そのじゅうはち
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は、は、と息が荒くなる。押さえ付けられた女の目の前にはナイフが迫っていた。頭を鉄パイプで殴られても何人も倒し、引きずり倒され腹を何度も蹴られても、立ち上がろうと伸ばした手を踏み潰されても悲鳴は上げずに口に笛を咥えていた女は顔を上に向かされ、それを目にした瞬間ぽとりと笛を離してしまった。
「女の癖に」
「他の男に取り入って今の地位にいるのに生意気なんだよ」
「抑えてろよ」
声にならない叫びを上げる。チカチカと脳裏に大好きだった兄貴分の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
「そういや、鈴蘭の原田に今度は取り入ったらしいじゃねーかよ」
ピタリと女の動きが止まる。
「鈴蘭を傘下にするつもりか?」
「な、顔に傷付けたくねえだろ?可愛がってやっからよ。うちに譲れよ」
『……よ』
「あ?」
『やりたきゃやれよ』
刃物を見るだけでフラッシュバックする記憶。何よりも耐え難い事だけれど……女は、名前はそれを怒りで跳ね除けた。鈴蘭を傘下に?その為に十希夫に取り入った?
なにを馬鹿なことを言っている。鈴蘭は嫌いだが、あそこには最高の男達が大勢居る。自由な奴等が沢山居る。常磐は鈴蘭とは違う、喧嘩なんて望んでない。方向性が全く違うだろうが。それに、それに。名前の首元でフラミンゴが揺れる。
『ただ、覚悟しておけよ。全員、面ァ覚えたからよ』
「あ?」
『な~にが可愛がってやるだ、馬鹿。素直に言えよなァ、女と付き合った事が無いんですぅってよ。あったらそんな馬鹿みてーな事言わねーもんな!』
「テメー!!!」
『ンはは。……常磐は報復を忘れねえよ』
よ~く覚えておけよな、とギラついた目で言った瞬間、女の右目の上をナイフが滑り……何度目か解らない鉄パイプが振り下ろされた。
名前が目を覚ますと十三が横で椅子に座り、腕を組んで寝ているので痛む身体で頑張って腕を伸ばす。膝をぽん、と叩くと不機嫌そうに目を開けた。
「……この、」
『じゅ、ぞ……ごめん……何日……寝た?』
「あ?」
『ゆだん……しちゃったの……しんぱい……かけ、ごめんね……』
「……お前がやられてから、四日経ったよ」
『四日も……と、ともやたちは……?あ、あばれて、ない……?』
「気にするな、そのうち来る」
『あ、あいつら、は、はものつかうの……あぶない……』
「……」
十三は昨日の夜、原田に連絡を受けて車を出し、名前を病院まで送り届けた。聞くに暴走も暴走、敵を殴り倒し、将五や拓海だけでなく山田達も今の顔役達も全て薙ぎ倒したのだと。原田の首筋にとんでもねえ色の歯型があって十三がチベスナみてーな顔で見るとぺこ、と軽く頭を下げた後ふ……となんか笑ってたから腹が立って頭を殴っておいたけど。
察したのだけど、この女記憶が無い。抜け出したのも、やらかした事も。襲われた時で記憶が止まってやがるのだ。怒鳴り散らしてやろうと思ったのに。はぁ~~~~~~~、とクソデカ溜め息を吐いて、仕方ねえな……と十三は比較的無事な頬をスリスリ撫でた。
「はァ!!?記憶がない!!?」
