そつぎょう
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ハイ、ではこれから名前チャン勝利記念お疲れ様会を始めようと思います」
「負けた直後の人間集めてそんな事あるか?」
「名前ズルいよ……あれは俺身体動いちゃうよ……」
『めんご』
あの後、持ち前の身体能力を駆使して全力ダッシュをカマしていた花は急ブレーキ、からのターンをキメて名前をキャッチした。だって飛んだ名前は完全に体勢をわざと崩し、花が受け止めるのを前提としていたからだった。あのままだと怪我をしちまうかもしれない、と思う前に花の身体は動いていた。
疲れ果てた皆はやっと終わったよ……と戻っていき、名前は花に抱えられたマンマ屋上へ。山田達が用意しておいたコーラやら茶やらで乾杯。
「あ゛ー……あんな走るの久しぶりだわ」
「この歳になって全力疾走って中々無いよね。俺等は体育で全力だけど」
「名前!おにぎり食うか!?」
『待って今食ったら吐く』
「お前体力無くないか?俺ん家遊び来るか?」
『ヤ行くけど花ん家マジで泊まり込み前提じゃん。そうだタケちゃん花ん家行ってみたくない?』
「んえ、どこ」
「山!」
「雑ゥ」
『私と山田1回遊び行ったけどめっっっ……ちゃやばいよ』
「なにが」
「猪と熊に出会うよ」
「そんな事ある?」
「前俺着いてったけどガチな装備で行った方がいいよ」
「寅ちゃが言うなら相当では」
はーあ、とソファを陣取ってダラつく名前が起き上がるのすら億劫で手を伸ばすと寅が手を差し出してくる。有難く貰うと、寅は「初めてだね」と笑う。何がだろ、と少し考えて。
あ、そう言えば。私、花とか十希夫くんとか。限られた人間からしか差し伸べられた手を取らなかったや。あの事件以降余計に。
元々名前は助けを求められるようになった割に色んな意味でも物理的にも手を差し伸べられると意地を張っちまう面倒臭い女なので、こうして人の、しかも鈴蘭の人間の手を取ったのは……自分の中で何かが変わったのだと自覚した瞬間だった。
『花』
「ん?」
『あ、』
「うん」
『あ、ありがとうね゛』
何に感謝されたかは解らない。それでも、花はそれに「おう!」と元気に応えた。花にはそれが名前の踏ん切りが付いたのだと理解出来たからだった。
その後、名前は人払いをして、ほんのちょっと花と秘密の話をした。過去の話だった。『あのね、これは十三も、幼馴染連中も、十希夫くんも知らないんだけど』と。
『昔さ、私死にかけた……死のうとした事があったのね。いやさ、うち両親離婚してるっつったじゃん。でもまだ家に居る頃、母親知らねえ男連れてきてさ。手出されかけたりとかしたワケ』
「は?」
『ア未遂。怒んないでね。母親助けてくれたしさ。父親も、母親居ねえ時めちゃくちゃ陰湿でさぁ、私ば嫌ってたから。痕が残らねえ程度の暴力とかあって。村田家行くまで生ゴミとか食ってよく腹壊したわ……ハハ……。ンで、なんもかんも諦めっちまって。川に飛び込んだンだよね。ほら、私元から助けとか求めんの下手くそだから。十三とかに言えなかったし。んで……まぁ、助けてくれた人が居たからここに居るワケだけど』
「うん」
『ソイツ、鈴蘭でさ。ずぶ濡れで私ば助け出して……こんなちっちゃいいたいけな少女の私の胸倉掴んでもう馬鹿みたいに怒ってさ。助けてって言え!って。助けとか求めねられねえで死なれっちまった奴の事も考えやがれ!って。それがキッカケで少しずつ人に頼るようになったんだけど……ねえ、私が鈴蘭嫌いになった原因、鳳仙の兄貴分が……鈴蘭の奴に殺されたって話、覚えてる?』
「覚えてるよ」
『ハハ……、殺した奴の名前、川西って言うの。……。助けてくれた奴も、川西なんだ』
「え」
『……。人って、悪い所ばっかじゃないよね。私が一番解ってた筈なのに、……こんな時まで、今の今まで……この事忘れてたんだよね』
なんだかなぁ、とそれきり名前は上を向いちまった。花はそれに、「大人になるって、こういう事なのかな」と呟いた。二人は夕方、「ねえ友っち腕相撲大会でツトムに負けたンだけどウケる(笑)」と言いに来たタケに声を掛けられるまでボーッとしていた。卒業式は、目の前だった。
