その十三
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『ほらね、負けると思った』
表情を動かさずに名前が言う。
昨日、山田が世良と別れた後すぐ、寿とやり合ったと言う。ちょっと世良と一悶着起こしたらしいけど、まぁそれはご愛嬌。仕方ないね山田は血の気が多いから。
『あ?そう言えばタケちゃんは?』
「阿賀島くん、“ちょっち遊び行ってくるちや~!”って言ってたよ」
『ん~……ま、タケちゃんは好きに動いていいかな』
名前は阿賀島に従わなくていい、と言った。阿賀島は戸亜留に帰ってきたばかりだし、喧嘩だって好きでしてる訳じゃない。自由なのが魅力な男だから。だが、阿賀島は「俺ちんに指図しないでもらえる!!?俺ちんが名前っちと居るのが楽しいから名前っちの言う事聞いてるの!!!ダチってそ~いうモンでしょ!バカタレモンチッチ!!!」と言って名前の頬を笑顔でペチペチペチペチ!!!と超高速で叩いた。それは指図聞いてるのと違うんですか。ちなみにその高速ビンタは一切痛みを感じなかったから逆に怖い。
そんな阿賀島くんは、鈴蘭に遊びに来ていた。如何にも俺は鈴蘭です、みたいな顔で鼻歌すら歌ってるけど、いや目立つこと目立つこと、しかも大抵戸亜留出身ばかりなので「は?アイツ気狂いでは?」「えっこわ近寄らんとこ……」とめちゃくちゃ遠巻きにされる。
「ンね!三年生ってきょーしつどこ?」
「ほあああ!!!!?」
悲しいことに、話しかけられた男は中学時代阿賀島に喧嘩を売って返り討ちにあった挙句狂ったように笑いながら公衆便所に“抱いて!”“貴方の肉便器!”“1回200円!”と真っ裸に油性ペンで書かれて放置された男であった。阿賀島は当然覚えていない。南無三。
この後教室に行ってもお目当ての人物達が居なくて、阿賀島は優しく質問を変えた。
「ね、名前っちと仲良い人達ってどこ?」
「ヒェア」
「なにそれ鳴き声?」
この時男には「次居なかったら殺すぞ」なんてルビが見えたけれど、阿賀島には全くそんな気はない。当人は優しく笑ってるから。言うて見るからにヤベェ奴なのだから仕方ない。
FBIが溜まってるどっかの部室に神戸、黒澤、原田は集まっていた。コンコンコンコンコン、と喧しくノックされた後、返事も待たずにガチャりと開いた。
「こんちゃ!元気!!?」
「は?」
突如現れた男は鈴蘭ではない、三人共知っている、加地屋の気狂い野郎。結構有名なのは喧嘩売ってきた男を笑いながら指を全部折った話である。びっくりして皆立ち上がってしまった。
「おい、お前阿賀島尊だな?」
「えっ俺ちんの事知ってんの?」
「知らねー奴なんて極わずかだろ。加地屋の気狂い野郎が何の用だ」
「もしかして俺ちん有名人?やった!うれち!!サインいる??」
「要らねーよ!!!!」
なんか話してるとちょっと疲れるこの感じ、誰かで感じた事がある気がする。改めて、何の用だと聞くとえへへー!と笑いながら爆弾を落としやがった。
「そ!名前っちのダーリンのトキオって誰?」
「は!!?」
「んぐふっ」
「がはっゴホッゴホッあ゛ァ゛」
神戸は何が?みたいな顔で二人を見るが黒澤は腹筋に、原田は喉に大打撃を受けていた。勘弁して。何言いやがるこの野郎と原田が額に青筋を浮かべて阿賀島を見るとめちゃくちゃキラキラした顔で笑っている。辞めて欲しい、気狂いなら気狂いらしくして。そんなガキみたく笑わないで。
