ジラゼロ
訓練後ジララ様に呼び出しを食らった。よくやく一息つけると思った矢先何事かと慌ててジララ様の部屋へ駆けつけた。ドアをノックして名を名乗る。中から入れと声がしてドアを開ける。すると突然ジララ様の手から射出された蜘蛛の巣が僕の体の自由を奪った。壁際に追いやられ身動き一つ取れない。一体何が起きているのだろうか。考えるよりも先にジララ様はゆっくり僕に近付いて来た。逃げようと思っても蜘蛛の巣はびくともしない。ジララ様の手が伸び、僕の頬に触れた。その手は撫でるように優しく上下を行き来した。赤い瞳にじっと見つめられる。僕は目を離せない。
「お前が闇に堕ちるのが惜しい」
そう言うときつく手首の蜘蛛の糸を絞められた。絶対に逃さないという強い意志。表情を読み取れないのにそう感じた。ジララ様は僕を縛り上げたまま手を振りかざす。右手の1本だけ伸びた長い指が頬を掠めた。そしてその尖った指先が皮膚にめり込んでいく。
じわじわと広がる痛みと共に血が流れ落ちるのを感じた。頬が熱く痛んだ。
ジララ様は頬から手を離すと胸元へ手を滑らせた。そのすぐ内側には心臓があった。僕は身をよじらせたが蜘蛛の糸はきつく、とても振りほどけるものではなかった。ジララ様の指先に力が入る。鉤爪が胸を圧迫する。
「ジララ様!」
僕は叫んだ。そうすればやめてくれるとでも思ったのだろうか。だがジララ様の手は止まった。そして代わりに手のひらが僕の胸を撫でた。
「貴殿は生きたいのだな」
その言葉の意味が僕には分からなかった。咄嗟の判断は身を助けたが僕には生きたい意思があるのか、そう疑問に思うようになった。
「何故生きたいと願う」
生あるものは皆生きたいと願っている、それではいけないのだろうか。人の命を狙う者が生きたいと願ってはいけないのだろうか。
ジララ様は蜘蛛の巣を解いた。僕はよろめいてその場にしゃがみ込んだ。
「貴方に捕まったとき、僕は死を覚悟しました。そして逃げたいと、生きたいと思いました」
ジララ様の手首から刃物が伸びて僕の顔面で止まった。
「ですがジララ様に殺されるならそれもいいと思った自分がいます」
刃物は動かない。ぴたりと動きを止め、僕も動けなかった。
「甘いな」
ジララ様はそう言うと刃物をしまった。
「俺はお前を殺すほど優しくない」
ジララ様は背中を向けた。そして帰るよう促された。僕はドアを開けるとジララ様は言った。
「いつか貴殿に俺を殺してもらおうか」
冗談だ、と付け加えてそれ以上何も言わなかった。僕はドアを閉めて思った。僕もあの人を殺せるほど優しくはないと。
頬の血は乾いていた。浅い傷だから数日で治るだろう。なぜだか惜しく思ったのはジララ様につけられた傷だからだろう。それほどまでに僕はあの方のことを。
「お前が闇に堕ちるのが惜しい」
そう言うときつく手首の蜘蛛の糸を絞められた。絶対に逃さないという強い意志。表情を読み取れないのにそう感じた。ジララ様は僕を縛り上げたまま手を振りかざす。右手の1本だけ伸びた長い指が頬を掠めた。そしてその尖った指先が皮膚にめり込んでいく。
じわじわと広がる痛みと共に血が流れ落ちるのを感じた。頬が熱く痛んだ。
ジララ様は頬から手を離すと胸元へ手を滑らせた。そのすぐ内側には心臓があった。僕は身をよじらせたが蜘蛛の糸はきつく、とても振りほどけるものではなかった。ジララ様の指先に力が入る。鉤爪が胸を圧迫する。
「ジララ様!」
僕は叫んだ。そうすればやめてくれるとでも思ったのだろうか。だがジララ様の手は止まった。そして代わりに手のひらが僕の胸を撫でた。
「貴殿は生きたいのだな」
その言葉の意味が僕には分からなかった。咄嗟の判断は身を助けたが僕には生きたい意思があるのか、そう疑問に思うようになった。
「何故生きたいと願う」
生あるものは皆生きたいと願っている、それではいけないのだろうか。人の命を狙う者が生きたいと願ってはいけないのだろうか。
ジララ様は蜘蛛の巣を解いた。僕はよろめいてその場にしゃがみ込んだ。
「貴方に捕まったとき、僕は死を覚悟しました。そして逃げたいと、生きたいと思いました」
ジララ様の手首から刃物が伸びて僕の顔面で止まった。
「ですがジララ様に殺されるならそれもいいと思った自分がいます」
刃物は動かない。ぴたりと動きを止め、僕も動けなかった。
「甘いな」
ジララ様はそう言うと刃物をしまった。
「俺はお前を殺すほど優しくない」
ジララ様は背中を向けた。そして帰るよう促された。僕はドアを開けるとジララ様は言った。
「いつか貴殿に俺を殺してもらおうか」
冗談だ、と付け加えてそれ以上何も言わなかった。僕はドアを閉めて思った。僕もあの人を殺せるほど優しくはないと。
頬の血は乾いていた。浅い傷だから数日で治るだろう。なぜだか惜しく思ったのはジララ様につけられた傷だからだろう。それほどまでに僕はあの方のことを。
