その十三
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さて、夏休みに入り戸亜留市が河内鉄生という偉大な男を亡くした後。名前もしばらく動かなかったもんで、山田が代わりに楠木の動向を探らせたりしていた。何せ刺した奴等はあの女の名前もなにも出さなかったので。この頃には先代である林田瑞希も起き上がれていて、名前が不在の時に三生高や東陽台に襲われぬよう護っていた。
名前が教室に現れた時、わ!と皆が囲んだ。担任でさえも。お前教師。
よくも返事返さなかったな!ねえ心配してたんですけど?!てか怪我無事?お前終業式も出なかったもんな!は?ちょっと黒澤俺名前にチューしていい?ぶっ殺すぞ
ただの一つも悪感情なんて無かった。皆純粋に名前の心配、そしてこれを指示した楠木への怒りに燃えていた。名前はぐっ、と歯噛みして、ゆっくり息を吐く。
『みっちゃん(担任)、転校生連れてきたよ』
「あ、そう?お前の知り合いだっけ?」
『うん。このクラスと加地屋出身の皆~!今日転校生及び私の相棒が増えま~す』
「は?転校生は聞いてたけどなに?」
「嫌な予感してきた」
ガラッと戸を開けて入ってきたのはいかにもなんかやってそうなヤベェ奴。タトゥーはギリ隠れてるけど、ピアスもネックレスもバッチバチ、こわ……と名前でも山田でも思う。
「阿賀島尊で~す!!一年半よろちっち!」
「あ゛ーーーーーーッ卒業前に名前とちょっと言い合いになってこのまま居なくなったら俺ちんの存在大きくなるかな?!とかふざけたこと言って転校した阿賀島くんだーーーーーっ!!!!!」
『佐伯それホント?』
「マジ!!!」
「言うなし!!!!」
阿賀島、といえば。加地屋の気狂いを一般生徒でも知ってる奴は沢山いる。ただめちゃくちゃほわほわした笑顔なのでこのクラスはま、いっか……とようこそ~!!と発明班が持ってきていた特大クラッカーを鳴らした。パイ投げは阻止された。
阿賀島、名前と山田に言われていたけどちょっと不安だった。自分が怖い()容姿をしているのは知ってるし、怖がられたら嫌だな~と。かといって見た目を変える気はないが。そんな心配は無かったみたいだけれど。
「……じゃ、苗字も久しぶりだし皆つもる話もあるだろ。俺帰るから」
「みっちゃん、」
「苗字、融通は利かすから、無茶すんなよ」
この担任の融通、とは学校に来てなくても一応出席くらいにはしてやんよ、という意味である。みっちゃんだって戸亜留出身、理解があった。みっちゃんが教室から出る。
『皆、私が不甲斐ないせいで夏休みは危なかったり、不安な目にあったかと思う』
「喧しくない?」
「怒りと憎悪と食欲しかありませんけど」
「食欲?????」
『友哉とタケとは情報共有した、A、』
「楠木と刺した奴、襲った連中が会ってた監視カメラの切り抜き保存しましたよっと」
『ありがとう。委員長』
「親父は犯人は見付かってないって。指示を受けたら写真を渡すよ」
『うん。B』
「楠木のお家の人が~実家?に連れ戻そうとしてたから~Aと一緒に忙しくさせといたぁ!」
「ねえ友っちあの子なに?こわ」
「お前の顔程じゃねーよ、直で聞け」
「ねえ~忙しくって何したん?」
「えっとねえ~急に父親の職場の人の不正が見付かったり~母親は近所に色んな噂が出回ってるらしいよ!」
「Bちゃしゅき……」
「俺もタケちゃちゅき……」
『うん茶番置いてもろて』
書記が書いてくれてる情報ノートを見て名前がうーん、と首を傾げて、数分。その間も委員長が代表して一年と二年が集めた情報を言い続け、三年の夏休みの被害報告をした。
聞き終わって、よし、と息を吐く。ここからが本番だ。
『皆、特にスポーツやってる奴とあんま動けない奴は絶対三人で動くこと。楠木の標的は私だから女は狙われねーと思いたいけど、確約出来ねー。絶対一人は動ける奴を入れること。あと、発明班』