「名前、あの名前か?」
「俺ちん名前っちは名前っちしか知んね~し」
「……誰がそれ言ってた?」
「山田の友っち!」
「クロサー!!!!!!!テメェ!!!!弟の躾ちゃんとしろ!!!!」
「良くやった友哉、流石俺の弟だ」
「友っちの兄ちゃん?お世話になってますます~!」
「お、おう」
「十希夫……お前……とうとう女を……?」
「ブッチャー、違う。誤解だ。違うから」
「は?トキオ、名前っちは遊びって事?」
「んっっぐ」
めちゃくちゃ真面目な顔で言われた。実は阿賀島、山田に「名前の事大好きっぽい人がいて、名前も満更でも無さそうな人が居るんだけど~、鈴蘭なんだよね。いや~元気かな~事件以来1回しか会ってなくてさ~」と言われ、山田の真意を一から十まで理解した。
なるほどね、名前っちのダーリンに相応しいか見てくるちや!!!と。
だから誤解、って言葉が出た瞬間は?お前もしかして知らないフリか?名前の事、本気で想って無かったんか?とちょっと殺気立ったのだ。原田はそんな阿賀島を見てウワ……とちょっと泣きたくなった。
ちなみに黒澤は阿賀島の後ろでめちゃくちゃニヤニヤしている。慌てる原田が面白すぎる。
さて、ブッチャーは違うよな?とめちゃくちゃ必死な顔で見てくるし、阿賀島は違うの?ハッキリしろやとめちゃくちゃ殺気立った顔で見てくる。ぐぬぬ、と困った声で唸る原田を見て黒澤は限界寸前。もう腹を抱えたい。こんな面白い事ある?
「…………………………、ない」
「「は?」」
「だからッ!!!名前とは!!!付き合ってねえんだよ!!!!!」
「なにそれ。ンじゃ名前っちとはなんもないって事?」
「…………………………」
「ひぃ、ひぃ、」
「え?じゃあ名前っちの事はただの後輩としてしか見てないってコト?????」
「……………………………………やめてくれ……」
「ヒーッヒーッ」
「クロサー、お前1回黙れ。聞こえんから。あと笑い方気色悪いんじゃお前」
この原田十希夫という男、名前の事をめちゃくちゃ可愛い後輩だと思ってるし、怒った日にあんな口説くような事言ってた癖にまっっったく自覚が無かった。というか自覚したくなかった。どんな目で見たらいいか解らないから。思春期か何か?と言われてもおかしくない。しかもこんな時期で、あんな事件があって、余計そんな事言ってられないので。
「じゃあ名前っちに怒りに任せてチューしたのもお遊びってコト!!!?」
「十希夫ーーーーーッ!!!!!」
「してねえーーーーーーッ!!!!頭突きしただけだ!!!!!」
「女に頭突きしてんじゃねーーーーーーーーーッ」
「名前っち殴っていいのは俺ちんだけちや」
「いや殴んなや」
「は?俺ちんが鞭与えるから名前っちがあんな可愛く真っ直ぐに育ったんでしょ。ドブネズミですら甘やかすんだから」
「ドブネズミ?」
「武田・ドブネズミ・好誠」
「武田好誠ーーーーーッ!!!」
本気で原田が頭を抱え始めた。マジで勘弁して。
「……大体、あんまそういう事言ってやるな。名前だって、良い気はしねーだろ」
「「は????」」
「は?」
黒澤と阿賀島が顔を見合わせる。え?もしかしてコイツ、いやまさか。なんだよ、と原田が言うとぐりんと二人が振り向いて、神戸を弾き飛ばして原田を囲む。めちゃくちゃ怒られた。
「つまりそれは名前さえ良ければ付き合うって事でいいか?」
「は!!?言ってねえ!!」
「え?じゃあ名前っちが他の誰かと付き合うの想像してみ?」