「負けた直後の人間集めてそんな事あるか?」
「名前ズルいよ……あれは俺身体動いちゃうよ……」
『めんご』
あの後、持ち前の身体能力を駆使して全力ダッシュをカマしていた花は急ブレーキ、からのターンをキメて名前をキャッチした。だって飛んだ名前は完全に体勢をわざと崩し、花が受け止めるのを前提としていたからだった。あのままだと怪我をしちまうかもしれない、と思う前に花の身体は動いていた。
疲れ果てた皆はやっと終わったよ……と戻っていき、名前は花に抱えられたマンマ屋上へ。山田達が用意しておいたコーラやら茶やらで乾杯。
「あ゛ー……あんな走るの久しぶりだわ」
「この歳になって全力疾走って中々無いよね。俺等は体育で全力だけど」
「名前!おにぎり食うか!?」
『待って今食ったら吐く』
「お前体力無くないか?俺ん家遊び来るか?」
『ヤ行くけど花ん家マジで泊まり込み前提じゃん。そうだタケちゃん花ん家行ってみたくない?』
「んえ、どこ」
「山!」
「雑ゥ」
『私と山田1回遊び行ったけどめっっっ……ちゃやばいよ』
「なにが」
「猪と熊に出会うよ」
「そんな事ある?」
「前俺着いてったけどガチな装備で行った方がいいよ」
「寅ちゃが言うなら相当では」
はーあ、とソファを陣取ってダラつく名前が起き上がるのすら億劫で手を伸ばすと寅が手を差し出してくる。有難く貰うと、寅は「初めてだね」と笑う。何がだろ、と少し考えて。
あ、そう言えば。私、花とか十希夫くんとか。限られた人間からしか差し伸べられた手を取らなかったや。あの事件以降余計に。
元々名前は助けを求められるようになった割に色んな意味でも物理的にも手を差し伸べられると意地を張っちまう面倒臭い女なので、こうして人の、しかも鈴蘭の人間の手を取ったのは……自分の中で何かが変わったのだと自覚した瞬間だった。
『花』
「ん?」
『あ、』
「うん」
『あ、ありがとうね゛』
何に感謝されたかは解らない。それでも、花はそれに「おう!」と元気に応えた。花にはそれが名前の踏ん切りが付いたのだと理解出来たからだった。
その後、名前は人払いをして、ほんのちょっと花と秘密の話をした。過去の話だった。『あのね、これは十三も、幼馴染連中も、十希夫くんも知らないんだけど』と。
『昔さ、私死にかけた……死のうとした事があったのね。いやさ、うち両親離婚してるっつったじゃん。でもまだ家に居る頃、母親知らねえ男連れてきてさ。手出されかけたりとかしたワケ』
「は?」
『ア未遂。怒んないでね。母親助けてくれたしさ。父親も、母親居ねえ時めちゃくちゃ陰湿でさぁ、私ば嫌ってたから。痕が残らねえ程度の暴力とかあって。村田家行くまで生ゴミとか食ってよく腹壊したわ……ハハ……。ンで、なんもかんも諦めっちまって。川に飛び込んだンだよね。ほら、私元から助けとか求めんの下手くそだから。十三とかに言えなかったし。んで……まぁ、助けてくれた人が居たからここに居るワケだけど』
「うん」
『ソイツ、鈴蘭でさ。ずぶ濡れで私ば助け出して……こんなちっちゃいいたいけな少女の私の胸倉掴んでもう馬鹿みたいに怒ってさ。助けてって言え!って。助けとか求めねられねえで死なれっちまった奴の事も考えやがれ!って。それがキッカケで少しずつ人に頼るようになったんだけど……ねえ、私が鈴蘭嫌いになった原因、鳳仙の兄貴分が……鈴蘭の奴に殺されたって話、覚えてる?』
「覚えてるよ」
『ハハ……、殺した奴の名前、川西って言うの。……。助けてくれた奴も、川西なんだ』
「え」
『……。人って、悪い所ばっかじゃないよね。私が一番解ってた筈なのに、……こんな時まで、今の今まで……この事忘れてたんだよね』
なんだかなぁ、とそれきり名前は上を向いちまった。花はそれに、「大人になるって、こういう事なのかな」と呟いた。二人は夕方、「ねえ友っち腕相撲大会でツトムに負けたンだけどウケる(笑)」と言いに来たタケに声を掛けられるまでボーッとしていた。卒業式は、目の前だった。