短編集(クローズ・WORST)
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あれ、お久じゃん!と声をかけると背中を解りやすく跳ね上げたのは村田十三。珍しい姿を見れたもんだと笑うと少しばかりやつれた顔が見えた。
『なぁに十三、随分やつれたね。ちゃんと寝てる?てか痩せた?飯食ってる?』
「……最近、あんまり食ってねえ」
『駄目じゃん!辛い時こそ飯食えって言ったのアンタでしょ~も~世話が焼けるなァ~!』
「……お前は?」
『私は腹減らないからね!あららお目目の下に熊なんて2匹も飼っちゃって』
流石に熊は放牧しましょうね~なんて目元を擦ってやると十三は幾分か安らいだ顔になった。任せな、私はテクニシャンなのでね。
「……、これからどっか行くのか」
『ん~そうね!寿ちゃん……はいいや。好誠さんとね~、う~ん。まぁ適当?』
「もう少し、居ないのか」
『帰ってくるって!じゃ、行ってくるよ。ちゃんと栄養取って寝なさいね』
踵を返した名前の背に手を伸ばすが、何も言わずに手を握りしめた。
『やっほ~好誠さん。元気……そうではないね』
「は」
目を見開いて口を開けた好誠にくふくふと笑う。この人も存外やつれているし、十三と同じくらいの熊を飼っていた。同じように目の下のマッサージをしてやると手首を掴まれる。痛みを伴わない、ギチッという音が静かな室内に響いた。
『好誠さんもご飯食ってないっしょ~。十三もやつれてたよ?ちゃんと飯食って寝なよね』
「うるせえ、クソガキが」
『は?随分キレがないね。ま、良いけどさ。その方がらしいよ、兄ちゃん』
「、名前」
ガシャーン!!!!!と台所から皿が落ちる音がした。あ、母ちゃん!大丈夫?怪我したら大変だからね。ほら好誠さん皿割れてるから掃除しなよ。じゃ、私行くから!
待って、なんて声は名前には響かない。
『流石に善明まで熊飼ってたとは思わなかったなァ~』
「なんで、」
『あ?なんでじゃねーよ。折角名前ちゃんが目元マッサージしてやってんだから喜べやな』
本当なら善明に会う予定は無かったけど、まぁ気紛れだからね。仕方ないね。何泣いてんのお前。そんな名前ちゃんがマッサージしてんの嬉しいの?草じゃん。じゃーな。
「、名前、寿に、……寿には、会わんのか」
『会わね。あの子なら、私の幼馴染達なら大丈夫』
『よっ!花ちゃん元気ー?』
「お!名前じゃん久しぶりだな!」
『えっ花ちゃんはちゃんとやつれてないのに熊だけはご立派……。目元マッサージに来たよん』
「ほんと?名前上手いもんな~、前もやって貰って楽になった」
『花ちゃん目いいから余計疲れるもんね~!』
他の人よりか明るく振る舞う花ちゃん。それでいい。最近こんな事あったよ、こんな事あったよ、と話してくれる花ちゃんは目元が真っ赤だった。
『記念すべき最期だよ、とっきー』
はく、と金魚みたいに口を開けたとっきーに流石に笑う。皆熊飼いすぎだし、なんならあの十三よりも酷いんじゃねーの?
ほら目元マッサージしてやんよ~と頬に触ると、とっきーが私の頬に触った。柄にも無いことするね、と笑うと仏頂面であぁ、とだけ答えた。無言でそのまま向かい合う。
「……今日、誰に会ったんだ?」
『んとね、十三兄ちゃんと、好誠さんと、善明。本当はさー、光政とかも会いたかったけど。そこまで時間あるわけじゃないし?』
「そうかよ」
『お?なに、最期に会いに来てくれたの嬉しみザワか?おん?』
「あぁ」
『えっ……なに……素直なとっきーとか怖すぎわろりんちょ……てか、いい加減目閉じろよ。マッサージ出来ねーだろ』
「マッサージはいいから、座れ」
『うす』
言われた通り、とっきーが座るベッドの隣に座った。いつだか、とっきーの家に家出して来た時一緒に駄菓子とか食ったの思い出すよね~と笑うととっきーは眼鏡を外して目元を抑えた。なに、やっぱ眼精疲労じゃん。笑える。
「……、あのよ、……クロサーの、弟には?」
『会わない。アイツさ~過保護だったし?引き止めて来そうだし?もしくは追ってきそう』
「……、俺が、引き止めないと思ったんか」
『割り切って。私の大好きな先輩でしょ』
「最期までんな事言わなかったクソ女が言うことか」
『はは。……ね。とっきー』
「……んだよ」
『こっち見て』
「無理だ」
『お願い』
目元を真っ赤にしたとっきーは眉間に凄い皺を寄せて目を合わせてきた。にっこりと笑って皺を解してやる。
『泣くなよ』
「……」
『私そろそろいくから。バイバイ。いつか会おうね十希夫くん』
最期くらい目を合わせてお話したかったんだ。と立ち上がると、十希夫は名前の襟首を掴んでベッドに引き倒した。名前の顔にはたはたと水が落ちる。