「あぁ。抜け出した事も覚えてねー。襲われた時で記憶は打ち止めだ」
「嘘だろ……あんな大暴れしやがった癖に」
「見て十三ちゃ、俺ちんの頬っぺた!ガチで殴りやがったんだよ!!!」
「嫌いになったか?」
「「ンなわけねーだろ!!!」」
「おう。て事でだ。口裏は合わせとけよ、向こうを叩いたのはお前等。怪我は適当にどうにかしろ」
「無茶言うじゃん」
「一時間で治せ」
「鬼か?」
「アイツがお前等を殴る蹴るしたと解った時にどんな顔するか……俺の妹を泣かせたら解ってるな……?」
「わ~会ノ川の奴等中々手強かったね~!」
「俺ちんびっくりしちゃったァ~!!」
「よろしい」
常磐連合、及び戸亜留市の顔役達には箝口令が敷かれた。あの女全く覚えてねーらしいから内緒な。マジ?俺アイツに蹴られたのにな。ま、いっかぁ。
『……とっきー?』
「起こしたか」
『……首……怪我……?』
「あ?いや。それより、早く治せ。治ったら飯でも食いに行こうな」
『もんぶらん』
「ホントに食い気だな、お前」
首筋から肩にかけてガーゼを貼っつけてるこの男、実は割と不機嫌である。今日見舞いに来る最中に黒澤兄弟とタケと九里虎に囲まれ散々からかわれたので。「ねえねえそう言えば十希夫くん名前の事俺の女発言したよね」「言ったからにはもう腹は決めてんだよね?」「十希夫いい加減付き合えよマジで」「歯型付けられてニヤついてる場合じゃなかよ」、と時々腹パンされながら。喧しいわ。怪我人だぞこの女は。
『とっき』
「ん?」
『て』
「ん??」
『にぎって』
「グッ」
イライラが霧散しちまった。酷く怖い思いだってしたろうに、微塵も見せずに笑って甘えるように言う女を見てどうして不機嫌を継続させられるのか。深呼吸、深呼吸。無事な右手の指に指で触れてそのまま絡ませる。
「名前」
『ん』
「頑張ったな」
そう言えば、名前はちょっと目を見開いて……ニッとクソガキみたいな顔で当然でしょ、と笑った。
「おいそんな事あるか」
「十三さんステイ」
「離せ」
「十三ちゃいい加減妹離れして」
「離せ俺は原田を家に連れ帰って十三スペシャルを飲ませるんだ」
「殺す気か?」
「不器用な可愛がり方するんじゃないよ」
か……と口を開けて寝る名前と、名前と指を絡めてベッドに突っ伏して寝る十希夫。どちらもガキみてーな顔で寝てるからタケは苦笑しながら写真を撮って、十三は自分を抑える山田にキレ散らかしていた。
「女の癖に」
「他の男に取り入って今の地位にいるのに生意気なんだよ」
「抑えてろよ」
声にならない叫びを上げる。チカチカと脳裏に大好きだった兄貴分の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
「そういや、鈴蘭の原田に今度は取り入ったらしいじゃねーかよ」
ピタリと女の動きが止まる。
「鈴蘭を傘下にするつもりか?」
「な、顔に傷付けたくねえだろ?可愛がってやっからよ。うちに譲れよ」
『……よ』
「あ?」
『やりたきゃやれよ』
刃物を見るだけでフラッシュバックする記憶。何よりも耐え難い事だけれど……女は、名前はそれを怒りで跳ね除けた。鈴蘭を傘下に?その為に十希夫に取り入った?
