そのじゅうに
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阿賀島尊というのは、中学時代、沢山居た不良共にアイツだけは関わるな認定されていた人間である。ほぼ皆に。同世代で知らないやつは戸亜留には居ないんじゃないかレベル。
「は、あが、え?“加地屋の気狂い”?」
「ギャーーーーッ!俺ちんの黒歴史ほじくんなし!いいけど!」
チラッと名前は聞いていたが、面と向かってやっと解った。だって山田は中学時代、荒れていた頃にこの男を見たことがある。うわ~一人を大勢で囲むとかクソ~とこの数十倍は悪い口で加勢しようと思えば、一人でその大勢をのして、全員の手足を折りやがった野郎だ。
「えっあのアンパン中毒に絡まれてそんなに好きならいっぱい飲みなってそのまま口に突っ込んだあの気狂いさんで????」
「イヤーーッなにそれーーーっ」
「は?タケそんな事したのか?」
「あ嘘?」
「やったけど」
「やったんじゃん」
「てか君だれ?名前っちが言ってた山田の友っち?」
「あ、はい、友っち……は?」
「山田、黙っとけ。慣れねえうちはタケと話すとSAN値が削れる」
「この気狂いもしかして神話生物かなにか????」
「良いから二人共休みなや~!!!介護疲れで心中しそうな顔してるちや」
それはそう、二人共めちゃくちゃ疲れていた。十三は名前に加えて将五も。二人は少しでも眠ると酷くうなされて可哀想なくらいだったから、見ている方も辛かった。
「……もう名前の事、叩かない?」
「いやそれは名前っち次第」
「タケお前名前の事好き好き言う割にスムーズに叩きやがったな」
「あのね!!人を女だろうが簡単に殴るようなクズにしないでね!?殴るけど」
「最低……」
「山田、お前も殴るの知ってっからな」
「やっべ」
阿賀島は名前に向き直る。名前は阿賀島の存在を見て、ふるりと震えてしまった。なにせ、山田も十三も甘やかしてくれるけれども阿賀島は積極的に鞭を与えてくる人間だからである。
いや、いいのか。だって、
「俺ちんが怒ってるのは、友っちと十三ちゃへの態度だって言ってんじゃ~~~んこのばかちん」
『…………』
「返事しろや」
「ピピーーーーーッ名前警察です!!!前髪を掴むのはお辞めください!!!」
「え友っち昨日俺ちんほぼ同じこと言ったわ。仲良ぴだね」
「正気か?」
「あのね~、名前っち。良いんだよ、二人に甘えても。辛かったね。ね?」
『……うん』
「痛かったね?でも今、もしかしてだけどずっと泣けてないね?」
『…………うん』
「お返事出来て偉いねえ!もうちょい頑張ろね!」
「十三さんあれ完全にDV彼氏の典型では?」
「言うな……あれでも中学時代は好誠と並ぶレベルで名前の理解者だっ……こわ……龍ちゃんに電話してきていいか……?」
「頼むからここに居て、見捨てないで。は?逃がさねーからな」
阿賀島はこの二人はきっと疲れすぎて馬鹿になってるんだな、と思いながら名前の前髪を掴んだまま優しく微笑んだ。
「ねえ、泣けてないのはなんで?泣き虫の癖に」
『…………わかん、ない』
「解んなくないねえ!自分のせいで死んだのに泣いてどうするって思ってるんだよねえ!」
後ろで山田がキレてるけど十三が止める。言い方がデッドヒートしてるけど、これは必要である。
「名前が壊れる前に、必要なことだ」
「あのDV王止めなくて良いんすか!?」
「言っとくけど俺からしたらお前と似たもん同士だよ、そろそろ黙らねえとデスソース持ってくんぞ」
「やだ……………………」
『……』
「十三ちゃとか友っちからお前のせーじゃないって聞いても気遣ってると思う?だろね!俺ちんでも思う!ンでもね!お前墓参り行った?」
『……い、てない』
「なんで?礼は尽くせよ。なに中途半端な事してんだよ。お前が自分のせいじゃないと思うなら庇って貰った事の感謝を述べろ。自分のせいだと思うならクソほど謝れよ、気の済むまで。何立ち止まってんだよ。この生温い空間で現状維持してたら次は十三ちゃが死ぬぞ」
『や、!』
「や!じゃねーし。甘ったれんな。大体、なに?お前。怖いんだろ、外に出てお前のせいって言われるの。言ってやろうか?お前のせいだって。痛め付けられれば満足?俺ちんなら死なない程度に幾らでも出来るよ?」
阿賀島名物クソ煽り。これを言ったら怒るだろうなという事をクソ程狙って正論も混ぜやがるからタチが悪い。山田がなるほどこれね、とめちゃくちゃ渋い顔をした。
「それともなに?このまま居たいん?護ってくれた、なんだっけ?あのハゲの事、もう忘れて生きる?そしたら楽だもんね」
『、ない』
「あに?」
『わすれない!!!!』
ようやっと名前が釣れた。今の今までフワフワしていた焦点が一気に定まる。
『でもわかんない、どうしたらいいの、なんで兄ちゃんはかばったの?!なんでわらったの?!』
なんで、頭なんて撫でるの!!?
