そのいち
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屋上のドアの前に男、久我は立っていた。昨日の女が何者かは知らないけれど、どうにもあの言葉に逆らえなくて。というかあの口ぶりだと……、ぶんと頭を振る。
「ねえ~いつまで突っ立ってんの~?」
「!」
「ギョッとしないで~?俺ちん傷付いちゃう。屋上に用でしょ~?開けな?」
「や、」
「あ゛~しゃらくせえ~!ドンドンドン俺ちんでえ~す!入るよお~!!」
「あ、ちょ、」
イカれた風貌の男が久我の手首を掴んでドアを開ける。幾らでも見てるってのに、屋上から見る空はやけに広かった。ようやく暖かくなってきた風がするりと久我の頬を撫でると同時に手首が離される。
『よ!まぁ座れよ』
昨日の女がベンチに座っている。隣にゃ知らない男、上履きの色から二年だと言うことだけが解った。少し離れてあの優男とイカれた男が机を挟んで野球盤で遊んでいる。
『久我。座りな』
呆けていると女がもう一度久我に言葉を投げた。その圧に思わずベンチの向かいに置いてある椅子に腰掛けて、なんで言うことなんざ聞いているんだと我に返る。
『はい、じゃあ改めて。私苗字名前、お前がお望みの常磐連合初代頭だよ。はい、いい感じのリアクションしな』
「は?」
『つまんね。辻本~』
「無茶ぶりすんな」
『お、ナマイキ。鮫さんの写真あげよっか?』
「やめて」
「ッおい!」
ふざけてんのか、と声を荒らげかけた久我を辻本が素早く制す。名前がそれを微笑ましげに眺めて煙草に火をつけた。
『忘れてた、これは辻本。私の、まぁ跡目みたいなモンかな』
「頭俺も吸っていい?」
『良いよ。はい、希望通り頭に会えたね良かったね。で?どうしたいわけ?』
「……」
『あぁ、大丈夫。辻本は私が勝手にお前と会わせてやりてえから呼んだだけだし、あそこの馬鹿共は野球盤に夢中だからね。気にしなくていいよ』
「……、アンタ、なんで……街、制圧したりしねえの」
『なんでかなぁ』
「それだけの力はあるだろ。あんな化け物みてーに強い奴等も居るんだろ、そんなのを従えてるくせになんで止まったまんまなんだよ」
その言葉に辻本がオワ……と片手で顔を覆った。名前は膝をパシパシ叩いて大爆笑。それはそう、辻本も去年同じような事を名前に言ったからである。
『去年ねえ、女が番張るなら舐められんなー!周りの奴等食い殺す勢いで立て!下がるんじゃねー!って言ってきた奴が居てねえ』
「ごめんて」
『あのね、辻本も丁度いいから聞きなね』
ほれ、と辻本と久我に缶コーヒーを渡す。自分はいつものいちごオレ。ずぞぞと吸い上げて甘味補充。
『辻本は知ってるだろうけど、今の大きな勢力の大半……鳳仙、武装、天地……ん所も数えるかァ。そこはまぁ私の身内みてーなもんなのよ。鈴蘭はね?私嫌いだけどさ。それでも鈴蘭の頭になるだろう男は私も気に入ってるし、ある意味戸亜留で一番性格の良い男でね』
「馴れ合いかよ」
『ハハ。私ねえ、思うのよ。どこの高校だどこのチームだ、所属に差異はあっても所詮戸亜留市っていう井戸の中の蛙なんだぜ。良いじゃない、別のとこだろうが仲良くなっても。……争いが起こらねえならもっといい!』
激動の中学生活を送った久我はそれを甘いと認識した。そんな事言ったって結局戸亜留市ではいつでも勢力争いや小競り合いが止まねえのだし。
『私は本当は連合なんざ作る気は無くてね。知っての通り常磐は元々鈴蘭にも鳳仙にも行きたくねー、まして武装なんかにも入りたくねー!って奴とか、喧嘩に飽きた奴だとかが四割、後の六割はそういう争いから避けて普通に学校行きてえって奴等なんだ。分別の付いてる奴等は一般生徒は狙わねえ、でも悲しい事に分別の付いてねえ半グレとかクソ野郎ってのはまだまだ居るんだ。私はそういう奴等から下に居る連中を護りたいんだよ』
「……なんで、俺にそんな話するんだよ」
「敬語使えや」
「辻本~!お前が言えた事じゃねえ~からね!」
「さっせん」
『簡単だよ、私がお前を気に入ったからさ』
「は?」
『だってお前、そこの私の番犬共二人にやられて立ち上がる根性は良いよ!殺る気は無かったにしろ、ソイツ等はうちの最高戦力だ。すげー事だよ、誇っていい。で、だ』
煙草を揉み消す。名前がニィと口端を吊り上げると遠目から見ていた山田とタケがあーあ、と苦く笑う。悪い癖だよ。
『今日の放課後に私に文句のある連中にお題を出す。久我、お前それ勝ち残れ』
「は??」
『あぁ、喧嘩はナシだよ。悪いけど腕っ節だけで生き残れる程常磐は甘くないんでね』
「お、お題って?」
『辻本』
「去年のッスよね。了解です」
『死人は出すなよ』
「喧嘩じゃねーんだよな???」
『それに生き残ったら一日私の傍に居ることを許してやる』
貴重な体験だよ、各勢力の所遊覧ツアーだ。そう意地悪な顔で笑う名前に久我も、辻本も嫌な顔~……と顔を歪めることしか出来なかった。
