そのじゅうよん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
?
名前はいつまでも泣いていた。十希夫が名前を抱っこして運んでる間ずっと泣いてる。多分鉄生が死んだあの日から、ずっと涙を押し込めていたからかもしれない。十希夫のシャツはもうびしょびしょだった。
「名前!」
「名前っち!」
連絡を受けて相棒二人と十三、好誠は村田家に待機していた。他の奴は解散させた。柳は「俺はママだぞ!!!?」と最後までゴネていたけれど、好誠に押さえ付けられ、十三にデスソースを飲まされりゃ帰らざるを得なかった。
名前は十希夫の腕の中で泣き疲れて眠っていた。泣いた、という事実だけで十三も、誰も息を呑んだ。そして、頭を下げる。
「十希夫先輩、……名前を、泣かせてくれてありがとうございます」
「助かった、本当に」
「いや…………。とりあえず、寝かせてやってください」
十三が名前を抱き上げて中に入れる。好誠も心配そうな顔は見せないけれど、ついて行った。
「……で十希夫ちゃ、チューまではしたよね?」
「してません」
「は?してな、は?先輩それはなくない?ホントにキッスもしてない?なら何までしたの」
「なんも」
「いやいやいやいや」
「え?ぎゅーしただけ?」
「…………おう」
「は?原田十希夫17歳童貞か?」
「十希夫ちゃ、え、告ってもいないわけ?」
「阿賀島、黙れ。頼むから」
「あれ友っち言ったっけ、この間十希夫ちゃ怒らせたんだけど~」
「ウケる」
「ウケるな」
「俺ちん嘘ついたらめちゃくちゃキレてね~名前っちの事“惚れた女”って言ったんだよ~~!!!!」
「キャーーーー!!!」
「うるせー!俺は帰るぞ」
全く、なんて言って十希夫が踵を返す。するとブォォン!と良い音がした。タケが笑顔で十希夫に言う、送ってく!と。
「……怖いんだけど」
「言っとくけどこの単車俺ちんが中学時代に親の名前でお小遣い貯めて買ったやつよ。そんじょそこらの奴より安全運転だから安心してお乗りになられて~!」
「……じゃあ、頼むわ」
十希夫がタケのケツに乗って、山田が再度頭を下げる。ありがとう、本当に。名前が壊れる前に見付けてくれて、ありがとう。十希夫は手を振って、家へと向かった。
家に着いて、タケにありがとな、と言えばいえいえ~!!とめちゃくちゃ笑顔で言われる。
「お前の予想、当たってたな」
「ホントにね~」
タケが鈴蘭に乗り込んだ日に、十希夫に言っていたのだ。「名前っち、復讐が終わったら死ぬかも知れないから……十希夫ちゃ、お願いね」と。山田もタケも十希夫がからかいがいがあるので楽しくてちょっかいをかけてしまうが、それでも十希夫なら名前を救ってくれると思っていた。
「こればかりは好誠ちゃ達が見付けても、また家出しただろうし。や、俺ちんも焦って泣いちゃいましたけドーーーッ!」
「名前、死にてえって言ってたよ」
「やっぱり?」
「鉄生に会いてえって、会いに行かせてくれって、……皆、自分を置いていくってよ」
「……そうね、名前っちは置いてかれてばかりの人生だもね」
両親に置いて行かれ、美藤兄に置いて逝かれ、菅田の兄やんに置いて逝かれて。今度はあのハゲ野郎だ。しかも、目の前で。
「名前っち、自分が生きてるのが許せないんだよ。きっと、十希夫ちゃが見付けてなかったら死んでたろーね。自分が悪いと思ってるから……十希夫ちゃが引き留めてくれたんしょ?」
「あぁ、まあな」
「俺ちん達は、どうしたって楔にはなれねーの。だって名前っちが俺ちん達の楔だから。だから、十希夫ちゃがなんて言って引き留めたのか……ちょっと気になるけど」
「別に。……俺は、置いていかねえって言っただ……け……」
そこまで真面目に話してた癖に、タケがむふふ、と笑い出す。くっそまたやられた!!と十希夫が顔を真っ赤にすると、ごめんちゃ!と屈託なく笑いやがった。
「名前っちの楔になってくれてありがとう、十希夫ちゃ」
ンじゃね!とそのままタケはバイクに乗って走っていってしまった。十希夫はなんか疲れたな、と思いながら……名前の泣き顔を思い出しながら、家に入っていった。早く、また笑顔を見せて欲しいと願いながら。
名前が起きたら、十三が隣で寝ていた。と、いうか十三の部屋だった。名前がしんどくなった時、一緒に寝てくれていた事を思い出す。基本眠りの浅い十三は、名前が起きた気配に気付いて薄らと目を開ける。
「……おはよう」
『あ、じ、じゅうぞ、』
ぼろ、と涙が出る。一度決壊したダムはしばらく落ち着きそうになかった。何が何だか解らなくなって十三の胸に縋り付く。十三はただただ微笑んで、背中を叩いてくれた。
何度も死のうとした事、その度何かに邪魔された事。歩道橋から飛び降りようとすれば不良さん達が止めてきて、首を吊ろうとしたら通りすがってしまった寿が顔をしわくちゃにしてやめてくれと叫んだこと、……鉄生さんが死んだ川原で、川に入ろうとしたら、十希夫に見付かってしまった事。
「あぁ、あぁ。生きててくれて良かった。俺より先に死んでくれるな、俺を置いて行かないでくれ」
そんな十三の切実な声にまた泣いて、泣いて。将五が部屋を覗きに来て、将五まで泣き出して、本当にごめんと、その日の村田家の人間はずっと目が真っ赤だった。
