彼は浮気なんか出来る男ではない。そんな事解りきっている。私は怒っていない。将五が正直に話したのだから。
これから付き合っていくんだ、そんな細かい事に気を取られてどうするのか。


『でもこの臭いがしてから１週間とすこし経つけど』
「それは！…女が、」
『付きまとってきた？』
「…悪い」
『どうするの？』
「え？」
『このまま付き合うの？それとも別れるの？』
「、いやだ！」


肩を掴む将五の目は必死だった。随分依存したものだ、私にはきっと解らないものだと思う。別に彼が嫌いだとか、去るもの追わずという精神という訳でもない。将五は将五として好きだ、それは変わらない。

っと、考えてる最中にずっと将五が喋っていた。どうやら一度関係を持ってしまって私に言うぞ言うぞと脅されていたのだとか。彼は嫌われたくない一心で頑張って避けていたのだと。


『うん、将五は私と別れたくないんだね？』
「あぁ、」
『じゃあその女ほっとこうか。』
「え？」
『私は知っちゃった訳だから、その脅しはもう無効な訳だ。だから将五はその女ほっとけばいいよ』


はい話終わり。と立ち上がり玄関に立った。どこに行くのかと問われたのでジュース買ってくると答える。


「お前は、こんな俺と別れたいと思わねえのか？」
『なにを言ってるんだお前は』


あ、本音が。柔らかい言葉を選ぶ余裕も私にはないようだ。


『私は別れたかったら別れたいって言うさ。言わないのは確実に好いているからでしょう。』
「でも、俺は」
『次は間違いを起こさないようにすればいい。反省してるから大丈夫。そこまで不安にさせたのも私だ、』


お互い様なんだよ。そう言って家を出た。



喫茶店はチャリで5分。なるべく冷静を保って中へ入る。


『久しぶり藤代。』
「？あぁ久しぶり。将五なら君のとこに言ったと思うけど」
『最近将五に付きまとってる女がいると思うんだ、次見かけたら私に教えてくれるかな』
「あー、言ったんだ。将五。」
『と言うか聞き出したよ』
「てっきり別れるのかと思ったよ」
『冗談でしょ。なんでわざわざ好きあってるのに別れるの』
「ふーん？まぁ解ったよ」


多分、その女は明日以降現れないだろう。


私はそれの愛を語れない。でももしこれを愛と呼ぶならば、なんて歪んでいるのかと。安心しきった顔で部屋で居眠りしている将五を見て頭が痛くなった