不良はヤクザと交われない

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「その怪我、どうした」
『こんな小さな怪我秒速で見つける事ある?ビビるんだけど』


あの後色々と打ち合わせて五人でガハガハ笑うまでになり、暗くなる頃名前はくわくわ欠伸を零しながら涼の家に帰った。適当にご飯を買って米を炊いていると帰ってきた涼は秒で名前の頬の傷に気付いた。山田の手当ては完璧であったのでホントに小さい傷だってのに。


「どうしたって聞いてんだよ」
『大した事じゃ』
「なんでお前からそんな臭いがする」


ギラりと目を鈍く光らせた涼にしくった、と無表情のまま名前が胸の内で舌を打った。さっき帰って来て着替えてもないし風呂にも入ってない。撃たれただけならまだしも、自分でも撃っちまってるから余計だ。山田もタケも気にする奴じゃなかったから気を抜いちまった。
だけど言う訳にいかない、まだ早い。あの殺し屋……トムとジェリーとか抜かす馬鹿共を抱き込んだ事はまだ言うにゃちょっとタイミングが宜しくない。それなら、どうしたものか。


「聞いてるのか」
『涼ちゃん』
「なに隠してやがる」
『昨日の話の続き、しよっか』
「おい」
『なんで私が700を超える兵隊を持ったのか。私のイヤリングの事、梶間の事。……聞きたいでしょ?』
「……チッ!そのやり口は誰に習いやがった、村田か!!?クソッタレ、小狡い事ばかり言いやがって!俺ァ今!その傷のことを聞いてんだ!!!」
『あ、そう。聞きたくないの。へえ。この傷が付いた話も聞きたくない訳だ』


名前がぺり、と右眼の上から米神にかけて貼ってあった肌と同化するテープを剥がす。涼の目が徐々に見開き、絶望に似た怒りを燃え上がらせる。心の中でべ!と舌を出して名前は気だるげな顔のままどうする?と聞くと、涼は怒った顔のまま舌を打って顎で風呂場を指した。どうやらなんとかなったらしい。

インパクトは十分。高校時代付けられた大きな傷を名前は普段隠しもせずに居るけれど、涼に会いに来るにあたってメイクだけじゃ隠しきれねえと使ったのは昔名前の顔に傷が残った事を残念に思った幼馴染や友達連中が開発班に言って作ってくれたテープだった。割と深い傷を埋めるように出来たテープは名前の肌の色と傷を正確に測って作られて居るので上からクリームでも塗っちまえば小さな傷に気付いた涼でさえ気付けないってワケ。内心笑って着替えを持って風呂場へ向かう。服を全部洗濯機にぶち込んでシャワーを浴びた。


『涼ちゃんも風呂入っちゃいなよ』
「……」
『ウケる、我妻グレ男じゃん』
名前
『はーい?』


ガシガシと頭を掻いた涼は今まで名前には一度も見せた事のないような冷えた目で睨めつけた。やべ~、と背筋に汗をかく。


「俺の忍耐がそこまで持つと思うなよ」


そう言って涼は風呂場へ。ヤバかった。いやめちゃくちゃ怖かった。今までの経験が無きゃごめんなさいって泣いてたかも。というか泣きそう。身内に凄まれるのにはめちゃくちゃ弱いので。

あの怒りようだと多分茶化したらガチで何されるか解らねえからどうすっかなぁ……とぐるぐる頭を回転させる。最もらしい事は言えるかな、どうかな。
今日は三日目、先程仕入れた情報では涼と涼を狙う奴が動くのは明後日の夜。少なくとも今日明日は乗り越えなければ。

今日明日くらいは、普通の兄妹で居たいのだ。


名前
『ん』
「まだ、痛むのか」
『いやこれ高二の時よ?痛かないよ』


風呂から上がった涼が指で名前の傷をなぞる。女が顔に傷を、なんてよりもよくも俺の妹に、という気持ちが大きかった。


「お前のその話と、こっちに来た目的は今日明日で話しきれるのか」
『うん、話しきるよ。でもね、目的だけは先に言っといてあげる』
「あ?」
『涼ちゃん、……お兄ちゃん』
「……」
『私はお兄ちゃんに死なないで欲しいの。馬鹿な事してても、百歩譲って目を瞑るよ。ただ、生きてて欲しいの』
「……名前、俺ァ」
『高二、私の兄貴分が死んだ所からだね』


常磐高校という目立たねえ高校の頭になり、自分の不手際のせいで襲われ、巻き込まれ、自分を庇って死んだ兄貴分。立ち直らせた相棒の話、そこから始まった激動の時代。


どうか騙されてくれよな、全部ホントの話なんだからさ。
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