久しぶりに聞いた、名前の心からの叫びだった。名前、と山田が十三の静止から逃れて床にへたり込む。
『なんでよかったなんて言うの、なんでみんな責めてくれないの、私が、私があの女を殺さなかったのが原因なのに、どうして!!?』
「あっ俺ちんそこの事情は聞いてないけど友っち後で教えてくれる?」
「あ、うん。多分めちゃくちゃ殴りながら教える」
「殴られる~こわ……」
なんで、どうして、と喚く名前の脳裏にはまだ鉄生が居た。刺されてから振り向いて笑った顔、倒れて必死に傷口を圧迫して止血を試みている名前に「よかった」と言って、頭を撫でるその声も、感触も全て。
それでも名前は泣けなかった。ようやっと阿賀島に底から引き摺り出されても、泣いたら足を止めてしまうから。
なんとなく阿賀島も、山田もそれを理解した。顔を見合わせてちょっと笑う。
「……名前っち。どうすんの?そのなんだっけ?敵は?刺した奴は捕まったの聞いたけど、裏があるんしょ?」
『……うん』
「え、じゃあ名前っちがこうしてる間どうしてんのそれ」
「見張らせてる。随分、楽しそうらしいがな」
後は全力で名前の悲しみを憎しみに変えて、怒りに変えて、元凶をぶっ殺さねばならない。
「ンね!お前が昔俺の母ちゃん死んだ時に言ったことまんま返すよ!“シケた面見せてると悲しむと思わん?なら、良い顔見せて安心させてやろーぜ!”」
『んっグゥ』
「なるほどね、十三さんこれなんて言いますっけ」
「因果応報、自業自得、自縄自縛、身から出た錆」
「十三ちゃ頭良~~www」
「お前そろそろ名前の前髪離してくんない?」
「やだ……名前っちまだウジウジしてるも……」
「名前がお嫁に行く時に被虐趣味になったらどうしてくれんの……?」
「おう山田そこまでだ名前は嫁にやらん」
三人の馬鹿な話を聞いて、名前は思考する。ここまでさせておいて、まだウジウジするのか、という声と、鉄生さんの命を奪っておいて幸せになる気か、と言う声。
頭がぐるぐるする、鉄生さんはあんな小さな箱に収まっちまって、確かに死んだってこと、死ぬ直前まで気にかけてくれたこと、花火しようねって言ってたこと、兄ちゃんと呼べと言っていたこと
全部全部無くなった、真喜雄兄ちゃんや和志兄ちゃんみたいに、しかも、目の前で、自分の認識の甘さのせいで。
「これ以上、名前が弱ってたらまた被害が出るかもな」
ぶわりと、名前の目に火が灯る。ガタガタと身体は震え、阿賀島がえ?なに?やっと起きた?と覗き込もうとして、
『タケちゃん、ありがとう、手、離せ』
「アッハイごめんちゃ……」
『悪いけど、十三には流石に頼めないから……ごめんタケちゃんめちゃくちゃ容赦なさそうで怖いから山田、頼んでいいか』
「顔?」
「ぶっ殺すぞ」
『十三の前で顔殴れなんて言えるか馬鹿タレが。背中叩いて、気合い入れて』
ウス、と山田が返事した瞬間めちゃくちゃいい笑顔の阿賀島がシーーーっと指を口に寄せて、バチンッ!と強めに叩いた。名前は悶絶し、タケ…………と唸りながら、立ち上がる。
『十三』
「あぁ」
『私、今まだ泣けないの。多分、終わるまで泣けない』
「……あぁ」
『十三兄、お願い。私が全部終わらせたら、一緒にお墓参りに行ってくれる?』
「あぁ、勿論だ」
『ありがとう、に、……にい、ちゃん』
全く吹っ切れていない。でも、立ち上がるしかなかった。こういう時、名前には責任を負わせたくない阿賀島だったが、責任を負わせることで立ち上がれることをよく知っていたから。
じわじわと思考が戻る。まず何から手を付けるか、名前は阿賀島と山田に向き直り、情報のすり合わせを始めるのだった。