「なんでござるか!!?名前殿お仕事!!?」
『お仕事でござる。この阿賀島のタケは急所に当たれば意識が飛び、急所じゃなくても悶絶する戦略的撤退バズーカという空気砲を発明した男でね』
「なにそれタケちゃん俺にもちょっだい」
「ん~友っちいらんくね~?」
『是非量産してくれ、この学校全員に回してやるわくらいの気持ちで』
「阿賀島殿!!!伝授頂きたく!!!」
「良いでござる~!!は?めちゃんこ忙しいやが」
「ぐへへ一緒に極道入稿致しましょうな」
「やでござる…………」
なんら変わらない顔付きの皆に名前が息を吐く。山田が名前の背中をぽん、と撫でるように叩いた。
『基本、動くのは山田とタケちゃん。皆、出来る限りサポートして欲しい。……私を、助けて欲しい』
ぴた、と皆が止まる。ドアの隙間から帰った筈のみっちゃんも覗いてちょっとうるうるしている。山田には見えてるから苦笑いした。
名前は滅多に助けてなんて言わない。このクラスで、ふざけた時しか言わない言葉。そもそも名前は頼るのが下手くそで、全部自分がなんとかしようとするタチである。
そんな名前が助けて、なんて。クラスの人間は山田経由で名前の観察日記が毎日グループLINEに貼られていたので知っている。あの馬鹿みたく笑って皆を助ける名前が、そこまで追い詰められたのだ、どうして許すことが出来るだろうか。
「最悪俺とAが組めばなんでも揉み消せますし」
「最悪委員長人質にするし」
「俺ェ!!!?」
殺るぞ、と皆の目が名前に向く。名前は、未だにピクリとも表情を動かさないが、頼む、と静かに、確かに頷いたのだった。
夏休み以降、楠木は行方が解らなかった。後ろをつけていた奴は蠍にボコられ、監視カメラにも一切写っていない。ボコられた子には山田がお見舞いに行ってくれて、名前は思考する。
『多分、箕月の所にいる』
調べた結果、寿は完全に箕月を見失ったらしい。鉄生が死んだというのを聞いて、寿は箕月を探し出せと言ったが、完全に箕月は潜ってしまい裏から蠍や他のチームを動かすクソ野郎になった。元からか。
『は、じゃあ寿の所、契約違反じゃんね?』
「え、名前、お前」
『約束は破っちゃダメだもんね~?……友哉、タケ』
二人はしょうがねえな、なんて顔で笑った。でも、なんだか名前のお願い(命令)が嬉しくてちょっと犬みたいだったとクラスメイトは言った。
橋の下、鈴蘭の生徒が河二の……世良と対峙する。付き合いがあるから故の忠告だった。
そんな場所に、優しげな顔の男が現れる。武藤にとっては苦い思い出のある男だった。
「やっほ、蓮次くん、鈴蘭の諸君と……河二の世良くん?」
「げっ山田……」
世良もその男は知っている。今は落ち着いたが中学時代キレッキレな男だったので。そんな男が、何故ここに居るかは知らないが。
「……」
「あ、名前の事?大丈夫。今、なんとか踏ん張って起きてるから。でもごめんね?名前の事見たらしばらく避けてくれる?……十希夫先輩ですら、無理みたいだから」
「……そうか」
「はい!じゃあ本題ね!」
ズイ、と山田が世良に近付く。あんまりにも近くて流石に世良が後退っちまった。
「うちのご主人様がね!世良くんに伝言!」
「ご主人様?」
「名前?」
名前って言ったらチラッとだけ会ったことのある女だ、あれがこの男の?と怪訝な顔をすると山田はんふふと笑う。
「これから常磐高校は天地軍団を殲滅にかかる。お前じゃ寿には勝てない」
「は?」
「すっこんでろ雑魚……ごめんこれは俺」
「なん、だお前」
「山田山田山田」
「喧嘩売りに来たんかお前」
「いや、後のは俺のあれだけど、前半は完全に名前の指示だから」
「どういう意味だ、一から説明しろ」
「し~らね!!一応だよ!」
名前はお前が天地に確実に負けるって言ってる、だからお前は負ける。
