そのじゅうなな
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さて、二人は動物も全て見終わり、十希夫がガッチガチに固まりながら飯、食いに行くか、と言って名前も頷いた。
「んじゃ、一旦帰るか」
「そうね~、後は若いお二人でってやつ」
「絶対呼び出そ」
三人に今の今までつけられていた事も知らず二人はファミレスへ。何食べようね、なんて言って二人で注文を終え、食事を終えてそろそろ帰るか、と手を繋いで歩いている時だった。
『あのライオンなんか九里虎に似てたよね』
「だら~っとしてる所な」
『ねえ今度遊具やってる時さ』
「おー」
『一人でメリーゴーランド乗って写真撮るから』
「お前も乗るなら良いけど」
『写真撮れないじゃん』
「誰かに撮ってもらや良いだろ」
『ジェットコースターは?』
「たまには良いな」
『あとね、あとね。なんだっけ、隣の街に、蛇首に巻ける動物園あるんだって』
「待て純粋に気になったわそれ」
『ワニ抱っこ出来るらしいよ、冬はペンギンが歩いてるんだって』
「そうか。……俺が卒業する前に、行くか?」
『ホント?』
「嘘で言わねえよ」
『……とっきー』
「なに」
『とっきー、卒業したら、どうすんの?』
ずっと名前が悩んでいた事だった。黒澤は知り合いのツテで東京に出ると聞いたし、この街から去る者は少なくない。そりゃ東京とか行った方が仕事はあるし……。名前は自分の気持ちを自覚してはないけれど……もし、十希夫がこの街から離れたとしたら……。考えただけで何故か胃のあたりがモヤモヤしちまって、なんも考えられなくなっちまうのだ。
名前のそんな葛藤はめちゃくちゃ顔に出ていた。元来名前はあまり表情が変わらない。強い感情がある時やっと顔に出るのだ。凄く面白ければ破顔するし、凄く悲しければ悲しい顔をする。だから、そう言った強い感情を持っちまったら感情を隠せない。顔に出ている事すら自覚していないのだ。
だから今、名前の表情はとんでもねえ事になっていた。悲しい、寂しい、辛い、耐えなければ。暗がりでも、そんな感情が見て取れた十希夫は……どうしようもなく名前が、隣にいる小さな女が愛しくなっちまって、手を握る力が少し強くなっちまった。
「……名前」
『なに』
「置いて行かねえって、言ったろ」
名前は少し俯いていた顔を上げて、十希夫を見た。すると月明かりに照らされた十希夫の顔が……十三や、龍信達が自分に向ける目のように暖かいけれど、どこかもっと熱のあるような目に思えて、そんな熱を孕んでいながらフ、と柔らかく笑んで居るものだから惚けた顔をしてしまった。
「……軍司さん、左官業だろ。誘われてんだ、結構前から」
『あ……』
「働きながら資格取れよってな。だから、戸亜留に居るよ」
『ホント……?』
「あぁ」
『……そっか』
二人の間には会話は多くない。ただしっかり繋がった手は二人が村田家に着くまでの間、力強く握られていたのだった。
『送ってくれてありがと』
「おー」
『とっきー、気を付けて帰ってね』
「あぁ、歩き回ったし、ゆっくり寝ろよ」
『うん。……おやすみ』
「……名前」
『ん?』
十希夫がカリ、と首を掻く。どこかバツが悪いような顔をして……言い忘れてたけど、と。
「……今日、お前、いつもより……その……」
『なに』
「……一際可愛かったよ」
『かッッッッッッッッッ』
朝黒澤に可愛いと言われた時はほんの少し照れただけなのに、名前は何度目か解らない赤面を晒してしまった。言った当人なんて耳と首が真っ赤である。
「……あのよ」
『はい!?』
「名前、俺ァ、」
「イチャつくのは良いがな、オイ」
『ヒッ!!!!?』
「おわ」
十希夫が名前に何かを言おうとした瞬間、玄関から少しニヤけた十三が出てきた。名前は肩を跳ねさせて、十希夫もビクッ!としちまった。
「何時だと思ってやがる、あとイチャつくなら場所考えろ。家の前では辞めろ。将五達が見たらうるせぇぞ」
『「イチャついてない!!!!」』
「あと俺の前で過剰にイチャついてみろ、殺しかねねえ」
『十三、辞めて。もう家入るから』
「おう」
『……とっきー、何言おうとしてたの?』
「あー……いや…………良い。また連絡するからよ」
『?うん。待ってる』
「それじゃ……」
「気を付けて帰れよ」
『バイバイ』
名前が十三に促されて先に家に入る。十希夫が十三に頭を下げて、背を向けた時だった。
「またねのキスとかしねーのかお前」
「ばっっっっっ、付き合ってもねー女にする訳ねーでしょうが」
「は?いやお前、は?付き合ってねーのか、正気か?あんな家の前でイチャついといて?」
「イチャついてねーよ……」
「あ?もしかしてさっき告るつもりだったか?」
「……………………」
「いやこれに関してはホントにすまねえな。悪かったな原田」
「別に……」
「付き合ったら、まず家に来い。酒作ってやるからよ。歓迎するぜ」
「……あざす」
「ただ本気で俺の前ではなるべくイチャつくな。自慢だが俺ァ妹離れが出来てねえ」