「………………」
「ほら眉間に皺寄った!!!!」
「……別に……」
「いや十希夫、あの事件があってな、確かにそれどころじゃねーかもだけどよ、認めるのは別じゃねーか?んで?好きか?好きじゃないんか?」
「うるせえなお前等!!!」
これは頑固だな、と思い黒澤がはぁと息を吐く。ここまで頑なに認めないとなると、この間の……名前が過呼吸でぶっ倒れたのを気にしているらしい。恐らく、もう鈴蘭自体がダメなのかもと。するとここで黒澤の携帯に弟から連絡が入る。“気を付けて、阿賀島のタケは怒らせる癖があるって名前言ってた”
「んじゃ、名前っちが誰かに抱かれてもいいわけだ」
「あ?」
「トキオも1回くらい抱きゃ良いのに。好きじゃないにしても、懐いてきた女なんていいカモでしょ」
友哉へ、もう遅そうです。兄より。
いやお前マジでやめろや、と黒澤が頑張って念を送るも意味は無い。何故ならそろそろ阿賀島は原田を見極めにかかっているから。本当に悪い癖。まあこれで怒らないならもう気持ちは無いだろうし、そもそも名前を渡せもしないなと思っていた。でも、ちょっと瞳孔開いてきてるしもうひと押しかな、と爆弾を投げ付ける。
「なに?もしかして処女厨?」
「おい、テメェ、いい加減に、」
「ね、名前っちのハジメテ、俺ちんなんだよ~!無理やりだけど」
どんなだったか、どんな風に泣いたか、教えてあげよっか?参考に。
そこまで言うと原田はゆっくりと阿賀島の肩に手を置いて、そのまま薙ぎ倒した。馬乗りになって殴ろうとするのを黒澤と神戸が止める。その目は、確実にこの男を生かしてはおけないと、絶対に殺してやると解りやすく語っていた。
「名前の、なに?」
「え?」
「名前の、あの女の、何を教えてくれるって?」
「十希夫やめえー!!!」
「止まれ止まれ止まれ、後悔するからお前」
「うるせーーーー!!!!!惚れた女ァ犯した男が居るんだぞ!!!!生かしておけるか!!!!」
「あーあ……」
ここで阿賀島、やっと原田はまだ名前の事好きなんやな!と、ちゃんと名前の事で怒れる人なんだなとめちゃくちゃ安心して、ニパ!と笑って原田に抱きついた。
「十希夫ちゃ~!!嘘!名前っちはまだ処女だよ~!!!良かったね!!!」
「ッあ゛ァ゛!!?」
「俺ちん名前っちに抱いてって言われるなら全然抱けるけど~どちらかと言うと初心な名前っち推奨派だから。安心ちて!十希夫ちゃが名前っちの事めちゃんこ好きなのは解ったから!色々言ってごめんね!!!!」
「……お前、もしかして、わざと……?」
「惚れた女は真っ白でち!!!」
「こい、こいつ、こい、こいつ、コイツ!!!!!!!」
「どうどうどうどう」
原田は一気に顔を白くしたあと、真っ赤にした。うわうわ、と頭を抱え、どうしよ。うわ。は?とずっとブツブツ呟いている。黒澤がニヤニヤしながら肩を叩いて、阿賀島がえへえへと原田に抱き着いている。神戸は完全に置いてけぼりでキレてた。
「じゃ、俺ちんそろそろ名前っちのとこ戻るね!」
「お前このカオス作り上げといて戻る気か?」
「えだって、名前っちが大変な今、ダーリンの十希夫ちゃがちゃんとしてくれなきゃもっと大変しょ?そうなったら俺ちんが嫌だし」
ま、お前がクズなら殺してたけど。そう言った阿賀島の目はガチだった。なんなら原田も黒澤も神戸も、今の今までちょっとウザいガキだなと思っていたのに咄嗟に構えてしまった。気狂い伊達じゃねーな。
「あ、そう。一つだけ十希夫ちゃにお願い」
