あのな、将五。
俺だって死にてー訳じゃねえさ。
ま、運命だったって事だよ。俺の寿命だったって事だ。
心残りだってあるさ！お前のことや、武装のこと…妹のユキ。九里虎のこと。まだ柳の兄貴にラーメン食わせてねぇ。

泣くんじゃねーよ…俺だって泣きたくなんだろ？

あー、くそ。お前のせいだぞ将五。

くそ。…あー。死にたくねーなぁ。


ほんとはな、将五。お前にあんな偉そうなこと言っておきながら、この現状に一番甘えてたのは、俺なんだ。

どうにか死なねーようによ、考えたり動いたりしたけど…結果俺は死ぬんだ。毎回、バイク事故でな。

なんでバイク事故って解ってるのに乗るのか？お前、馬鹿か？
俺等は走り屋だぜ？走らねーなんて俺等じゃねーよ。


…なぁ。俺は、毎回毎回…知らねーふりしてたからお前とはゆっくり話せなかったな。

この数日、お前には辛い思いさせたな。何回も何回も俺が死ぬとこを見せてな。一度将太と一緒に死んだだろ？あれはキツかったなぁ…

俺は嬉しかったぜ。お前が段々とやつれてきて、それでも俺を救おうとするんだ。ひでぇ奴だよ。辛い思いしてるお前を心配するよりも俺ァ、自分を救おうとするお前を見てるのが、嬉しくて、嬉しくて…
それでも言い出さなかったのは、お前が自分で立ち直ってくれると思ったからだ。

それが、なんだ？
お前はいつまでここに立ち止まるつもりなんだよ。

ここはな、将五。きっとお前の後悔の空間なんだ。俺もきっと、お前が作り出した幻影なんだ。

あ？幻影なんて言葉知ってたのか…ってお前、段々十三兄貴に似てきたんじゃねーのか？嫌味にキレがあるぞ…嬉しくねぇ成長だな。

だー！そうじゃなくて！

つまりだな。…お前が前に進もうとすれば、抜け出せるはずなんだ。

あるべき場所へ。俺は向こうへ。お前は武装へ。




俺は将五へと手を伸ばした。