なにを馬鹿なことを言っている。鈴蘭は嫌いだが、あそこには最高の男達が大勢居る。自由な奴等が沢山居る。常磐は鈴蘭とは違う、喧嘩なんて望んでない。方向性が全く違うだろうが。それに、それに。名前の首元でフラミンゴが揺れる。
『ただ、覚悟しておけよ。全員、面ァ覚えたからよ』
「あ?」
『な~にが可愛がってやるだ、馬鹿。素直に言えよなァ、女と付き合った事が無いんですぅってよ。あったらそんな馬鹿みてーな事言わねーもんな!』
「テメー!!!」
『ンはは。……常磐は報復を忘れねえよ』
よ~く覚えておけよな、とギラついた目で言った瞬間、女の右目の上をナイフが滑り……何度目か解らない鉄パイプが振り下ろされた。
名前が目を覚ますと十三が横で椅子に座り、腕を組んで寝ているので痛む身体で頑張って腕を伸ばす。膝をぽん、と叩くと不機嫌そうに目を開けた。
「……この、」
『じゅ、ぞ……ごめん……何日……寝た?』
「あ?」
『ゆだん……しちゃったの……しんぱい……かけ、ごめんね……』
「……お前がやられてから、四日経ったよ」
『四日も……と、ともやたちは……?あ、あばれて、ない……?』
「気にするな、そのうち来る」
『あ、あいつら、は、はものつかうの……あぶない……』
「……」
十三は昨日の夜、原田に連絡を受けて車を出し、名前を病院まで送り届けた。聞くに暴走も暴走、敵を殴り倒し、将五や拓海だけでなく山田達も今の顔役達も全て薙ぎ倒したのだと。原田の首筋にとんでもねえ色の歯型があって十三がチベスナみてーな顔で見るとぺこ、と軽く頭を下げた後ふ……となんか笑ってたから腹が立って頭を殴っておいたけど。
察したのだけど、この女記憶が無い。抜け出したのも、やらかした事も。襲われた時で記憶が止まってやがるのだ。怒鳴り散らしてやろうと思ったのに。はぁ~~~~~~~、とクソデカ溜め息を吐いて、仕方ねえな……と十三は比較的無事な頬をスリスリ撫でた。
「はァ!!?記憶がない!!?」
「あぁ。抜け出した事も覚えてねー。襲われた時で記憶は打ち止めだ」
「嘘だろ……あんな大暴れしやがった癖に」
「見て十三ちゃ、俺ちんの頬っぺた!ガチで殴りやがったんだよ!!!」
「嫌いになったか?」
「「ンなわけねーだろ!!!」」
「おう。て事でだ。口裏は合わせとけよ、向こうを叩いたのはお前等。怪我は適当にどうにかしろ」
「無茶言うじゃん」
「一時間で治せ」
「鬼か?」
「アイツがお前等を殴る蹴るしたと解った時にどんな顔するか……俺の妹を泣かせたら解ってるな……?」
「わ~会ノ川の奴等中々手強かったね~!」
「俺ちんびっくりしちゃったァ~!!」
「よろしい」
常磐連合、及び戸亜留市の顔役達には箝口令が敷かれた。あの女全く覚えてねーらしいから内緒な。マジ?俺アイツに蹴られたのにな。ま、いっかぁ。
『……とっきー?』
「起こしたか」
『……首……怪我……?』
「あ?いや。それより、早く治せ。治ったら飯でも食いに行こうな」
『もんぶらん』
「ホントに食い気だな、お前」
首筋から肩にかけてガーゼを貼っつけてるこの男、実は割と不機嫌である。今日見舞いに来る最中に黒澤兄弟とタケと九里虎に囲まれ散々からかわれたので。「ねえねえそう言えば十希夫くん名前の事俺の女発言したよね」「言ったからにはもう腹は決めてんだよね?」「十希夫いい加減付き合えよマジで」「歯型付けられてニヤついてる場合じゃなかよ」、と時々腹パンされながら。喧しいわ。怪我人だぞこの女は。
『とっき』
「ん?」
『て』
「ん??」
『にぎって』
「グッ」
イライラが霧散しちまった。酷く怖い思いだってしたろうに、微塵も見せずに笑って甘えるように言う女を見てどうして不機嫌を継続させられるのか。深呼吸、深呼吸。無事な右手の指に指で触れてそのまま絡ませる。
「名前」
『ん』
「頑張ったな」
そう言えば、名前はちょっと目を見開いて……ニッとクソガキみたいな顔で当然でしょ、と笑った。
「おいそんな事あるか」
「十三さんステイ」
「離せ」
「十三ちゃいい加減妹離れして」
「離せ俺は原田を家に連れ帰って十三スペシャルを飲ませるんだ」
「殺す気か?」
「不器用な可愛がり方するんじゃないよ」
か……と口を開けて寝る名前と、名前と指を絡めてベッドに突っ伏して寝る十希夫。どちらもガキみてーな顔で寝てるからタケは苦笑しながら写真を撮って、十三は自分を抑える山田にキレ散らかしていた。