「お願い?」
「うん、あのね?───────」
『ほらね、負けると思った』
表情を動かさずに名前が言う。
昨日、山田が世良と別れた後すぐ、寿とやり合ったと言う。ちょっと世良と一悶着起こしたらしいけど、まぁそれはご愛嬌。仕方ないね山田は血の気が多いから。
『あ?そう言えばタケちゃんは?』
「阿賀島くん、“ちょっち遊び行ってくるちや~!”って言ってたよ」
『ん~……ま、タケちゃんは好きに動いていいかな』
名前は阿賀島に従わなくていい、と言った。阿賀島は戸亜留に帰ってきたばかりだし、喧嘩だって好きでしてる訳じゃない。自由なのが魅力な男だから。だが、阿賀島は「俺ちんに指図しないでもらえる!!?俺ちんが名前っちと居るのが楽しいから名前っちの言う事聞いてるの!!!ダチってそ~いうモンでしょ!バカタレモンチッチ!!!」と言って名前の頬を笑顔でペチペチペチペチ!!!と超高速で叩いた。それは指図聞いてるのと違うんですか。ちなみにその高速ビンタは一切痛みを感じなかったから逆に怖い。
そんな阿賀島くんは、鈴蘭に遊びに来ていた。如何にも俺は鈴蘭です、みたいな顔で鼻歌すら歌ってるけど、いや目立つこと目立つこと、しかも大抵戸亜留出身ばかりなので「は?アイツ気狂いでは?」「えっこわ近寄らんとこ……」とめちゃくちゃ遠巻きにされる。
「ンね!三年生ってきょーしつどこ?」
「ほあああ!!!!?」
悲しいことに、話しかけられた男は中学時代阿賀島に喧嘩を売って返り討ちにあった挙句狂ったように笑いながら公衆便所に“抱いて!”“貴方の肉便器!”“1回200円!”と真っ裸に油性ペンで書かれて放置された男であった。阿賀島は当然覚えていない。南無三。
この後教室に行ってもお目当ての人物達が居なくて、阿賀島は優しく質問を変えた。
「ね、名前っちと仲良い人達ってどこ?」
「ヒェア」
「なにそれ鳴き声?」
この時男には「次居なかったら殺すぞ」なんてルビが見えたけれど、阿賀島には全くそんな気はない。当人は優しく笑ってるから。言うて見るからにヤベェ奴なのだから仕方ない。
FBIが溜まってるどっかの部室に神戸、黒澤、原田は集まっていた。コンコンコンコンコン、と喧しくノックされた後、返事も待たずにガチャりと開いた。
「こんちゃ!元気!!?」
「は?」
突如現れた男は鈴蘭ではない、三人共知っている、加地屋の気狂い野郎。結構有名なのは喧嘩売ってきた男を笑いながら指を全部折った話である。びっくりして皆立ち上がってしまった。
「おい、お前阿賀島尊だな?」
「えっ俺ちんの事知ってんの?」
「知らねー奴なんて極わずかだろ。加地屋の気狂い野郎が何の用だ」
「もしかして俺ちん有名人?やった!うれち!!サインいる??」
「要らねーよ!!!!」
なんか話してるとちょっと疲れるこの感じ、誰かで感じた事がある気がする。改めて、何の用だと聞くとえへへー!と笑いながら爆弾を落としやがった。
「そ!名前っちのダーリンのトキオって誰?」
「は!!?」
「んぐふっ」
「がはっゴホッゴホッあ゛ァ゛」
神戸は何が?みたいな顔で二人を見るが黒澤は腹筋に、原田は喉に大打撃を受けていた。勘弁して。何言いやがるこの野郎と原田が額に青筋を浮かべて阿賀島を見るとめちゃくちゃキラキラした顔で笑っている。辞めて欲しい、気狂いなら気狂いらしくして。そんなガキみたく笑わないで。
「名前、あの名前か?」
「俺ちん名前っちは名前っちしか知んね~し」
