ジラゼロ

 ジララとゼロロは敵の罠にかかり、狭いシェルター内に閉じ込められていた。二人の距離はあまりにも近く、互いの息遣いさえ聞こえるほどだった。任務の最中だというのにゼロロの個人的な感情が抑えきれず顔を覗かせていた。普段の訓練では、これほど近い距離にいることなどなかった。ましてや、息遣いが聞こえるなんて。ゼロロは内心落ち着かなさを隠せず、指先を何度もそわそわと動かしていた。何度も頭から振り払おうとした。だができない。ゼロロの頭の中は、体が密着するほど近いジララのことしか考えられなくなっていた。
「離れていろ」
 ジララの声は冷静だった。ゼロロは言われた通りジララから距離を取る。彼は暗殺兵術を駆使してシェルターからの脱出を試みるつもりだった。シェルターには驚くほど簡単に穴が開く。ゼロロは外の様子を確かめようと顔を出した。その瞬間、敵の銃弾がゼロロの頭上を掠めジララは咄嗟にゼロロを押し倒した。
「死に行くつもりか」
 耳元で囁かれた声には微かな震えが混じりゼロロの息が詰まった。重くのしかかった体重。ジララの体温。こんな状況でそんなことを考えるべきではないと分かっているのに、頭からそのことが離れない。
 敵はシェルターから出てきたところを狙うつもりだったらしい。ジララはシェルター内から赤い光を放つと見張りの兵を操り始めた。影人形。ゼロロはまるで自分がジララに操られている錯覚に陥る。そしてその様子をただ呆然と眺めることしかできなかった。
 二人はシェルターを脱出し、追っ手が届かない場所まで逃げ延びた。ゼロロは任務中に個人的な感情を抱いたこと、そしてジララに対する尊敬を超えた感情を抱いていることに改めて気が付いた。そんな感情に囚われていると、いずれ命取りになる。そう分かっていてもその想いを振り払うことはできなかった。上官に対して決して持ってはいけない感情。尊敬のその先にあるのは……。
「余計なことを考えるな」
 ジララには全てお見通しだった。ゼロロは顔が熱くなる。好きで彼に好意を持っているわけではなかった。だがその感情が任務の邪魔をする。ゼロロは深く呼吸をする。新鮮な空気が頭を冴え渡らせてくれる気がした。だがいつまでも胸に宿った温かさは冷めることなくゼロロを悩ませるのだった。
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