その十三
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『鳳仙は余裕の表情を見せるでしょ。昔からそう、あの一枚岩を崩すのは大変だし、光政だって馬鹿じゃない。でも、今回信さんが狙われた事で……鳳仙はちょっと揺れる』
名前が煙草をふかしながら言う。頭を使う時の癖だった。
『でも多分、光政は……アイツ、歴代鳳仙の中でも本当に最高な奴だから。動くなら静かに動くね、殺し屋鳳仙の名の通り』
「随分光政ば買うじゃん」
「鳳仙って事はハゲ?」
「頭だから生えてるよ、俺の友達でもある」
「ほへ~!名前っち!俺ちん仲良く出来るかな?」
『ん~……まぁ、タケちゃん基本可愛いから大丈夫じゃないかな~。光政結構頭柔いしね。私も………………、』
「名前」
『……ううん、なんでもない』
過ぎるのは二人でラーメンを食べた思い出や、海で会った思い出。……どうして、今会えるだろうか。誰にだって、今は山田とタケちゃんと学校の奴にしか会いたくない。……あの人にだって。
チ、と舌を打って、名前の手にあるペンが折れる。あらあら力加減も出来ないなんてお子ちゃまねえ~と言いながらタケが手を開かせて破片を落とし、山田がティッシュを差し出した。
この日の夜、鳳仙と天地軍団の抗争の火蓋が切って落とされる。各々が黒岩等を倒した後、一人になったタイミングで真島が、二人になった福浦と田島に内藤兄弟とガガ達数人の男に襲われたのである。
『いい夜ですね』
奇襲してきた内藤兄弟を避けきれず、攻撃を受けそうになったが誰かに腕を引かれてよろめき、それは当たらなかった。尻もちを付いた真島が見上げるのは、紫煙を撒き散らす、鳳仙にとっては……非常に大きい女だった。
「お、まえ、」
『真島さん、久しぶり。元気そうね』
「なんだテメー!!!」
「邪魔だ、退いてろ」
『うんうん、そっちも元気そうで何よりだよ内藤一期、一会』
「あ……?」
『は、馬鹿が。……寿、もしかしてお前等に言ってないの?なら、もう一回言ってやるよ』
「名前、なにを」
名前、という名は天地からも善明からも聞いている。なんなら昨日も名前だけ聞いた。流石にこれは指示を仰がねばいけないのでは?と思うと、気付く。
『私は……常磐高校は。お前等を敵と見なした』
ぞろぞろと出るわ出るわ男共。常磐は一般生徒が多いとは言ったが、別に不良が少ないわけでもない。
集団の前に立つのは先代の頭、林田瑞希。目立たないが戸亜留の中でも指折りの実力を誇る男だった。
『逃げてみろよ、得意だろ?鬼ごっこ』
林田の叫びが上がる。流石に不利と内藤兄弟が逃げるが林田を筆頭に皆追いかけるので、まぁ余程の事がなければ時間の問題だろう。
真島は久しぶりに会ったこの女が自分の窮地を救ったと理解して、何よりも……武装の鉄生の事もあって、肩に手をかけた。
「名前、」
『う、ぉ゛、え゛っ!』
「名前!!!」
口に手を当てて嘔吐く女に焦って背中を擦ると、素早く手を払われた。払ったのは名前の癖に、酷く傷付いた顔をして。
『……ごめん、なんでもない、真島さん、帰ろっか』
「おい!!お前、まだ、」
『喧嘩にゃ女は割り込めない。だから、私は真島さんを家まで送るのが仕事なの』
そう言ってとぼとぼ歩き始めてしまう。あぁもう、と真島が後ろをついて行く。抗争の真っ只中で、さっきの奇襲をまともに受けていたら、と想像してゾッとしながら。
無言で歩き続け、真島の家の前で止まる。
『……光政達には、真島さんが報告して。ごめんけど、……私、話したくないから』
「聞きてえ事は沢山あるんだが?」