「……誰がそれ言ってた?」
「山田の友っち!」
「クロサー!!!!!!!テメェ!!!!弟の躾ちゃんとしろ!!!!」
「良くやった友哉、流石俺の弟だ」
「友っちの兄ちゃん?お世話になってますます~!」
「お、おう」
「十希夫……お前……とうとう女を……?」
「ブッチャー、違う。誤解だ。違うから」
「は?トキオ、名前っちは遊びって事?」
「んっっぐ」
めちゃくちゃ真面目な顔で言われた。実は阿賀島、山田に「名前の事大好きっぽい人がいて、名前も満更でも無さそうな人が居るんだけど~、鈴蘭なんだよね。いや~元気かな~事件以来1回しか会ってなくてさ~」と言われ、山田の真意を一から十まで理解した。
なるほどね、名前っちのダーリンに相応しいか見てくるちや!!!と。
だから誤解、って言葉が出た瞬間は?お前もしかして知らないフリか?名前の事、本気で想って無かったんか?とちょっと殺気立ったのだ。原田はそんな阿賀島を見てウワ……とちょっと泣きたくなった。
ちなみに黒澤は阿賀島の後ろでめちゃくちゃニヤニヤしている。慌てる原田が面白すぎる。
さて、ブッチャーは違うよな?とめちゃくちゃ必死な顔で見てくるし、阿賀島は違うの?ハッキリしろやとめちゃくちゃ殺気立った顔で見てくる。ぐぬぬ、と困った声で唸る原田を見て黒澤は限界寸前。もう腹を抱えたい。こんな面白い事ある?
「…………………………、ない」
「「は?」」
「だからッ!!!名前とは!!!付き合ってねえんだよ!!!!!」
「なにそれ。ンじゃ名前っちとはなんもないって事?」
「…………………………」
「ひぃ、ひぃ、」
「え?じゃあ名前っちの事はただの後輩としてしか見てないってコト?????」
「……………………………………やめてくれ……」
「ヒーッヒーッ」
「クロサー、お前1回黙れ。聞こえんから。あと笑い方気色悪いんじゃお前」
この原田十希夫という男、名前の事をめちゃくちゃ可愛い後輩だと思ってるし、怒った日にあんな口説くような事言ってた癖にまっっったく自覚が無かった。というか自覚したくなかった。どんな目で見たらいいか解らないから。思春期か何か?と言われてもおかしくない。しかもこんな時期で、あんな事件があって、余計そんな事言ってられないので。
「じゃあ名前っちに怒りに任せてチューしたのもお遊びってコト!!!?」
「十希夫ーーーーーッ!!!!!」
「してねえーーーーーーッ!!!!頭突きしただけだ!!!!!」
「女に頭突きしてんじゃねーーーーーーーーーッ」
「名前っち殴っていいのは俺ちんだけちや」
「いや殴んなや」
「は?俺ちんが鞭与えるから名前っちがあんな可愛く真っ直ぐに育ったんでしょ。ドブネズミですら甘やかすんだから」
「ドブネズミ?」
「武田・ドブネズミ・好誠」
「武田好誠ーーーーーッ!!!」
本気で原田が頭を抱え始めた。マジで勘弁して。
「……大体、あんまそういう事言ってやるな。名前だって、良い気はしねーだろ」
「「は????」」
「は?」
黒澤と阿賀島が顔を見合わせる。え?もしかしてコイツ、いやまさか。なんだよ、と原田が言うとぐりんと二人が振り向いて、神戸を弾き飛ばして原田を囲む。めちゃくちゃ怒られた。
「つまりそれは名前さえ良ければ付き合うって事でいいか?」
「は!!?言ってねえ!!」
「え?じゃあ名前っちが他の誰かと付き合うの想像してみ?」
「………………」
「ほら眉間に皺寄った!!!!」
「……別に……」
