ジラゼロ

 ゼロロはジララに呼ばれて個室へ向かった。何の呼び出しかと疑問を抱きつつ、常々気付いている目的でもあった。ジララ様に呼ばれた者はその目的を果たさなければならない。そう周囲で聞いたことがあったのだ。その目的が一体何を指すのか、ゼロロは知らないふりを続けてきたが、こうも呼び出しがかかってしまうと、そうは行かなくなる。何せ、ゼロロはジララのお気に入りであった。数居るアサシンの中でも特に目をかけていた、可愛い部下だったのだ。
 ドアをノックし、名を名乗る。すると中から「入れ」と声がした。中は暗く広い。ゼロロたちの部屋の質素さとは大違いだった。黒を基調とした調度品の数々。思わず見惚れているとジララが名前を呼ぶ。
「よく来たな、ゼロロ」
「ジララ様のお呼び出しですから」
 ジララは黒い革張りのソファに腰掛けていた。ゼロロはゆっくりと歩み、近づく。
「俺が貴殿を呼んだ訳が分かるか」
 ジララは問う。ゼロロは数秒頭を悩ませ口を開いた。
「ジララ様の目的を果たすため、でしょうか」
「そうだな、そうともいう」
 するとジララの手首から蜘蛛の糸のようなワイヤーが伸びゼロロを背後から抱き締める。身動きが取れない。そのままじりじりとジララの元へ強制的に近づいた。
「俺の指示を断るか」
 ゼロロは首を振る。ジララ様の言うことは絶対。断るなどとんでもないことだ。
「そうか、ならば」
 蜘蛛の糸がゼロロを押し、ぴったりとジララの体と密着した。冷たい機械の体。感情の読めない瞳にじっと見つめられ、ゼロロは自ら動くしかなかった。 指示は明確には下されないらしい、そう悟ったのだ。あの噂によれば、つまりそういうことだ。ゼロロはジララの下半身に顔を近づけた。
「ほう、そう来たか」
 アサシンとして、これくらいの覚悟はできていた。第一今指示を断ったらその鋭い爪で首を掻き切られるかもしれない。恐怖がゼロロを駆り立ててもいたのだった。両腕は蜘蛛の糸で縛られ、口しか自由が利かない。その唯一の口を舌を目一杯動かしてジララを悦ばせた。
 ジララはゼロロの頭を撫でた。気づけば蜘蛛の糸も解かれていた。
「気に入った」
「これからも部屋に招いてやろう。呼んだら来てくれるな?」
 ゼロロは完全にジララに支配されていた。思考も行動も。自分の意思で何かを考えることなどとうにできなくなっていた。
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