光信が山田と……加地屋の気狂いに助けられたというのはすぐ広まった。柔道場で皆集まった時、光政が「名前が動いてるのか」と、静かに、それでも少し悔しげに言ったのを覚えている。
光政が、鳳仙の連中が名前と最後に会ったのは名前が殺されかけた日である。光政はしばらく申し訳なさげに名前と連絡を取り合っていたが、あの悲報があった日以降、誰も連絡が取れなくなっていた。
光政は何度も名前に会いに行っていたが、その度悲痛な顔で名前の兄に……村田十三に首を振られたのだと。
『ねえ、鳳仙ってね。一枚岩だけど、内部からの裏切りに一番弱いの』
「……裏切り者が居るって?」
『信じたくないと思う、私の言葉なんて。でもね、……仕方ない事もあると思うよ。ごめん、聞き流していいよ』
「いや、……あぁ。光政に、伝えとく」
『じゃ、私行くから』
「、名前」
真島が思わず名前の腕を掴む。するとずっと無表情であったそれが、恐怖に大きく歪んだ。おえ゛、と身体を丸めて嘔吐く名前を見て、無性に泣きたくなってしまった。
「俺達は、……鳳仙が、お前を嫌うわけねえだろうが」
『はなして』
「名前!」
『離せ』
全然違うのに、それはまるでジョーが言うような、光政が言うような圧を孕んでいた。思わず手を離すと、また無表情に戻った名前が、ごめん、とだけ呟いてそのまま走り去ってしまった。真島は掴んでいた方の手を見つめながら、くそ、と悪態を吐くことしか出来なかった。
さて、福浦と田島の所へは山田とタケが来て、ガガ含め五人と対峙していた。なにせ名前もどちらに誰が来るかとかは解らなかったので、二人も名前の方に集団を割いた。こっちはやる気満々殺意ミッチミチの山田とタケで十分では???と思っていたが、案外苦戦している。ガガは既に後方からこちらを見ているから福浦達含め四対四でちょうどいいかと思いきや、まぁタイマンじゃないので全然後ろからも攻撃は来るので。そんな中、タケは山田の戦いっぷりを見て流石だな~、友っちめちゃんこつよつよ~さいこ~と楽しそうにしていた。
ガゴッと音がしてタケの頭に鉄パイプが振り落とされる。あら?とタケが頭を触ると、ぬるりと赤いものが付いた。
「タケ!!!」
山田が叫ぶ。だがタケから返事はない。ヤバいか?と、山田が駆け寄ろうとするが、なんとなく嫌な予感がして戦闘中で満身創痍の福浦と田島を引いた。
「な、にすんだよ!!!」
「いや、なんかちょっと怖かったから。てかお前等無事じゃないと俺等がしばかれるんだが??弱すぎ」
「ンだとコラァ!!」
「お、おい、」
動かないタケに襲いかかった一人がボトッと地面に落ちる。なんだ?と他の奴が見ると、既に目の前に完全にイッてる顔があった。咄嗟に腕を前に出すと、ボキッと嫌な音がした。この時点でガガは戦線離脱する。それはそう、完全にヤベェ奴が覚醒してるから。
「皆殺しにすんぞテメェ等」
「えっっっぐ」
「こっわ誰だアイツ」
「あれ?加地屋の気狂い。知らない?」
「え゛っ」
ギャハハ、と笑いながらその場全員の腕を折る様はまさにキチガイ。倒れた奴の髪引っ掴んで叩き付けるのを見て山田は生温い顔までしてしまった。菩薩の笑み。これ止めたら俺も死ぬかな……と思いながら、恐る恐る声をかける。
「タケちゃん、コイツ等送るけど……まだその雑魚いる?」
「え?!友っちもう行くの!!?俺ちんも行くっ!もうい~らね!」
「そっか。頭の怪我は?」
「ちょっち痛い……友っち後で診てくれる?」
「そうね、手当てするわ。フラフラとかは?」
「しね~!だいじょび!ンじゃ送ろ!あれ今日友っち飯作ってくれるんだっけ?」
「おう、簡単に炒飯な」
「やったーー!!俺ちん友っちの飯しゅき!」