「自慢じゃねーだろそれ」
さて、二人は動物も全て見終わり、十希夫がガッチガチに固まりながら飯、食いに行くか、と言って名前も頷いた。
「んじゃ、一旦帰るか」
「そうね~、後は若いお二人でってやつ」
「絶対呼び出そ」
三人に今の今までつけられていた事も知らず二人はファミレスへ。何食べようね、なんて言って二人で注文を終え、食事を終えてそろそろ帰るか、と手を繋いで歩いている時だった。
『あのライオンなんか九里虎に似てたよね』
「だら~っとしてる所な」
『ねえ今度遊具やってる時さ』
「おー」
『一人でメリーゴーランド乗って写真撮るから』
「お前も乗るなら良いけど」
『写真撮れないじゃん』
「誰かに撮ってもらや良いだろ」
『ジェットコースターは?』
「たまには良いな」
『あとね、あとね。なんだっけ、隣の街に、蛇首に巻ける動物園あるんだって』
「待て純粋に気になったわそれ」
『ワニ抱っこ出来るらしいよ、冬はペンギンが歩いてるんだって』
「そうか。……俺が卒業する前に、行くか?」
『ホント?』
「嘘で言わねえよ」
『……とっきー』
「なに」
『とっきー、卒業したら、どうすんの?』
ずっと名前が悩んでいた事だった。黒澤は知り合いのツテで東京に出ると聞いたし、この街から去る者は少なくない。そりゃ東京とか行った方が仕事はあるし……。名前は自分の気持ちを自覚してはないけれど……もし、十希夫がこの街から離れたとしたら……。考えただけで何故か胃のあたりがモヤモヤしちまって、なんも考えられなくなっちまうのだ。
名前のそんな葛藤はめちゃくちゃ顔に出ていた。元来名前はあまり表情が変わらない。強い感情がある時やっと顔に出るのだ。凄く面白ければ破顔するし、凄く悲しければ悲しい顔をする。だから、そう言った強い感情を持っちまったら感情を隠せない。顔に出ている事すら自覚していないのだ。
だから今、名前の表情はとんでもねえ事になっていた。悲しい、寂しい、辛い、耐えなければ。暗がりでも、そんな感情が見て取れた十希夫は……どうしようもなく名前が、隣にいる小さな女が愛しくなっちまって、手を握る力が少し強くなっちまった。
「……名前」
『なに』
「置いて行かねえって、言ったろ」
名前は少し俯いていた顔を上げて、十希夫を見た。すると月明かりに照らされた十希夫の顔が……十三や、龍信達が自分に向ける目のように暖かいけれど、どこかもっと熱のあるような目に思えて、そんな熱を孕んでいながらフ、と柔らかく笑んで居るものだから惚けた顔をしてしまった。
「……軍司さん、左官業だろ。誘われてんだ、結構前から」
『あ……』
「働きながら資格取れよってな。だから、戸亜留に居るよ」
『ホント……?』
「あぁ」
『……そっか』
二人の間には会話は多くない。ただしっかり繋がった手は二人が村田家に着くまでの間、力強く握られていたのだった。
『送ってくれてありがと』
「おー」
『とっきー、気を付けて帰ってね』
「あぁ、歩き回ったし、ゆっくり寝ろよ」
『うん。……おやすみ』
「……名前」
『ん?』
十希夫がカリ、と首を掻く。どこかバツが悪いような顔をして……言い忘れてたけど、と。
「……今日、お前、いつもより……その……」
『なに』
「……一際可愛かったよ」
『かッッッッッッッッッ』
朝黒澤に可愛いと言われた時はほんの少し照れただけなのに、名前は何度目か解らない赤面を晒してしまった。言った当人なんて耳と首が真っ赤である。
「……あのよ」
『はい!?』
「名前、俺ァ、」
「イチャつくのは良いがな、オイ」
『ヒッ!!!!?』
「おわ」
十希夫が名前に何かを言おうとした瞬間、玄関から少しニヤけた十三が出てきた。名前は肩を跳ねさせて、十希夫もビクッ!としちまった。
「何時だと思ってやがる、あとイチャつくなら場所考えろ。家の前では辞めろ。将五達が見たらうるせぇぞ」
『「イチャついてない!!!!」』
「あと俺の前で過剰にイチャついてみろ、殺しかねねえ」
『十三、辞めて。もう家入るから』
「おう」
『……とっきー、何言おうとしてたの?』
「あー……いや…………良い。また連絡するからよ」
『?うん。待ってる』
「それじゃ……」
「気を付けて帰れよ」
『バイバイ』
名前が十三に促されて先に家に入る。十希夫が十三に頭を下げて、背を向けた時だった。
「またねのキスとかしねーのかお前」
「ばっっっっっ、付き合ってもねー女にする訳ねーでしょうが」
「は?いやお前、は?付き合ってねーのか、正気か?あんな家の前でイチャついといて?」
「イチャついてねーよ……」
「あ?もしかしてさっき告るつもりだったか?」
「……………………」
「いやこれに関してはホントにすまねえな。悪かったな原田」
「別に……」
「付き合ったら、まず家に来い。酒作ってやるからよ。歓迎するぜ」
「……あざす」
「ただ本気で俺の前ではなるべくイチャつくな。自慢だが俺ァ妹離れが出来てねえ」
「自慢じゃねーだろそれ」