揺るがない目で、世良の胸に指を突き付けた。
さて、夏休みに入り戸亜留市が河内鉄生という偉大な男を亡くした後。名前もしばらく動かなかったもんで、山田が代わりに楠木の動向を探らせたりしていた。何せ刺した奴等はあの女の名前もなにも出さなかったので。この頃には先代である林田瑞希も起き上がれていて、名前が不在の時に三生高や東陽台に襲われぬよう護っていた。
名前が教室に現れた時、わ!と皆が囲んだ。担任でさえも。お前教師。
よくも返事返さなかったな!ねえ心配してたんですけど?!てか怪我無事?お前終業式も出なかったもんな!は?ちょっと黒澤俺名前にチューしていい?ぶっ殺すぞ
ただの一つも悪感情なんて無かった。皆純粋に名前の心配、そしてこれを指示した楠木への怒りに燃えていた。名前はぐっ、と歯噛みして、ゆっくり息を吐く。
『みっちゃん(担任)、転校生連れてきたよ』
「あ、そう?お前の知り合いだっけ?」
『うん。このクラスと加地屋出身の皆~!今日転校生及び私の相棒が増えま~す』
「は?転校生は聞いてたけどなに?」
「嫌な予感してきた」
ガラッと戸を開けて入ってきたのはいかにもなんかやってそうなヤベェ奴。タトゥーはギリ隠れてるけど、ピアスもネックレスもバッチバチ、こわ……と名前でも山田でも思う。
「阿賀島尊で~す!!一年半よろちっち!」
「あ゛ーーーーーーッ卒業前に名前とちょっと言い合いになってこのまま居なくなったら俺ちんの存在大きくなるかな?!とかふざけたこと言って転校した阿賀島くんだーーーーーっ!!!!!」
『佐伯それホント?』
「マジ!!!」
「言うなし!!!!」
阿賀島、といえば。加地屋の気狂いを一般生徒でも知ってる奴は沢山いる。ただめちゃくちゃほわほわした笑顔なのでこのクラスはま、いっか……とようこそ~!!と発明班が持ってきていた特大クラッカーを鳴らした。パイ投げは阻止された。
阿賀島、名前と山田に言われていたけどちょっと不安だった。自分が怖い()容姿をしているのは知ってるし、怖がられたら嫌だな~と。かといって見た目を変える気はないが。そんな心配は無かったみたいだけれど。
「……じゃ、苗字も久しぶりだし皆つもる話もあるだろ。俺帰るから」
「みっちゃん、」
「苗字、融通は利かすから、無茶すんなよ」
この担任の融通、とは学校に来てなくても一応出席くらいにはしてやんよ、という意味である。みっちゃんだって戸亜留出身、理解があった。みっちゃんが教室から出る。
『皆、私が不甲斐ないせいで夏休みは危なかったり、不安な目にあったかと思う』
「喧しくない?」
「怒りと憎悪と食欲しかありませんけど」
「食欲?????」
『友哉とタケとは情報共有した、A、』
「楠木と刺した奴、襲った連中が会ってた監視カメラの切り抜き保存しましたよっと」
『ありがとう。委員長』
「親父は犯人は見付かってないって。指示を受けたら写真を渡すよ」
『うん。B』
「楠木のお家の人が~実家?に連れ戻そうとしてたから~Aと一緒に忙しくさせといたぁ!」
「ねえ友っちあの子なに?こわ」
「お前の顔程じゃねーよ、直で聞け」
「ねえ~忙しくって何したん?」
「えっとねえ~急に父親の職場の人の不正が見付かったり~母親は近所に色んな噂が出回ってるらしいよ!」
「Bちゃしゅき……」
「俺もタケちゃちゅき……」
『うん茶番置いてもろて』
書記が書いてくれてる情報ノートを見て名前がうーん、と首を傾げて、数分。その間も委員長が代表して一年と二年が集めた情報を言い続け、三年の夏休みの被害報告をした。
聞き終わって、よし、と息を吐く。ここからが本番だ。
『皆、特にスポーツやってる奴とあんま動けない奴は絶対三人で動くこと。楠木の標的は私だから女は狙われねーと思いたいけど、確約出来ねー。絶対一人は動ける奴を入れること。あと、発明班』