阿賀島尊というのは、中学時代、沢山居た不良共にアイツだけは関わるな認定されていた人間である。ほぼ皆に。同世代で知らないやつは戸亜留には居ないんじゃないかレベル。
「は、あが、え?“加地屋の気狂い”?」
「ギャーーーーッ!俺ちんの黒歴史ほじくんなし!いいけど!」
チラッと名前は聞いていたが、面と向かってやっと解った。だって山田は中学時代、荒れていた頃にこの男を見たことがある。うわ~一人を大勢で囲むとかクソ~とこの数十倍は悪い口で加勢しようと思えば、一人でその大勢をのして、全員の手足を折りやがった野郎だ。
「えっあのアンパン中毒に絡まれてそんなに好きならいっぱい飲みなってそのまま口に突っ込んだあの気狂いさんで????」
「イヤーーッなにそれーーーっ」
「は?タケそんな事したのか?」
「あ嘘?」
「やったけど」
「やったんじゃん」
「てか君だれ?名前っちが言ってた山田の友っち?」
「あ、はい、友っち……は?」
「山田、黙っとけ。慣れねえうちはタケと話すとSAN値が削れる」
「この気狂いもしかして神話生物かなにか????」
「良いから二人共休みなや~!!!介護疲れで心中しそうな顔してるちや」
それはそう、二人共めちゃくちゃ疲れていた。十三は名前に加えて将五も。二人は少しでも眠ると酷くうなされて可哀想なくらいだったから、見ている方も辛かった。
「……もう名前の事、叩かない?」
「いやそれは名前っち次第」
「タケお前名前の事好き好き言う割にスムーズに叩きやがったな」
「あのね!!人を女だろうが簡単に殴るようなクズにしないでね!?殴るけど」
「最低……」
「山田、お前も殴るの知ってっからな」
「やっべ」
阿賀島は名前に向き直る。名前は阿賀島の存在を見て、ふるりと震えてしまった。なにせ、山田も十三も甘やかしてくれるけれども阿賀島は積極的に鞭を与えてくる人間だからである。
いや、いいのか。だって、
「俺ちんが怒ってるのは、友っちと十三ちゃへの態度だって言ってんじゃ~~~んこのばかちん」
『…………』
「返事しろや」
「ピピーーーーーッ名前警察です!!!前髪を掴むのはお辞めください!!!」
「え友っち昨日俺ちんほぼ同じこと言ったわ。仲良ぴだね」
「正気か?」
「あのね~、名前っち。良いんだよ、二人に甘えても。辛かったね。ね?」
『……うん』
「痛かったね?でも今、もしかしてだけどずっと泣けてないね?」
『…………うん』
「お返事出来て偉いねえ!もうちょい頑張ろね!」
「十三さんあれ完全にDV彼氏の典型では?」
「言うな……あれでも中学時代は好誠と並ぶレベルで名前の理解者だっ……こわ……龍ちゃんに電話してきていいか……?」
「頼むからここに居て、見捨てないで。は?逃がさねーからな」
阿賀島はこの二人はきっと疲れすぎて馬鹿になってるんだな、と思いながら名前の前髪を掴んだまま優しく微笑んだ。
「ねえ、泣けてないのはなんで?泣き虫の癖に」
『…………わかん、ない』
「解んなくないねえ!自分のせいで死んだのに泣いてどうするって思ってるんだよねえ!」
後ろで山田がキレてるけど十三が止める。言い方がデッドヒートしてるけど、これは必要である。
「名前が壊れる前に、必要なことだ」
「あのDV王止めなくて良いんすか!?」
「言っとくけど俺からしたらお前と似たもん同士だよ、そろそろ黙らねえとデスソース持ってくんぞ」
「やだ……………………」
『……』
「十三ちゃとか友っちからお前のせーじゃないって聞いても気遣ってると思う?だろね!俺ちんでも思う!ンでもね!お前墓参り行った?」
『……い、てない』
