロロが笑ってくれるだけでジララは嬉しかった。
「星には家を建てよう。丈夫な家がいい」
二人は各々のイメージを思い浮かべた。それは温かく幸せな形をしていた。
「拙者は庭に桜の木を植えたいでござる。木が育ったら、毎年春になると桜が咲くのでござるよ……」
星がピンクの花で覆い尽くされる様子を思い浮かべる。実現できたらなんと美しいことか。だがジララは桜を見たことがない。まだ地球に来てから春を体験したことがなかった。
「桜というのはそれほどまでに美しいものなのか」
「それはそれは美しいのでござる。何より地球人は桜が大好きなのでござるよ」
ジララはピンクに染まった星を想像した。
「大尉もきっとお気に召すと思うでござる」
ドロロは強く手を握る。そしてジララを見て笑った。
遠い星に行かなくとも夜の森は遠い星のように静かだった。誰も邪魔をすることのない二人だけの世界がそこにはあった。