「なんでござるか!!?名前殿お仕事!!?」
『お仕事でござる。この阿賀島のタケは急所に当たれば意識が飛び、急所じゃなくても悶絶する戦略的撤退バズーカという空気砲を発明した男でね』
「なにそれタケちゃん俺にもちょっだい」
「ん~友っちいらんくね~?」
『是非量産してくれ、この学校全員に回してやるわくらいの気持ちで』
「阿賀島殿!!!伝授頂きたく!!!」
「良いでござる~!!は?めちゃんこ忙しいやが」
「ぐへへ一緒に極道入稿致しましょうな」
「やでござる…………」
なんら変わらない顔付きの皆に名前が息を吐く。山田が名前の背中をぽん、と撫でるように叩いた。
『基本、動くのは山田とタケちゃん。皆、出来る限りサポートして欲しい。……私を、助けて欲しい』
ぴた、と皆が止まる。ドアの隙間から帰った筈のみっちゃんも覗いてちょっとうるうるしている。山田には見えてるから苦笑いした。
名前は滅多に助けてなんて言わない。このクラスで、ふざけた時しか言わない言葉。そもそも名前は頼るのが下手くそで、全部自分がなんとかしようとするタチである。
そんな名前が助けて、なんて。クラスの人間は山田経由で名前の観察日記が毎日グループLINEに貼られていたので知っている。あの馬鹿みたく笑って皆を助ける名前が、そこまで追い詰められたのだ、どうして許すことが出来るだろうか。
「最悪俺とAが組めばなんでも揉み消せますし」
「最悪委員長人質にするし」
「俺ェ!!!?」
殺るぞ、と皆の目が名前に向く。名前は、未だにピクリとも表情を動かさないが、頼む、と静かに、確かに頷いたのだった。
夏休み以降、楠木は行方が解らなかった。後ろをつけていた奴は蠍にボコられ、監視カメラにも一切写っていない。ボコられた子には山田がお見舞いに行ってくれて、名前は思考する。
『多分、箕月の所にいる』
調べた結果、寿は完全に箕月を見失ったらしい。鉄生が死んだというのを聞いて、寿は箕月を探し出せと言ったが、完全に箕月は潜ってしまい裏から蠍や他のチームを動かすクソ野郎になった。元からか。
『は、じゃあ寿の所、契約違反じゃんね?』
「え、名前、お前」
『約束は破っちゃダメだもんね~?……友哉、タケ』
二人はしょうがねえな、なんて顔で笑った。でも、なんだか名前のお願い(命令)が嬉しくてちょっと犬みたいだったとクラスメイトは言った。
橋の下、鈴蘭の生徒が河二の……世良と対峙する。付き合いがあるから故の忠告だった。
そんな場所に、優しげな顔の男が現れる。武藤にとっては苦い思い出のある男だった。
「やっほ、蓮次くん、鈴蘭の諸君と……河二の世良くん?」
「げっ山田……」
世良もその男は知っている。今は落ち着いたが中学時代キレッキレな男だったので。そんな男が、何故ここに居るかは知らないが。
「……」
「あ、名前の事?大丈夫。今、なんとか踏ん張って起きてるから。でもごめんね?名前の事見たらしばらく避けてくれる?……十希夫先輩ですら、無理みたいだから」
「……そうか」
「はい!じゃあ本題ね!」
ズイ、と山田が世良に近付く。あんまりにも近くて流石に世良が後退っちまった。
「うちのご主人様がね!世良くんに伝言!」
「ご主人様?」
「名前?」
名前って言ったらチラッとだけ会ったことのある女だ、あれがこの男の?と怪訝な顔をすると山田はんふふと笑う。
「これから常磐高校は天地軍団を殲滅にかかる。お前じゃ寿には勝てない」
「は?」
「すっこんでろ雑魚……ごめんこれは俺」
「なん、だお前」
「山田山田山田」
「喧嘩売りに来たんかお前」
「いや、後のは俺のあれだけど、前半は完全に名前の指示だから」
「どういう意味だ、一から説明しろ」
「し~らね!!一応だよ!」
名前はお前が天地に確実に負けるって言ってる、だからお前は負ける。
揺るがない目で、世良の胸に指を突き付けた。