その十三
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難波が将太に殴られた。難波は鉄生が大好きだったので、皆何故そんなに動けているのか、解らなかったのだ。でも、将太だって、誰だって悲しくないわけが無い。だから、お前等よく平気でいられるよな、なんて馬鹿な言葉を聴き逃して貰えるわけがなかったのだ。
名前は、知っていた。難波が鉄生と長い付き合いである事なんて、知っていた。だから、ここに来たのだ。
『ね、将太さんなら、難波さんなら怒ってくれるでしょ』
「な、」
急に現れて難波に縋り付いた女に、二人は言葉を無くした。名前は限界だった、正気ではなかった。責任を負っているからギリギリ立てているだけで、皆に心配されている今が、死にたいほど辛かったから。
名前はやつれていた。難波も、将太も、あの元気な女がこんなになってるなんて、思いたくなかった。怒る?何に。難波でさえ、鉄生の死には耐えきれない程痛みを感じているけれど、名前に怒りなど、
『なんで誰も責めてくれないの、なんで!!!お兄ちゃんが死んだのは私のせいでしょ!!!!!』
「名前、」
『お兄ちゃんを奪ったのは私なのに、なんで誰も怒ってくれないの!!!!?』
「名前!!!」
再三言うが、名前は正気ではない。山田やタケ、十三が見てるから布団には入るけれど、何日も眠れていないし飯だって無理やり食わされている、人に生かされている状態なのだ。
見ていられなかった、こんな名前を見たくなかった。難波が頼む、やめてくれと言っても、名前は喚くばかりだった。ぐ、と将太が覚悟を決めて、抱き上げる。
「俺はコイツ家に届けてくる。テメーはそこで腐って死ぬまでメソメソ泣いてろアホンダラ」
全速力で走った。もうこれ以上名前の口から鉄生を死なせたなんて言葉を聞きたくなかった。
「お前を責めたら、鉄生が怒るだろうが……ッ!」
そんな言葉を理解出来るほど、名前は落ち着いても居なかった。ただ、ぽつりと『しにたい』とだけ、将太の耳に届いた。
「山田ァーーーッ見付けたぞ!!!」
「えっ!箕月!!?」
「おう!!お前から藤代のあれ聞いといて良かった!!藤代の携帯から知り合いの携帯も入り込んだら見付けたみたい!!」
「おっけ~A、流石変態。よくやったわ」
「お前褒めてないだろ」
「藤代が見付けたって事は……?」
「明日行くみたい」
「りょ~かい、名前に知らせるわ」
村田家は大騒ぎ。正気を失っていた名前がわーわー騒いで手を焼いて、山田とタケが着いた頃には将太も十三も困り果てていた。二人は顔を見合わせて、走り出す。
「あっ山田とタケ!」
「十三さんお疲れ様です変わります」
「十三ちゃ~!一回殴るけどごめんちゃ!」
「跡残ったら殺すからな」
ソイヤ!とタケが名前の顎を突き上げる。ぎゃ、なんて声が漏れて、疲れていたのかそのまま気絶した。おお~と山田が拍手するけど、十三はテメー……とタケの首を引っ掴んだ。めちゃくちゃ笑顔でごめんちゃ!と言っている。反省はしていない。
「あー……将太さん、すんません、名前、大丈夫じゃなかっ……え?なんで将太さん?」
「いや……難波と、会ってる時に名前が飛びついて来てな。ヤバそうだから運んできた」
「ナイスハリネズミ~!!あんがと!クソッタレの割に良くやる~!!」
「うるせえなコイツ」
「じゃ、名前寝かせますんで」
どうぞ、もうちょい待っててやってくれますか。そう言えば将太は少し悲しそうな顔で、解った、と言って去っていった。
さて、佐々木春、藤代拓海、桑原信昭が箕月を見付け、全部吐かせ終わった後のこと。その場を去ろうとする三人に向かって、見覚えのある奴等が歩いてきた。
「え、あ、」
「名前さん……?」
