ジラゼロ

擬人化、ドールパロ

 ジララは兵舎の奥にある自室の扉を開いた。音を立てて開いた扉の向こうにはソファに腰掛けた青い髪の美しい青年が居た。彼はレースのカーテン越しに入る陽に赤く照らされていた。ジララは青年に歩み寄るとそっと頭を撫でる。ゼロロ、そう名前を呼んだ彼が動くことはない。何故ならゼロロは人間そっくりに作られた人形だからだ。本物の人間と見紛うような精巧な出来。皮膚の質感もさらさらの長い髪もジララが求めた理想の姿だった。
 かつてジララの愛した者たちは次々に散って行った。そこでジララは考えた。人形ならば自分のもとを離れることはないと。ジララは自分好みの青い髪の美しい青年を作り上げた。そしてゼロロと名を付けた。ゼロロは真っ白な肌にビー玉のような青い目が、アンティークのフランス人形のように美しかった。ただそこには人形という弊害はもれなく存在した。どんなにジララがゼロロを愛してもゼロロがジララを愛することはない。分かっていながら人形を作ったというのにやはり物足りなさがジララの中に生まれていた。
 ある日ジララは夢を見た。常にソファに座ったきりのゼロロが自分の足で立ち上がったのだ。そしてあろうことか口を開いた。
「ジララ様」
 初めて聞くその声は澄んで美しく簡単に消えてしまいそうに儚かった。ジララは驚いてゼロロの目を見つめる。生気のないガラスの目。吸い込まれるような青。だがこれが所詮は夢であることにジララは気がついていた。ジララは腕を伸ばし愛おしむようにゼロロの髪を撫でた。およそ人形を扱っているとは思えない丁寧な指先。ゼロロは細い腕を伸ばすとジララの首へ抱きついた。感じるはずのない体温。ジララはゼロロを肌で感じ、思う。もし自分に救いがあるとしたらゼロロなのではないか。全てをゼロロがなんとかしてくれる、そんな気がした。
 ジララは目を覚まして一番にゼロロを見た。彼はいつものようにソファに座ったまま動かなかった。ジララはベッドから立ち上がりゼロロを抱き抱える。そして枕に頭を乗せ、寝かせてやった。その隣にジララは横たわりゼロロの顔を眺めた。ジララはゼロロの体を抱き、目を閉じる。もう一度あの夢を見たい。そう願いながらジララは夢へと落ちていった。
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