突っ込んできた車は４人いるうちの撮影役２人を轢き殺した。残りの２人が悲鳴をあげる。車から出てきたのは涼し気な目元を釣り上げた森山、明らかに怒りを含ませた笠松、激昂状態の黄瀬と灰崎。そして、


にっこりと笑みを浮かべた優男。彼は悠々と運転席から降り、トランクを開けたかと思うとそこから出てきたのは大きな作業箱。


「はぁーい、始めて行こうと思いまぁ～す?」


初動、物凄いスピードで名前に水責めを仕掛けた男の頭を鉄パイプで殴りつけた。何が起こったか解らないその男は踞り、もう片方……名前に、穴を開けた男の顎を殴った。


「やれ」


灰崎と黄瀬が森山と笠松が持ってきた椅子に男共を縛り付けている間に山田は名前の拘束を解く。


『……山田』
「名前」
『……待ってた』
「ごめん、待たせた」
『苦しかった』
「そうだね」
『いっぱい人が死んだな、殺したよ』
「うん、俺はお前の倍殺したし、殺すよ」
『……いた、かった』
「そうだね」
『いたかったよともや』
「……遅くなってごめん」
『みんなが、たすけてくれるひとも、いたよ、でも、おってくるやつのが、おおかった、おおかったよともや、』
「そうだね、みんな殺さなきゃね」


ぼろぼろと泣き出した名前を抱き締めた。あぁ、あの、戸亜留市で無邪気に笑って、あの強面共に可愛がられ、強くて、ボコられたくらいなら笑ってボコリ返す彼女がここまでなる１日だったのか。該当者以外にも狙われて、青峰達を、今吉さんの後輩を庇って、狙われて、追われて、こんな目にあって。あぁ、そうか。





そうか。





森山に名前を車で休ませるように言って、俺は倒れた動画を撮っていたスマホを笠松に持たせた。黄瀬と灰崎は写ったらやばいっしょ避けなーと自分だけが立つ。


作業箱から取り出さずともそこに金槌があったので、持ち上げて、１人の男の膝に思い切り、振り下ろした。


「……～～～ッ！！！！！？！！！」
「あ、なーに口に詰め物してくれたの？やだー俺の助手ったら最高に手際いいわー。耳障りな声聞かなくて良かったよー。はぁーい画面の向こうの皆ー！山田くんだよー！これから俺のだぁいじな相棒に傷付けてくれたコイツ等、あ、あと２人いたけどもう殺っちゃった！ごめんね！とりあえずコイツ等殺さない程度に痛めつけちゃいまーす☆」
「山田さーん殺さないんですかぁー？（裏声）」
「殺してもいいかなーと思うんですけどぉー（裏声）」
「怒り狂ってた割には生易しいですねぇー（裏声）」


上から黄瀬、灰崎、笠松である。お前等殺意高いねーなんて茶化しながら安心したような男２人を見遣る。


「だって、殺したら痛くないでしょお？」



男達の悲鳴は止まない