既に名前の目には拓海達なんて見えて居なかった。名前の左右にはどこか見張るように黒澤友哉と阿賀島尊が控えている。名前がその姿を視認した瞬間、ずっと、立ち上がった日からずっと無表情か恐怖しか浮かべなかった顔を、憎悪に染めた。
『箕月邦彦ーーーーーーーーーーッ!!!!!!』
とうとう見付かった、見付かってしまった!箕月にはまだ守るものがある。どうにかして逃げなければ、あの人を逃がさなければ。
『逃がすわけねーだろうが!!!!!』
「おあ゛っ」
名前の足が箕月を押し倒し、そのまま頭を踏み潰した。うつ伏せになって身を守るように丸くなるが、構わずに背に、腹に、頭に蹴りを入れ、髪を掴んで持ち上げてまで顔面に膝を入れた。眼鏡が割れ、箕月の顔面が切れた所で、山田ストップが入る。
「名前、本命は楠木だ。かまけてたら逃げられるぞ」
『クソが!!!クソ野郎!!!!起きろ!!!!殺してやる!!!!!!』
「名前っち、おイタが過ぎるなら帰らせるよ」
『ぐ、う、う!!』
「箕月、助かる道をやる。楠木の場所を言え」
じゃないと、と言えば阿賀島が真顔で箕月の頬を掴む。箕月がカタ、カタ、と揺れる。
「俺ちん、お前殺してもいいよって言われてんの。揉み消してくれるってさ、……最高じゃん?」
逃げ場はないに等しかった。おら立てやボケがと無理やり立たされ、歩かされる。拓海が名前、と手を伸ばすが、一度も振り向くことはなかった。
その日の夜、楠木恵里奈は生きているのが不思議な状態で警察に発見される。震えた声で私がやりました、私が殺させましたと、数日前に死んだ男の事件への関与を仄めかし……異様なスピードで少年刑務所に送られたという。
名前は十三に付き添って貰い、鉄生の墓に来ていた。花を供え、十三にしばらくお話したいからと、一時間程無言で立ち竦んでいた。
学校では、楠木が居なくなり、取り巻き達も居られなくなって退学。ようやっと平和が戻ってきたと皆が喜んだ。あとは名前が元気になってくれればと、山田も阿賀島もクラスメイト達や他の学年も皆いつも通り接していた。
少しして、
「ただいま」
悲しみを乗り越えた男が戸亜留に戻ってきた。七代目を襲名した事は瞬く間に広がり、
皆が注意していたに関わらず、苗字名前は忽然と姿を消した。
名前は、知っていた。難波が鉄生と長い付き合いである事なんて、知っていた。だから、ここに来たのだ。
『ね、将太さんなら、難波さんなら怒ってくれるでしょ』
「な、」
急に現れて難波に縋り付いた女に、二人は言葉を無くした。名前は限界だった、正気ではなかった。責任を負っているからギリギリ立てているだけで、皆に心配されている今が、死にたいほど辛かったから。
名前はやつれていた。難波も、将太も、あの元気な女がこんなになってるなんて、思いたくなかった。怒る?何に。難波でさえ、鉄生の死には耐えきれない程痛みを感じているけれど、名前に怒りなど、
『なんで誰も責めてくれないの、なんで!!!お兄ちゃんが死んだのは私のせいでしょ!!!!!』
「名前、」
『お兄ちゃんを奪ったのは私なのに、なんで誰も怒ってくれないの!!!!?』
「名前!!!」
再三言うが、名前は正気ではない。山田やタケ、十三が見てるから布団には入るけれど、何日も眠れていないし飯だって無理やり食わされている、人に生かされている状態なのだ。
見ていられなかった、こんな名前を見たくなかった。難波が頼む、やめてくれと言っても、名前は喚くばかりだった。ぐ、と将太が覚悟を決めて、抱き上げる。
「俺はコイツ家に届けてくる。テメーはそこで腐って死ぬまでメソメソ泣いてろアホンダラ」
全速力で走った。もうこれ以上名前の口から鉄生を死なせたなんて言葉を聞きたくなかった。
「お前を責めたら、鉄生が怒るだろうが……ッ!」
そんな言葉を理解出来るほど、名前は落ち着いても居なかった。ただ、ぽつりと『しにたい』とだけ、将太の耳に届いた。
「山田ァーーーッ見付けたぞ!!!」
「えっ!箕月!!?」