屋上のドアの前に男、久我は立っていた。昨日の女が何者かは知らないけれど、どうにもあの言葉に逆らえなくて。というかあの口ぶりだと……、ぶんと頭を振る。
「ねえ~いつまで突っ立ってんの~?」
「!」
「ギョッとしないで~?俺ちん傷付いちゃう。屋上に用でしょ~?開けな?」
「や、」
「あ゛~しゃらくせえ~!ドンドンドン俺ちんでえ~す!入るよお~!!」
「あ、ちょ、」
イカれた風貌の男が久我の手首を掴んでドアを開ける。幾らでも見てるってのに、屋上から見る空はやけに広かった。ようやく暖かくなってきた風がするりと久我の頬を撫でると同時に手首が離される。
『よ!まぁ座れよ』
昨日の女がベンチに座っている。隣にゃ知らない男、上履きの色から二年だと言うことだけが解った。少し離れてあの優男とイカれた男が机を挟んで野球盤で遊んでいる。
『久我。座りな』
呆けていると女がもう一度久我に言葉を投げた。その圧に思わずベンチの向かいに置いてある椅子に腰掛けて、なんで言うことなんざ聞いているんだと我に返る。
『はい、じゃあ改めて。私苗字名前、お前がお望みの常磐連合初代頭だよ。はい、いい感じのリアクションしな』
「は?」
『つまんね。辻本~』
「無茶ぶりすんな」
『お、ナマイキ。鮫さんの写真あげよっか?』
「やめて」
「ッおい!」
ふざけてんのか、と声を荒らげかけた久我を辻本が素早く制す。名前がそれを微笑ましげに眺めて煙草に火をつけた。
『忘れてた、これは辻本。私の、まぁ跡目みたいなモンかな』
「頭俺も吸っていい?」
『良いよ。はい、希望通り頭に会えたね良かったね。で?どうしたいわけ?』
「……」
『あぁ、大丈夫。辻本は私が勝手にお前と会わせてやりてえから呼んだだけだし、あそこの馬鹿共は野球盤に夢中だからね。気にしなくていいよ』
「……、アンタ、なんで……街、制圧したりしねえの」
『なんでかなぁ』
「それだけの力はあるだろ。あんな化け物みてーに強い奴等も居るんだろ、そんなのを従えてるくせになんで止まったまんまなんだよ」
その言葉に辻本がオワ……と片手で顔を覆った。名前は膝をパシパシ叩いて大爆笑。それはそう、辻本も去年同じような事を名前に言ったからである。
『去年ねえ、女が番張るなら舐められんなー!周りの奴等食い殺す勢いで立て!下がるんじゃねー!って言ってきた奴が居てねえ』
「ごめんて」
『あのね、辻本も丁度いいから聞きなね』
ほれ、と辻本と久我に缶コーヒーを渡す。自分はいつものいちごオレ。ずぞぞと吸い上げて甘味補充。
『辻本は知ってるだろうけど、今の大きな勢力の大半……鳳仙、武装、天地……ん所も数えるかァ。そこはまぁ私の身内みてーなもんなのよ。鈴蘭はね?私嫌いだけどさ。それでも鈴蘭の頭になるだろう男は私も気に入ってるし、ある意味戸亜留で一番性格の良い男でね』
「馴れ合いかよ」
『ハハ。私ねえ、思うのよ。どこの高校だどこのチームだ、所属に差異はあっても所詮戸亜留市っていう井戸の中の蛙なんだぜ。良いじゃない、別のとこだろうが仲良くなっても。……争いが起こらねえならもっといい!』
激動の中学生活を送った久我はそれを甘いと認識した。そんな事言ったって結局戸亜留市ではいつでも勢力争いや小競り合いが止まねえのだし。
『私は本当は連合なんざ作る気は無くてね。知っての通り常磐は元々鈴蘭にも鳳仙にも行きたくねー、まして武装なんかにも入りたくねー!って奴とか、喧嘩に飽きた奴だとかが四割、後の六割はそういう争いから避けて普通に学校行きてえって奴等なんだ。分別の付いてる奴等は一般生徒は狙わねえ、でも悲しい事に分別の付いてねえ半グレとかクソ野郎ってのはまだまだ居るんだ。私はそういう奴等から下に居る連中を護りたいんだよ』
「……なんで、俺にそんな話するんだよ」
「敬語使えや」
「辻本~!お前が言えた事じゃねえ~からね!」
「さっせん」
『簡単だよ、私がお前を気に入ったからさ』
「は?」
『だってお前、そこの私の番犬共二人にやられて立ち上がる根性は良いよ!殺る気は無かったにしろ、ソイツ等はうちの最高戦力だ。すげー事だよ、誇っていい。で、だ』
煙草を揉み消す。名前がニィと口端を吊り上げると遠目から見ていた山田とタケがあーあ、と苦く笑う。悪い癖だよ。
『今日の放課後に私に文句のある連中にお題を出す。久我、お前それ勝ち残れ』
「は??」
『あぁ、喧嘩はナシだよ。悪いけど腕っ節だけで生き残れる程常磐は甘くないんでね』
「お、お題って?」
『辻本』
「去年のッスよね。了解です」
『死人は出すなよ』
「喧嘩じゃねーんだよな???」
『それに生き残ったら一日私の傍に居ることを許してやる』
貴重な体験だよ、各勢力の所遊覧ツアーだ。そう意地悪な顔で笑う名前に久我も、辻本も嫌な顔~……と顔を歪めることしか出来なかった。