名前はいつまでも泣いていた。十希夫が名前を抱っこして運んでる間ずっと泣いてる。多分鉄生が死んだあの日から、ずっと涙を押し込めていたからかもしれない。十希夫のシャツはもうびしょびしょだった。
「名前!」
「名前っち!」
連絡を受けて相棒二人と十三、好誠は村田家に待機していた。他の奴は解散させた。柳は「俺はママだぞ!!!?」と最後までゴネていたけれど、好誠に押さえ付けられ、十三にデスソースを飲まされりゃ帰らざるを得なかった。
名前は十希夫の腕の中で泣き疲れて眠っていた。泣いた、という事実だけで十三も、誰も息を呑んだ。そして、頭を下げる。
「十希夫先輩、……名前を、泣かせてくれてありがとうございます」
「助かった、本当に」
「いや…………。とりあえず、寝かせてやってください」
十三が名前を抱き上げて中に入れる。好誠も心配そうな顔は見せないけれど、ついて行った。
「……で十希夫ちゃ、チューまではしたよね?」
「してません」
「は?してな、は?先輩それはなくない?ホントにキッスもしてない?なら何までしたの」
「なんも」
「いやいやいやいや」
「え?ぎゅーしただけ?」
「…………おう」
「は?原田十希夫17歳童貞か?」
「十希夫ちゃ、え、告ってもいないわけ?」
「阿賀島、黙れ。頼むから」
「あれ友っち言ったっけ、この間十希夫ちゃ怒らせたんだけど~」
「ウケる」
「ウケるな」
「俺ちん嘘ついたらめちゃくちゃキレてね~名前っちの事“惚れた女”って言ったんだよ~~!!!!」
「キャーーーー!!!」
「うるせー!俺は帰るぞ」
全く、なんて言って十希夫が踵を返す。するとブォォン!と良い音がした。タケが笑顔で十希夫に言う、送ってく!と。
「……怖いんだけど」
「言っとくけどこの単車俺ちんが中学時代に親の名前でお小遣い貯めて買ったやつよ。そんじょそこらの奴より安全運転だから安心してお乗りになられて~!」
「……じゃあ、頼むわ」
十希夫がタケのケツに乗って、山田が再度頭を下げる。ありがとう、本当に。名前が壊れる前に見付けてくれて、ありがとう。十希夫は手を振って、家へと向かった。
家に着いて、タケにありがとな、と言えばいえいえ~!!とめちゃくちゃ笑顔で言われる。
「お前の予想、当たってたな」
「ホントにね~」
タケが鈴蘭に乗り込んだ日に、十希夫に言っていたのだ。「名前っち、復讐が終わったら死ぬかも知れないから……十希夫ちゃ、お願いね」と。山田もタケも十希夫がからかいがいがあるので楽しくてちょっかいをかけてしまうが、それでも十希夫なら名前を救ってくれると思っていた。
「こればかりは好誠ちゃ達が見付けても、また家出しただろうし。や、俺ちんも焦って泣いちゃいましたけドーーーッ!」
「名前、死にてえって言ってたよ」
「やっぱり?」
「鉄生に会いてえって、会いに行かせてくれって、……皆、自分を置いていくってよ」
「……そうね、名前っちは置いてかれてばかりの人生だもね」
両親に置いて行かれ、美藤兄に置いて逝かれ、菅田の兄やんに置いて逝かれて。今度はあのハゲ野郎だ。しかも、目の前で。
「名前っち、自分が生きてるのが許せないんだよ。きっと、十希夫ちゃが見付けてなかったら死んでたろーね。自分が悪いと思ってるから……十希夫ちゃが引き留めてくれたんしょ?」
「あぁ、まあな」
「俺ちん達は、どうしたって楔にはなれねーの。だって名前っちが俺ちん達の楔だから。だから、十希夫ちゃがなんて言って引き留めたのか……ちょっと気になるけど」
「別に。……俺は、置いていかねえって言っただ……け……」
そこまで真面目に話してた癖に、タケがむふふ、と笑い出す。くっそまたやられた!!と十希夫が顔を真っ赤にすると、ごめんちゃ!と屈託なく笑いやがった。
「名前っちの楔になってくれてありがとう、十希夫ちゃ」
ンじゃね!とそのままタケはバイクに乗って走っていってしまった。十希夫はなんか疲れたな、と思いながら……名前の泣き顔を思い出しながら、家に入っていった。早く、また笑顔を見せて欲しいと願いながら。
名前が起きたら、十三が隣で寝ていた。と、いうか十三の部屋だった。名前がしんどくなった時、一緒に寝てくれていた事を思い出す。基本眠りの浅い十三は、名前が起きた気配に気付いて薄らと目を開ける。
「……おはよう」
『あ、じ、じゅうぞ、』
ぼろ、と涙が出る。一度決壊したダムはしばらく落ち着きそうになかった。何が何だか解らなくなって十三の胸に縋り付く。十三はただただ微笑んで、背中を叩いてくれた。
何度も死のうとした事、その度何かに邪魔された事。歩道橋から飛び降りようとすれば不良さん達が止めてきて、首を吊ろうとしたら通りすがってしまった寿が顔をしわくちゃにしてやめてくれと叫んだこと、……鉄生さんが死んだ川原で、川に入ろうとしたら、十希夫に見付かってしまった事。
「あぁ、あぁ。生きててくれて良かった。俺より先に死んでくれるな、俺を置いて行かないでくれ」
そんな十三の切実な声にまた泣いて、泣いて。将五が部屋を覗きに来て、将五まで泣き出して、本当にごめんと、その日の村田家の人間はずっと目が真っ赤だった。