ジラゼロ

 訓練終わりに同僚にべっこう飴をもらった。ペコポンという田舎の星の土産らしい。任務に行ったついでに土産にと買ってきてくれたそうだ。そのべっこう飴はまるで宝石のように美しいカッティングが施されていた。透き通る金色が透明の袋に包まれて何だか不思議なものに見えた。
 僕は自室に着くと飴を指先でつまみ窓から陽の光に照らした。キラキラと輝く飴はより一層本物の宝石のように見えた。
 僕は包装を開けて飴を口に含んだ。砂糖を煮詰めたような強烈な甘さがじわじわと口の中で広がって溶けていく。何故かふと頭にジララ様の姿が思い浮かんだ。僕は慌てて意識から彼を打ち消す。からからと口の中で飴を転がして燻り続ける思いから気を逸らした。意識を集中させれば舌が焼けそうに甘くなっていく。駄目だと思えば思うほど強く惹かれて仕方がなかった。
 宝石など、いくらでも手に入るのだろう。宝石を模した飴ならばもっと容易く手に入ってしまう。僕が欲しいものはどんなに莫大なお金があっても手に入れることはできない。打ち消すことのできない感情を抱いたことを知られたら、彼はどう思うのだろうか。軽蔑し、侮蔑の眼差しを向けるだろうか。それでも僕は止められない。ジララ様の視線、仕草、全てが僕を虜にさせていたのだ。
 ガリ、と飴を噛む。砕けた破片が口の中に散らばり、まるで僕の心の中のようだった。呆気なく溶けていく破片。宝石は口に入れてしまえばただの飴になっていた。もしもジララ様が手に入ったらならば、彼はどうなるのだろう。僕がいつも見ているジララ様とは違う一面を見せるのだろうか。気を緩ませた顔や寝姿……僕は想像を巡らせた。同じように僕はジララ様にしか見せない顔をするのだろうか。
 飴は全て溶けてしまった。口の中には未だに甘さが残っていた。
(僕は宝石なんか興味はない。ただ……)
 欲しいものは手に入らない。悔しさと虚しさに襲われて体をベッドに横たえた。隣に彼がいてくれたら、頭を撫でてくれたら。どんなに高価な宝石よりも僕は嬉しいだろう。だがそれは夢のまた夢。僕は目を閉じる。夢の中ででもいいから彼に触れたかったのだ。
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