「いや十希夫、あの事件があってな、確かにそれどころじゃねーかもだけどよ、認めるのは別じゃねーか?んで?好きか?好きじゃないんか?」
「うるせえなお前等!!!」
これは頑固だな、と思い黒澤がはぁと息を吐く。ここまで頑なに認めないとなると、この間の……名前が過呼吸でぶっ倒れたのを気にしているらしい。恐らく、もう鈴蘭自体がダメなのかもと。するとここで黒澤の携帯に弟から連絡が入る。“気を付けて、阿賀島のタケは怒らせる癖があるって名前言ってた”
「んじゃ、名前っちが誰かに抱かれてもいいわけだ」
「あ?」
「トキオも1回くらい抱きゃ良いのに。好きじゃないにしても、懐いてきた女なんていいカモでしょ」
友哉へ、もう遅そうです。兄より。
いやお前マジでやめろや、と黒澤が頑張って念を送るも意味は無い。何故ならそろそろ阿賀島は原田を見極めにかかっているから。本当に悪い癖。まあこれで怒らないならもう気持ちは無いだろうし、そもそも名前を渡せもしないなと思っていた。でも、ちょっと瞳孔開いてきてるしもうひと押しかな、と爆弾を投げ付ける。
「なに?もしかして処女厨?」
「おい、テメェ、いい加減に、」
「ね、名前っちのハジメテ、俺ちんなんだよ~!無理やりだけど」
どんなだったか、どんな風に泣いたか、教えてあげよっか?参考に。
そこまで言うと原田はゆっくりと阿賀島の肩に手を置いて、そのまま薙ぎ倒した。馬乗りになって殴ろうとするのを黒澤と神戸が止める。その目は、確実にこの男を生かしてはおけないと、絶対に殺してやると解りやすく語っていた。
「名前の、なに?」
「え?」
「名前の、あの女の、何を教えてくれるって?」
「十希夫やめえー!!!」
「止まれ止まれ止まれ、後悔するからお前」
「うるせーーーー!!!!!惚れた女ァ犯した男が居るんだぞ!!!!生かしておけるか!!!!」
「あーあ……」
ここで阿賀島、やっと原田はまだ名前の事好きなんやな!と、ちゃんと名前の事で怒れる人なんだなとめちゃくちゃ安心して、ニパ!と笑って原田に抱きついた。
「十希夫ちゃ~!!嘘!名前っちはまだ処女だよ~!!!良かったね!!!」
「ッあ゛ァ゛!!?」
「俺ちん名前っちに抱いてって言われるなら全然抱けるけど~どちらかと言うと初心な名前っち推奨派だから。安心ちて!十希夫ちゃが名前っちの事めちゃんこ好きなのは解ったから!色々言ってごめんね!!!!」
「……お前、もしかして、わざと……?」
「惚れた女は真っ白でち!!!」
「こい、こいつ、こい、こいつ、コイツ!!!!!!!」
「どうどうどうどう」
原田は一気に顔を白くしたあと、真っ赤にした。うわうわ、と頭を抱え、どうしよ。うわ。は?とずっとブツブツ呟いている。黒澤がニヤニヤしながら肩を叩いて、阿賀島がえへえへと原田に抱き着いている。神戸は完全に置いてけぼりでキレてた。
「じゃ、俺ちんそろそろ名前っちのとこ戻るね!」
「お前このカオス作り上げといて戻る気か?」
「えだって、名前っちが大変な今、ダーリンの十希夫ちゃがちゃんとしてくれなきゃもっと大変しょ?そうなったら俺ちんが嫌だし」
ま、お前がクズなら殺してたけど。そう言った阿賀島の目はガチだった。なんなら原田も黒澤も神戸も、今の今までちょっとウザいガキだなと思っていたのに咄嗟に構えてしまった。気狂い伊達じゃねーな。
「あ、そう。一つだけ十希夫ちゃにお願い」
「お願い?」
「うん、あのね?───────」