そのよん
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『世良ァ~、将五頼むね』
「ん?おう」
『寿、将五の顔に落書きとかしちゃダメよ』
「するかそんなモン」
「お前、ホントにやるのか?」
『あ?あ~!お前が百合南の修ちゃんの後輩ね?!』
「おさむ」
『高梨修。え?知らない?』
「えっえっ」
「新鮮だな……」
「ホントな」
将五が負けて、引き分けにしねえかと言ったのは長沢。比留間が納得いかねえ!前川勝負だ!とかなんとか言い出して花が二人を止めて、座っていた名前は立ち上がった。
『約束通り、やろっか。羽島』
「お~、やったるわ」
「ええ……」
「ほ、ホントにやんのか?」
『最弱なりに頑張りますわァ~!!ところでえっと、ビスコちゃん?』
「ちゃん」
「ダハハ」
「蛭子幸一だ」
『九頭神會の今代は、お前?』
「?そうだが」
『おけぴ!後で用があるから待っててね』
用って何。戸亜留市連中は嫌な予感がざわざわしながら聞いたけどニッコリされて答えては貰えなかった。
「じ、じゃあ南會の羽島サンと、常磐連合の苗字?サン。お願いしますわ」
「うぉぉおらァァ!!!!!」
萬侍の皆さんとアボ、喧嘩を見た事がない宗春はオイオイアイツ女だぞ、と目を見張る。羽島が渾身の力で右拳を名前に振りかぶって、
名前が飛ぶ。振りかぶられた羽島の腕に左足を置き足場にして、羽島の顎を蹴り飛ばす。九里虎と戦ったことがあるアボが口を開ける。萬侍の連中も宗春もポカンとしちまう。
着地して怯んだ羽島に右足を振り上げる。辛うじて腕でガードの体制に入るが、
来ない、来ない、来ない。アドレナリンが出まくった頭が全ての現象を減速する。来る筈の蹴りが来ない、現実時間で僅か一瞬宙に止められた蹴りは羽島の感覚を狂わせ、次の瞬間とてつもない破壊力と化して羽島を柱に叩き付けた。ぐぁ、と肺から息が漏れる。負ける訳に、いかねー。負ける訳にゃいかねー!半殺しにされた田川の為にも、俺は!
なんとか顔を上げた羽島の目の前には既に、飛んだ名前の足が迫っていた。
崩れ落ちる羽島の髪を掴む。長沢が勝負あり!ありだってば!と止めるけれど止まる気配はない。そのまま頭を床に叩き付け、馬乗りになる。
「名前!!!やめろ!!!!」
『ガルル……!!!ガァ!!!!』
「あれ?アイツ暴走してね?」
「してる」
「天地」
「俺ァ今末っ子だからなんも聞こえねえ」
「こういう時だけ末っ子ぶってんじゃねー!!!」
「え?なにあれ。暴走ってなによ」
「ヤバいヤバいヤバい止めなきゃアイツ殺しちまうぞ」
殴る、殴る、殴る。萬侍も戸亜留市連中も止めるけれど、止まらない。コイツが、コイツが、コイツが!!!!!コイツが私の右腕を、友哉の誇りを踏みにじった連中の一味!!!それに、
「名前」
静かな声で、光政が名前を抱き締めた。頭を打った訳でもない名前は、親友を殴るまで理性を飛ばしては居なかった。
「大丈夫だ、名前」
『ガ……』
「もう、街は脅かされたりしねえよ」
『……』
「もう下の連中の血は流れねえ、大丈夫だ。だから、止まれ」
萬侍帝国という降って湧いた敵、一般生徒を護らなければという重圧。流れる仲間の血。その全てを名前は背負っていた。他の勢力は大丈夫と思っては居れど、いずれ道具まで持ち出されたら。血で血を洗う抗争になりかねないのでは。
また、身内が死ぬのでは。
名前は振り上げた拳をゆっくり下げた。光政が離れて、天地が近付く。
「名前腕折り忘れてねえか」
「馬鹿ッッッ!!!!」
「末っ子は黙ってろ!!!!!」
「軽率に腕を折らすな」
『確かに!』
「叩くぞお前」
『仕方なァ~~』
全くワガママなんだからよ、と立ち上がり、最後に羽島の腹を蹴る姿は外道。やり過ぎだろがと中野が怒鳴るも『は?警告忘れて手出してきた分際で唾ァ吐いてんじゃねーぞ』とキレ返された。
兎にも角にも、4-3。戸亜留市に勝利がもたらされたのでさぁ帰るか!となった時である。
『お前等先帰ってて良いよ』
「は?」
『私そこのビスコちゃんに用があって』
「あっ」
「用って?」
『ん~、まぁいっか。ビスコちゃん』
「ちゃんは辞めろ」
『完全な私怨なんですが』
「え」
『竜男くん解る?九頭神』
「そりゃ知ってるけどよ」
『私竜男くんにね、目の前で兄貴分をぶちのめされてね、辞めてって前に出たらはっ倒された事があるのよね』
「えっ」
『あの人が春道くんに倒された時にね追い討ちでぶっ殺してやろうと思ったら春道くんに“お前の代でやれ!”って言われてね、竜男くんも了承したのね。ね?』
「えっ」
「おい名前」
『竜男くんと秀次郎くんと年男くん公認でお前一発殴らせて!』
「とんでもねえ名前出してきやがった!」
「えっえっえっ」
大丈夫だって痛くないからァ~!なんてニッコニコ笑うけど萬侍の面々は先程羽島をタコ殴りにした女を見ているのだ。花がどうどう、どうどうと馬を宥めるみてーにビスコと名前の間に入る。
「名前……もう終わったんだからさ……」
『は?お前等が殴り合いました!ケリは付きました!チャンチャン!で終わるのは良いよ。だからお前等先帰っててって言ったじゃん。これ私の問題なの。四年前、私が初めて敗北した人間の跡目への八つ当たりなのよ』
「ええ……」
『これだけは無理譲れない。もし断るンならお前、これからずっと背後に気を付けろよ』
月夜だけと思うなよ……、と唸る名前の目は割とガチだった。プライドガン高女なのでどうにかあの時の敗北を今代の九頭神會の会長にぶつけたくて仕方ない。
「……解った」
「おいビスコ」
「一発だけだろ……」
「良いってよ名前」
『キタコレ』
「一発だからな?な?それ以上やったら止めるからな?」
『任せな』
「名前メリケンサックいるか?」
「物騒なモン持たそうとすんな」
『私の手で殴らなきゃ気が済まないのでいらね』
じゃあ失礼しまして……と名前が前に出る。まぁ確かにお前からしたら理不尽だよね、前の代のことなんか言われたくないよね。だから平手にするわ。なんて言いながら。
「……」
「天地なに渋い顔してんだ」
「…………俺はあの女の平手で意識が飛んだことがある」
「アッ」
『じゃあね~、九頭神竜男くんが兄貴分達をハチャメチャにした分とぉ~、』
「……“と”?」
『私を相手にもしねえでただはっ倒しただけなんて屈辱を味合わせた分とぉ~』
「おっとヤバい流れ」
『私の警告を無にして常磐に喧嘩を売った分とぉ~』
「それさっき羽島で済んだんじゃ……」
『私の目の前で幼馴染基髑髏を傷付けた恨み、晴らさでおくべきか、ら゛ァ!!!!!!!』
バチンッッッ!!!!!!!!!!!