「おう!!お前から藤代のあれ聞いといて良かった!!藤代の携帯から知り合いの携帯も入り込んだら見付けたみたい!!」
「おっけ~A、流石変態。よくやったわ」
「お前褒めてないだろ」
「藤代が見付けたって事は……?」
「明日行くみたい」
「りょ~かい、名前に知らせるわ」
村田家は大騒ぎ。正気を失っていた名前がわーわー騒いで手を焼いて、山田とタケが着いた頃には将太も十三も困り果てていた。二人は顔を見合わせて、走り出す。
「あっ山田とタケ!」
「十三さんお疲れ様です変わります」
「十三ちゃ~!一回殴るけどごめんちゃ!」
「跡残ったら殺すからな」
ソイヤ!とタケが名前の顎を突き上げる。ぎゃ、なんて声が漏れて、疲れていたのかそのまま気絶した。おお~と山田が拍手するけど、十三はテメー……とタケの首を引っ掴んだ。めちゃくちゃ笑顔でごめんちゃ!と言っている。反省はしていない。
「あー……将太さん、すんません、名前、大丈夫じゃなかっ……え?なんで将太さん?」
「いや……難波と、会ってる時に名前が飛びついて来てな。ヤバそうだから運んできた」
「ナイスハリネズミ~!!あんがと!クソッタレの割に良くやる~!!」
「うるせえなコイツ」
「じゃ、名前寝かせますんで」
どうぞ、もうちょい待っててやってくれますか。そう言えば将太は少し悲しそうな顔で、解った、と言って去っていった。
さて、佐々木春、藤代拓海、桑原信昭が箕月を見付け、全部吐かせ終わった後のこと。その場を去ろうとする三人に向かって、見覚えのある奴等が歩いてきた。
「え、あ、」
「名前さん……?」
既に名前の目には拓海達なんて見えて居なかった。名前の左右にはどこか見張るように黒澤友哉と阿賀島尊が控えている。名前がその姿を視認した瞬間、ずっと、立ち上がった日からずっと無表情か恐怖しか浮かべなかった顔を、憎悪に染めた。
『箕月邦彦ーーーーーーーーーーッ!!!!!!』
とうとう見付かった、見付かってしまった!箕月にはまだ守るものがある。どうにかして逃げなければ、あの人を逃がさなければ。
『逃がすわけねーだろうが!!!!!』
「おあ゛っ」
名前の足が箕月を押し倒し、そのまま頭を踏み潰した。うつ伏せになって身を守るように丸くなるが、構わずに背に、腹に、頭に蹴りを入れ、髪を掴んで持ち上げてまで顔面に膝を入れた。眼鏡が割れ、箕月の顔面が切れた所で、山田ストップが入る。
「名前、本命は楠木だ。かまけてたら逃げられるぞ」
『クソが!!!クソ野郎!!!!起きろ!!!!殺してやる!!!!!!』
「名前っち、おイタが過ぎるなら帰らせるよ」
『ぐ、う、う!!』
「箕月、助かる道をやる。楠木の場所を言え」
じゃないと、と言えば阿賀島が真顔で箕月の頬を掴む。箕月がカタ、カタ、と揺れる。
「俺ちん、お前殺してもいいよって言われてんの。揉み消してくれるってさ、……最高じゃん?」
逃げ場はないに等しかった。おら立てやボケがと無理やり立たされ、歩かされる。拓海が名前、と手を伸ばすが、一度も振り向くことはなかった。
その日の夜、楠木恵里奈は生きているのが不思議な状態で警察に発見される。震えた声で私がやりました、私が殺させましたと、数日前に死んだ男の事件への関与を仄めかし……異様なスピードで少年刑務所に送られたという。
名前は十三に付き添って貰い、鉄生の墓に来ていた。花を供え、十三にしばらくお話したいからと、一時間程無言で立ち竦んでいた。
学校では、楠木が居なくなり、取り巻き達も居られなくなって退学。ようやっと平和が戻ってきたと皆が喜んだ。あとは名前が元気になってくれればと、山田も阿賀島もクラスメイト達や他の学年も皆いつも通り接していた。
少しして、
「ただいま」
悲しみを乗り越えた男が戸亜留に戻ってきた。七代目を襲名した事は瞬く間に広がり、
皆が注意していたに関わらず、苗字名前は忽然と姿を消した。