その変わりように福浦も田島もなんて?って顔するし、山田は本当に仏の顔で普段は可愛いのにな……と思っている。なんとなく名前と似てるんだよな、と思ってしまうからタケには強く出られないのであった。
名前が煙草をふかしながら言う。頭を使う時の癖だった。
『でも多分、光政は……アイツ、歴代鳳仙の中でも本当に最高な奴だから。動くなら静かに動くね、殺し屋鳳仙の名の通り』
「随分光政ば買うじゃん」
「鳳仙って事はハゲ?」
「頭だから生えてるよ、俺の友達でもある」
「ほへ~!名前っち!俺ちん仲良く出来るかな?」
『ん~……まぁ、タケちゃん基本可愛いから大丈夫じゃないかな~。光政結構頭柔いしね。私も………………、』
「名前」
『……ううん、なんでもない』
過ぎるのは二人でラーメンを食べた思い出や、海で会った思い出。……どうして、今会えるだろうか。誰にだって、今は山田とタケちゃんと学校の奴にしか会いたくない。……あの人にだって。
チ、と舌を打って、名前の手にあるペンが折れる。あらあら力加減も出来ないなんてお子ちゃまねえ~と言いながらタケが手を開かせて破片を落とし、山田がティッシュを差し出した。
この日の夜、鳳仙と天地軍団の抗争の火蓋が切って落とされる。各々が黒岩等を倒した後、一人になったタイミングで真島が、二人になった福浦と田島に内藤兄弟とガガ達数人の男に襲われたのである。
『いい夜ですね』
奇襲してきた内藤兄弟を避けきれず、攻撃を受けそうになったが誰かに腕を引かれてよろめき、それは当たらなかった。尻もちを付いた真島が見上げるのは、紫煙を撒き散らす、鳳仙にとっては……非常に大きい女だった。
「お、まえ、」
『真島さん、久しぶり。元気そうね』
「なんだテメー!!!」
「邪魔だ、退いてろ」
『うんうん、そっちも元気そうで何よりだよ内藤一期、一会』
「あ……?」
『は、馬鹿が。……寿、もしかしてお前等に言ってないの?なら、もう一回言ってやるよ』
「名前、なにを」
名前、という名は天地からも善明からも聞いている。なんなら昨日も名前だけ聞いた。流石にこれは指示を仰がねばいけないのでは?と思うと、気付く。
『私は……常磐高校は。お前等を敵と見なした』
ぞろぞろと出るわ出るわ男共。常磐は一般生徒が多いとは言ったが、別に不良が少ないわけでもない。
集団の前に立つのは先代の頭、林田瑞希。目立たないが戸亜留の中でも指折りの実力を誇る男だった。
『逃げてみろよ、得意だろ?鬼ごっこ』
林田の叫びが上がる。流石に不利と内藤兄弟が逃げるが林田を筆頭に皆追いかけるので、まぁ余程の事がなければ時間の問題だろう。
真島は久しぶりに会ったこの女が自分の窮地を救ったと理解して、何よりも……武装の鉄生の事もあって、肩に手をかけた。
「名前、」
『う、ぉ゛、え゛っ!』
「名前!!!」
口に手を当てて嘔吐く女に焦って背中を擦ると、素早く手を払われた。払ったのは名前の癖に、酷く傷付いた顔をして。
『……ごめん、なんでもない、真島さん、帰ろっか』
「おい!!お前、まだ、」
『喧嘩にゃ女は割り込めない。だから、私は真島さんを家まで送るのが仕事なの』
そう言ってとぼとぼ歩き始めてしまう。あぁもう、と真島が後ろをついて行く。抗争の真っ只中で、さっきの奇襲をまともに受けていたら、と想像してゾッとしながら。
無言で歩き続け、真島の家の前で止まる。
『……光政達には、真島さんが報告して。ごめんけど、……私、話したくないから』
「聞きてえ事は沢山あるんだが?」
光信が山田と……加地屋の気狂いに助けられたというのはすぐ広まった。柔道場で皆集まった時、光政が「名前が動いてるのか」と、静かに、それでも少し悔しげに言ったのを覚えている。
