ジラドロ
ふと思い出す。あの人のことを。
かつて自分が所属していた部隊、通称レッドアサシンことX1。冷酷極まりない日々を送る中で自分が密かに恋焦がれたあの人のことを。
ジララ大尉とはそこで初めて出会った。ゼロロはアサシンとしてトップの成績を収め、更に精鋭が集うX1へ配属されることが決まった。そこは誰もが恐れる冷酷非道な部隊として有名だった。
「光栄です、ジララ大尉」
敬礼をしてそう述べるのは本心からだった。ジララ大尉、X1の創始者。表情が読めないこの男こそがゼロロの心を蝕むきっかけだった。
まだまだ修行が足りぬということなのか。淡い恋心にうつつを抜かすなどあってはならないことだというのに。ドロロはため息を吐く。けれども胸に灯ったこの感情が消えることはない。胸がずきんと疼いて思わず手を当てた。この心があったから、ドロロはX1からの除隊を命じられた。優しさとは罪なものか。ドロロは家を出ると滝に向かった。少し頭を冷やしたほうがいい。そう思ったのだ。滝に近付くと大きな音がして雑念から離れられる気がした。
(拙者から離れられよ、ジララ大尉)
ドロロの頭の上から勢いよく滝が打ち付けてきた。
これでいいのだ、こうしている間は少しだけでも彼のことを忘れられる。無の境地、それこそがアサシンだと教えてくれたのもあの人だった。余計な感情を持たないこと。それがどれだけ大事なのか身を持って知った。だというのにやはり胸が疼いた。雑念にとらわれるな、自分にそう言い聞かせる。何より自分は今はゼロロではない、ドロロなのだ。あの人の思いはあの日きっぱりと断ち切ったはずなのだ。冷たい滝に打たれて指先がかじかんだ。触れたことのないあの人の鋭い指先を思った。触れたいとどれだけ願ったことだろう。それは決して叶うことのないままドロロは星を去った。もうこのまま地球で生きるのも悪くない。そんな思いすらあったというのに。
結局滝行の効果はほとんどなかった。頭の中を雑念が支配してかなわなかった。
家に帰ると小雪がいた。
「ドロロ聞いてよ! 今度夏美さんと遊ぶことになったんだ」
「それはよかったでござるな」
この娘が夏美に恋をしているように、ドロロはジララを……。
「楽しみだなぁ。さっきまで会ってたのにまた会いたいよ」
また胸が疼いた。これほどまでに自分がジララを求めていたなどと思わなかった。口にしてしまえば全てが終わってしまうから、必死に隠し通してきたのに。
「ねぇドロロには会いたい人いないの?」
「……どうでござるかなぁ」
会いたい。願わくば触れてみたい。こんな雑念をあの人は許してはくれない。
かつて自分が所属していた部隊、通称レッドアサシンことX1。冷酷極まりない日々を送る中で自分が密かに恋焦がれたあの人のことを。
ジララ大尉とはそこで初めて出会った。ゼロロはアサシンとしてトップの成績を収め、更に精鋭が集うX1へ配属されることが決まった。そこは誰もが恐れる冷酷非道な部隊として有名だった。
「光栄です、ジララ大尉」
敬礼をしてそう述べるのは本心からだった。ジララ大尉、X1の創始者。表情が読めないこの男こそがゼロロの心を蝕むきっかけだった。
まだまだ修行が足りぬということなのか。淡い恋心にうつつを抜かすなどあってはならないことだというのに。ドロロはため息を吐く。けれども胸に灯ったこの感情が消えることはない。胸がずきんと疼いて思わず手を当てた。この心があったから、ドロロはX1からの除隊を命じられた。優しさとは罪なものか。ドロロは家を出ると滝に向かった。少し頭を冷やしたほうがいい。そう思ったのだ。滝に近付くと大きな音がして雑念から離れられる気がした。
(拙者から離れられよ、ジララ大尉)
ドロロの頭の上から勢いよく滝が打ち付けてきた。
これでいいのだ、こうしている間は少しだけでも彼のことを忘れられる。無の境地、それこそがアサシンだと教えてくれたのもあの人だった。余計な感情を持たないこと。それがどれだけ大事なのか身を持って知った。だというのにやはり胸が疼いた。雑念にとらわれるな、自分にそう言い聞かせる。何より自分は今はゼロロではない、ドロロなのだ。あの人の思いはあの日きっぱりと断ち切ったはずなのだ。冷たい滝に打たれて指先がかじかんだ。触れたことのないあの人の鋭い指先を思った。触れたいとどれだけ願ったことだろう。それは決して叶うことのないままドロロは星を去った。もうこのまま地球で生きるのも悪くない。そんな思いすらあったというのに。
結局滝行の効果はほとんどなかった。頭の中を雑念が支配してかなわなかった。
家に帰ると小雪がいた。
「ドロロ聞いてよ! 今度夏美さんと遊ぶことになったんだ」
「それはよかったでござるな」
この娘が夏美に恋をしているように、ドロロはジララを……。
「楽しみだなぁ。さっきまで会ってたのにまた会いたいよ」
また胸が疼いた。これほどまでに自分がジララを求めていたなどと思わなかった。口にしてしまえば全てが終わってしまうから、必死に隠し通してきたのに。
「ねぇドロロには会いたい人いないの?」
「……どうでござるかなぁ」
会いたい。願わくば触れてみたい。こんな雑念をあの人は許してはくれない。
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