出られない部屋に入りました
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“瓶の中身を全て飲み干さないと出られない部屋”
目の前のテーブルに小さな瓶、というかアンプルが十本。気付いたら気の遠くなるほど白い部屋に閉じ込められて、悲しいことに隣にゃお師匠さん……九里虎が居た。お、##NAME1##チャン!なんて緩く手を挙げた九里虎になんでぇ????と間抜けな声を上げ、書いてある内容とアンプルを見比べどう頑張っても、九里虎の蹴りでさえドアが壊せねえ事を知ってよーしじゃあ飲むか!となったのだけれど。
「じぇったいに許しゃん」
『なんで?別に良くない?』
「何があるか解らんっちゃけん飲ましぇるわけ無かやろ」
『だから半分こしよって言ったじゃん。九里虎こそ全部なんて飲むことないんだから』
「##NAME1##チャン」
『はい』
「すまん」
『うわ゛!?』
ひょい!と九里虎は##NAME1##を持ち上げてころん、と俯せにしてササッと自分の上着を脱いで後ろ手に縛った。九里虎!と##NAME1##が叫ぶけれど、九里虎はそれに頭をぐしゃりと撫でることで返した。##NAME1##だって九里虎が普段こんな事をする人じゃ無いことは知っている、紛いなりにも……##NAME1##が鈴蘭でたった二人の兄ちゃんと呼ぶ人間なのだし。
「##NAME1##チャン、許してくれんか。##NAME1##チャンに何かあったら鉄生に顔向け出来んのや」
『ばか!!!!!』
「##NAME1##チャン」
『ばかーー!!!中身解らないんだから一緒に飲んだ方が良いのに!!!!』
「飲むかァ」
『ばかーーーーッ!!変態!えろジジイ!!甲斐性なし!!エロガッパ!!!生殖鬼!!!!えっち!!!!!』
「カッカッカッ……むぞらしかね~!!」
『撫でんなばか!!!解け!!!』
さてそんな声は無視である。九里虎は##NAME1##に危ない橋を渡らせる事は絶ッッッッ対にしたくなかった。普段から喧嘩のやり方を教えるくらいに。普通の女の子であれば可愛がって可愛がって、とするけれど、この子はいつも危険が付き纏う。それに、……それに。九里虎は決して素直に認めたりしないけど、##NAME1##を鉄生の忘れ形見だと思っている節がある。##NAME1##に“九里虎兄ちゃん”と、鈴蘭で二人目(阪東除く)の兄ちゃん呼びに九里虎は喜びの顔なんて出さなかった。酷く苦しい顔で##NAME1##を抱き締める事しか出来なかった。それ程に、九里虎は##NAME1##を可愛がっている。
パキン、とアンプルを割る。匂いは甘め。毒でないことを祈るけれど、まぁどちらにせよ九里虎に##NAME1##に飲ませるなんて考えはない。女だからというよりは、“大事な身内”判定の##NAME1##だからであった。
『やだ、九里虎待って飲まないで!』
無視である。ええいままよとまず一本。##NAME1##が九里虎の名を叫ぶ。特に異常は無い筈だ、ちょっと甘ったるいだけで。安心させようと##NAME1##の頭をぽんと叩く。
バチ、と目の前に火花が散ったようだった。足元に転がる女の熱を感じ取った瞬間ぶわりと九里虎の内から燃え上がるような熱が上がる。気取られないように頭に置いた手を離して握りしめる。今、何を思った?この“女”を抱こうと思わなかったか?
ぐるりぐるりと九里虎の腹で熱が渦巻いていく。ここまで来たら解らない訳がない、これは媚薬だ。お遊びで彼女と飲んだ事だとかはあったけれど、こんな事にはならなかった。違法薬物でも飲まされてるのか?じゃなきゃ、こんなに。
『九里虎、大丈夫?』
「、あ、あぁ大丈夫ばい」
『九里虎?』
縛ってしまったのが悪かった、後ろ手に縛られた##NAME1##は未だに拘束を解こうともがいているけれど、その状態で九里虎を心配そうに見上げている。今すぐにその喉に噛み付こうとして……やめた。ガシガシと頭を掻いて##NAME1##を転がして距離をとる。こんな扱いされた事ないのでどうしたの、と声をかけても無視をする。
こんな物##NAME1##に飲ませるものか、でも自分一人で飲んで理性を失ったら?どれだけ抱く気が無くとも、一本目でこれだけクラクラ来てるってのに、十本も飲んだら……どうなるかは解らない。
『九里虎、』
「、ん?」
『やっぱ私も飲む、なんか九里虎、苦しそうだよ』
「大丈夫ばい」
『でも、』
「言う事ば聞け!」
今まで聞いた事がない声だった。九里虎はいつも余裕があって、女に怒鳴る事なんてない。怒られた時だって諭すように落ち着いて声を出す人なのだ、それが、こんな。
バキッ!と荒々しくアンプルを割る。さっさと終わらせてやれと飲み干して、三本目、四本目。五本目、六本目。
「フーーーーッ゛、フーーーーッ゛、」
『九里虎ってば!!!!』
「~、あ゛、……##NAME1##チャン、み、見らんでくれ」
もう熱が渦巻くなんてレベルじゃなかった。自分が熱そのものになったような感覚に襲われながらも目を##NAME1##には向けないようにする。近付こうとするのも止めるのは、##NAME1##の匂いを感じると襲ってしまいかねないからだった。
七本目、八本目。ぶるぶると震える手を抑え込んで飲み干して、鋭敏になった感覚はもうすぐそこで拘束を解いてしまう女の事しか認識していなかった。九本目、脳裏に初めて兄と呼んだ日の記憶が流れ出す。苦しい顔で、一時期顔を見るだけで嘔吐いてすら居た鈴蘭の人間である自分にそう声をかけた##NAME1##の姿が焼き付いて、
十本目。
##NAME1##はようやっと拘束を解いた。服で縛られていたから良かったものの、後ろ手だった事から抜け出すのが困難だった。急いで胸元を掴んで蹲る九里虎に近付き声をかける。
『九里虎……?』
「……」
『九里虎、ねえ、九里虎ってば』
ゆるりとその顔が此方を向く。瞬間、##NAME1##はビシリと金縛りにあったみてーに動けなくなっちまった。ギラギラ鈍く光る目は##NAME1##を突き刺して、蛇に睨まれた蛙のようにその場に縛り付けた。
ゆっくりと九里虎の手が##NAME1##の頬に触れる。
瞬間、九里虎が目の前のテーブルに頭を打ち付けた。余りの勢いに驚いて声を出せなかったけれど、何度も何度も打ち付けるので##NAME1##は咄嗟に九里虎の頭を抱き抱えて止めた。べとりと服に血がついて、もうやめてと強く抱き締める。
「##NAME1##、チャン」
『九里虎、』
「##NAME1##」
え、と思った時にゃ遅かった。身体に熱が溜まりまくって完全に目の前が真っ赤になった九里虎は##NAME1##を引き摺り倒していた。困惑する##NAME1##の視界にある部屋の条件が入る。
“瓶の中身を全て飲み干さないと出られない部屋”
パ。
“瓶の中身の効果が切れるまで滞在してください。何もせずに出る場合→24時間
~………………”
『ぐりこ、』
「ガル……」
『へ、部屋、条件。かわ、かわって……』
焼ききれかけた理性を総動員して振り返る。九里虎はそれを見て……全てを諦めて息を吐き、##NAME1##に「すまん」とだけ言って、理性を飛ばしたのだった。