光政が、鳳仙の連中が名前と最後に会ったのは名前が殺されかけた日である。光政はしばらく申し訳なさげに名前と連絡を取り合っていたが、あの悲報があった日以降、誰も連絡が取れなくなっていた。
光政は何度も名前に会いに行っていたが、その度悲痛な顔で名前の兄に……村田十三に首を振られたのだと。
『ねえ、鳳仙ってね。一枚岩だけど、内部からの裏切りに一番弱いの』
「……裏切り者が居るって?」
『信じたくないと思う、私の言葉なんて。でもね、……仕方ない事もあると思うよ。ごめん、聞き流していいよ』
「いや、……あぁ。光政に、伝えとく」
『じゃ、私行くから』
「、名前」
真島が思わず名前の腕を掴む。するとずっと無表情であったそれが、恐怖に大きく歪んだ。おえ゛、と身体を丸めて嘔吐く名前を見て、無性に泣きたくなってしまった。
「俺達は、……鳳仙が、お前を嫌うわけねえだろうが」
『はなして』
「名前!」
『離せ』
全然違うのに、それはまるでジョーが言うような、光政が言うような圧を孕んでいた。思わず手を離すと、また無表情に戻った名前が、ごめん、とだけ呟いてそのまま走り去ってしまった。真島は掴んでいた方の手を見つめながら、くそ、と悪態を吐くことしか出来なかった。
さて、福浦と田島の所へは山田とタケが来て、ガガ含め五人と対峙していた。なにせ名前もどちらに誰が来るかとかは解らなかったので、二人も名前の方に集団を割いた。こっちはやる気満々殺意ミッチミチの山田とタケで十分では???と思っていたが、案外苦戦している。ガガは既に後方からこちらを見ているから福浦達含め四対四でちょうどいいかと思いきや、まぁタイマンじゃないので全然後ろからも攻撃は来るので。そんな中、タケは山田の戦いっぷりを見て流石だな~、友っちめちゃんこつよつよ~さいこ~と楽しそうにしていた。
ガゴッと音がしてタケの頭に鉄パイプが振り落とされる。あら?とタケが頭を触ると、ぬるりと赤いものが付いた。
「タケ!!!」
山田が叫ぶ。だがタケから返事はない。ヤバいか?と、山田が駆け寄ろうとするが、なんとなく嫌な予感がして戦闘中で満身創痍の福浦と田島を引いた。
「な、にすんだよ!!!」
「いや、なんかちょっと怖かったから。てかお前等無事じゃないと俺等がしばかれるんだが??弱すぎ」
「ンだとコラァ!!」
「お、おい、」
動かないタケに襲いかかった一人がボトッと地面に落ちる。なんだ?と他の奴が見ると、既に目の前に完全にイッてる顔があった。咄嗟に腕を前に出すと、ボキッと嫌な音がした。この時点でガガは戦線離脱する。それはそう、完全にヤベェ奴が覚醒してるから。
「皆殺しにすんぞテメェ等」
「えっっっぐ」
「こっわ誰だアイツ」
「あれ?加地屋の気狂い。知らない?」
「え゛っ」
ギャハハ、と笑いながらその場全員の腕を折る様はまさにキチガイ。倒れた奴の髪引っ掴んで叩き付けるのを見て山田は生温い顔までしてしまった。菩薩の笑み。これ止めたら俺も死ぬかな……と思いながら、恐る恐る声をかける。
「タケちゃん、コイツ等送るけど……まだその雑魚いる?」
「え?!友っちもう行くの!!?俺ちんも行くっ!もうい~らね!」
「そっか。頭の怪我は?」
「ちょっち痛い……友っち後で診てくれる?」
「そうね、手当てするわ。フラフラとかは?」
「しね~!だいじょび!ンじゃ送ろ!あれ今日友っち飯作ってくれるんだっけ?」
「おう、簡単に炒飯な」
「やったーー!!俺ちん友っちの飯しゅき!」
その変わりように福浦も田島もなんて?って顔するし、山田は本当に仏の顔で普段は可愛いのにな……と思っている。なんとなく名前と似てるんだよな、と思ってしまうからタケには強く出られないのであった。