「なんで、」
名前の顔には、どうしようもない諦めの色があった。
「なんで、死んだんだよ」
見下ろしたベッドには、十希夫の影しか無かった。
『なぁに十三、随分やつれたね。ちゃんと寝てる?てか痩せた?飯食ってる?』
「……最近、あんまり食ってねえ」
『駄目じゃん!辛い時こそ飯食えって言ったのアンタでしょ~も~世話が焼けるなァ~!』
「……お前は?」
『私は腹減らないからね!あららお目目の下に熊なんて2匹も飼っちゃって』
流石に熊は放牧しましょうね~なんて目元を擦ってやると十三は幾分か安らいだ顔になった。任せな、私はテクニシャンなのでね。
「……、これからどっか行くのか」
『ん~そうね!寿ちゃん……はいいや。好誠さんとね~、う~ん。まぁ適当?』
「もう少し、居ないのか」
『帰ってくるって!じゃ、行ってくるよ。ちゃんと栄養取って寝なさいね』
踵を返した名前の背に手を伸ばすが、何も言わずに手を握りしめた。
『やっほ~好誠さん。元気……そうではないね』
「は」
目を見開いて口を開けた好誠にくふくふと笑う。この人も存外やつれているし、十三と同じくらいの熊を飼っていた。同じように目の下のマッサージをしてやると手首を掴まれる。痛みを伴わない、ギチッという音が静かな室内に響いた。
『好誠さんもご飯食ってないっしょ~。十三もやつれてたよ?ちゃんと飯食って寝なよね』
「うるせえ、クソガキが」
『は?随分キレがないね。ま、良いけどさ。その方がらしいよ、兄ちゃん』
「、名前」
ガシャーン!!!!!と台所から皿が落ちる音がした。あ、母ちゃん!大丈夫?怪我したら大変だからね。ほら好誠さん皿割れてるから掃除しなよ。じゃ、私行くから!
待って、なんて声は名前には響かない。
『流石に善明まで熊飼ってたとは思わなかったなァ~』
「なんで、」
『あ?なんでじゃねーよ。折角名前ちゃんが目元マッサージしてやってんだから喜べやな』
本当なら善明に会う予定は無かったけど、まぁ気紛れだからね。仕方ないね。何泣いてんのお前。そんな名前ちゃんがマッサージしてんの嬉しいの?草じゃん。じゃーな。
「、名前、寿に、……寿には、会わんのか」
『会わね。あの子なら、私の幼馴染達なら大丈夫』
『よっ!花ちゃん元気ー?』
「お!名前じゃん久しぶりだな!」
『えっ花ちゃんはちゃんとやつれてないのに熊だけはご立派……。目元マッサージに来たよん』
「ほんと?名前上手いもんな~、前もやって貰って楽になった」
『花ちゃん目いいから余計疲れるもんね~!』
他の人よりか明るく振る舞う花ちゃん。それでいい。最近こんな事あったよ、こんな事あったよ、と話してくれる花ちゃんは目元が真っ赤だった。
『記念すべき最期だよ、とっきー』
はく、と金魚みたいに口を開けたとっきーに流石に笑う。皆熊飼いすぎだし、なんならあの十三よりも酷いんじゃねーの?
ほら目元マッサージしてやんよ~と頬に触ると、とっきーが私の頬に触った。柄にも無いことするね、と笑うと仏頂面であぁ、とだけ答えた。無言でそのまま向かい合う。
「……今日、誰に会ったんだ?」
『んとね、十三兄ちゃんと、好誠さんと、善明。本当はさー、光政とかも会いたかったけど。そこまで時間あるわけじゃないし?』
「そうかよ」
『お?なに、最期に会いに来てくれたの嬉しみザワか?おん?』
「あぁ」
『えっ……なに……素直なとっきーとか怖すぎわろりんちょ……てか、いい加減目閉じろよ。マッサージ出来ねーだろ』
「マッサージはいいから、座れ」
『うす』
言われた通り、とっきーが座るベッドの隣に座った。いつだか、とっきーの家に家出して来た時一緒に駄菓子とか食ったの思い出すよね~と笑うととっきーは眼鏡を外して目元を抑えた。なに、やっぱ眼精疲労じゃん。笑える。
「……、あのよ、……クロサーの、弟には?」
『会わない。アイツさ~過保護だったし?引き止めて来そうだし?もしくは追ってきそう』
「……、俺が、引き止めないと思ったんか」
『割り切って。私の大好きな先輩でしょ』
「最期までんな事言わなかったクソ女が言うことか」
『はは。……ね。とっきー』
「……んだよ」
『こっち見て』
「無理だ」
『お願い』
目元を真っ赤にしたとっきーは眉間に凄い皺を寄せて目を合わせてきた。にっこりと笑って皺を解してやる。
『泣くなよ』
「……」
『私そろそろいくから。バイバイ。いつか会おうね十希夫くん』
最期くらい目を合わせてお話したかったんだ。と立ち上がると、十希夫は名前の襟首を掴んでベッドに引き倒した。名前の顔にはたはたと水が落ちる。
「なんで、」
名前の顔には、どうしようもない諦めの色があった。
「なんで、死んだんだよ」
見下ろしたベッドには、十希夫の影しか無かった。