そのろく
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「名前」
『……』
「名前、どうしたんかな」
『……』
「ダメだこりゃ」
自分の部屋に勝手に入り込んで隅で一人踞る名前に十希夫はカリカリ頬を掻いた。黙って隣に座ってやると名前の肩がびくりと跳ねる。こうなりゃ話してくれるまで待つしかねえかとすりすり頬を指で撫でてやると、妙に暗い目を向けてきたのでもう一度どうしたのかとなるべく優しい声で聞いてみた。
『……、と、きー、』
「うん?」
『あ。あのね』
「おー」
『じ、じゅうぞ、ね。お、おおさか、行くんだって』
「えっ」
『あ、あいつね。向こうに友達居るから。と、友達と、お店開くんだって。ホントはもっと、前に行く予定だったんだけど、色々あって、来週には、行くって』
名前は気付いていた。その色々ってーのは、自分の事であると。兄貴分を目の前で亡くした名前を置いて行ける程十三は人でなしじゃない。そんなのは解ってる。
でも名前が気にしているのは、また十三の人生の邪魔をしてしまったという事。今まで親代わりのように可愛がり、世話を焼いてくれていた十三の人生をまた食い荒らしちまったという事。
反抗期の時、十三が自分の親のようになろうとして居たのを見て自己嫌悪に陥り馬鹿なことをした。あんなに大好きな兄貴分が自分のせいで振り回されるのを見たくなかった。それなのに、今回も。
「……。んで、飛び出して来ちまったのか」
『ん゛』
十希夫はなんだかコイツ、馬鹿なこと考えてるなァとどデカい溜息をひとつ。そんで、「馬鹿野郎」と呟いた。愛しい女が自分を心の拠り所にしているのだから、それにしっかり応えねば男じゃねーので。
「今十三さんが一番嫌なことはなんだと思う」
『……』
「お前が変な気遣って残りの時間一緒に居れねえ事だろう。あのなぁ、心配と、迷惑を履き違えるな。あの人が向こうに行くのを遅らせたのは“お前の事が心配だったから”であって、“お前のせい”じゃねーんだ」
『……そんなの、解んないじゃん』
「おー、俺ァ十三さんじゃねーからな。ましてあんな人の心なんか読めるかよ」
ガシガシと乱雑に名前の頭を撫でる。大人しくそれに身を任せるのを見て苦く笑って、腕を掴んで立ち上がった。
「帰るぞ。俺も一緒に行くからよ」
『来てくれるの』
「今のうちに殴られとかなきゃな」
『殴られる前提なの』
「まぁな」
「名前」
『……』
「名前、どうしたんかな」
『……』
「ダメだこりゃ」
自分の部屋に勝手に入り込んで隅で一人踞る名前に十希夫はカリカリ頬を掻いた。黙って隣に座ってやると名前の肩がびくりと跳ねる。こうなりゃ話してくれるまで待つしかねえかとすりすり頬を指で撫でてやると、妙に暗い目を向けてきたのでもう一度どうしたのかとなるべく優しい声で聞いてみた。
『……、と、きー、』
「うん?」
『あ。あのね』
「おー」
『じ、じゅうぞ、ね。お、おおさか、行くんだって』
「えっ」
『あ、あいつね。向こうに友達居るから。と、友達と、お店開くんだって。ホントはもっと、前に行く予定だったんだけど、色々あって、来週には、行くって』
名前は気付いていた。その色々ってーのは、自分の事であると。兄貴分を目の前で亡くした名前を置いて行ける程十三は人でなしじゃない。そんなのは解ってる。
でも名前が気にしているのは、また十三の人生の邪魔をしてしまったという事。今まで親代わりのように可愛がり、世話を焼いてくれていた十三の人生をまた食い荒らしちまったという事。
反抗期の時、十三が自分の親のようになろうとして居たのを見て自己嫌悪に陥り馬鹿なことをした。あんなに大好きな兄貴分が自分のせいで振り回されるのを見たくなかった。それなのに、今回も。
「……。んで、飛び出して来ちまったのか」
『ん゛』
十希夫はなんだかコイツ、馬鹿なこと考えてるなァとどデカい溜息をひとつ。そんで、「馬鹿野郎」と呟いた。愛しい女が自分を心の拠り所にしているのだから、それにしっかり応えねば男じゃねーので。
「今十三さんが一番嫌なことはなんだと思う」
『……』
「お前が変な気遣って残りの時間一緒に居れねえ事だろう。あのなぁ、心配と、迷惑を履き違えるな。あの人が向こうに行くのを遅らせたのは“お前の事が心配だったから”であって、“お前のせい”じゃねーんだ」
『……そんなの、解んないじゃん』
「おー、俺ァ十三さんじゃねーからな。ましてあんな人の心なんか読めるかよ」
ガシガシと乱雑に名前の頭を撫でる。大人しくそれに身を任せるのを見て苦く笑って、腕を掴んで立ち上がった。
「帰るぞ。俺も一緒に行くからよ」
『来てくれるの』
「今のうちに殴られとかなきゃな」
『殴られる前提なの』
「まぁな」