「なんで?礼は尽くせよ。なに中途半端な事してんだよ。お前が自分のせいじゃないと思うなら庇って貰った事の感謝を述べろ。自分のせいだと思うならクソほど謝れよ、気の済むまで。何立ち止まってんだよ。この生温い空間で現状維持してたら次は十三ちゃが死ぬぞ」
『や、!』
「や!じゃねーし。甘ったれんな。大体、なに?お前。怖いんだろ、外に出てお前のせいって言われるの。言ってやろうか?お前のせいだって。痛め付けられれば満足?俺ちんなら死なない程度に幾らでも出来るよ?」
阿賀島名物クソ煽り。これを言ったら怒るだろうなという事をクソ程狙って正論も混ぜやがるからタチが悪い。山田がなるほどこれね、とめちゃくちゃ渋い顔をした。
「それともなに?このまま居たいん?護ってくれた、なんだっけ?あのハゲの事、もう忘れて生きる?そしたら楽だもんね」
『、ない』
「あに?」
『わすれない!!!!』
ようやっと名前が釣れた。今の今までフワフワしていた焦点が一気に定まる。
『でもわかんない、どうしたらいいの、なんで兄ちゃんはかばったの?!なんでわらったの?!』
なんで、頭なんて撫でるの!!?
久しぶりに聞いた、名前の心からの叫びだった。名前、と山田が十三の静止から逃れて床にへたり込む。
『なんでよかったなんて言うの、なんでみんな責めてくれないの、私が、私があの女を殺さなかったのが原因なのに、どうして!!?』
「あっ俺ちんそこの事情は聞いてないけど友っち後で教えてくれる?」
「あ、うん。多分めちゃくちゃ殴りながら教える」
「殴られる~こわ……」
なんで、どうして、と喚く名前の脳裏にはまだ鉄生が居た。刺されてから振り向いて笑った顔、倒れて必死に傷口を圧迫して止血を試みている名前に「よかった」と言って、頭を撫でるその声も、感触も全て。
それでも名前は泣けなかった。ようやっと阿賀島に底から引き摺り出されても、泣いたら足を止めてしまうから。
なんとなく阿賀島も、山田もそれを理解した。顔を見合わせてちょっと笑う。
「……名前っち。どうすんの?そのなんだっけ?敵は?刺した奴は捕まったの聞いたけど、裏があるんしょ?」
『……うん』
「え、じゃあ名前っちがこうしてる間どうしてんのそれ」
「見張らせてる。随分、楽しそうらしいがな」
後は全力で名前の悲しみを憎しみに変えて、怒りに変えて、元凶をぶっ殺さねばならない。
「ンね!お前が昔俺の母ちゃん死んだ時に言ったことまんま返すよ!“シケた面見せてると悲しむと思わん?なら、良い顔見せて安心させてやろーぜ!”」
『んっグゥ』
「なるほどね、十三さんこれなんて言いますっけ」
「因果応報、自業自得、自縄自縛、身から出た錆」
「十三ちゃ頭良~~www」
「お前そろそろ名前の前髪離してくんない?」
「やだ……名前っちまだウジウジしてるも……」
「名前がお嫁に行く時に被虐趣味になったらどうしてくれんの……?」
「おう山田そこまでだ名前は嫁にやらん」
三人の馬鹿な話を聞いて、名前は思考する。ここまでさせておいて、まだウジウジするのか、という声と、鉄生さんの命を奪っておいて幸せになる気か、と言う声。
頭がぐるぐるする、鉄生さんはあんな小さな箱に収まっちまって、確かに死んだってこと、死ぬ直前まで気にかけてくれたこと、花火しようねって言ってたこと、兄ちゃんと呼べと言っていたこと
全部全部無くなった、真喜雄兄ちゃんや和志兄ちゃんみたいに、しかも、目の前で、自分の認識の甘さのせいで。
「これ以上、名前が弱ってたらまた被害が出るかもな」
ぶわりと、名前の目に火が灯る。ガタガタと身体は震え、阿賀島がえ?なに?やっと起きた?と覗き込もうとして、
『タケちゃん、ありがとう、手、離せ』
「アッハイごめんちゃ……」
『悪いけど、十三には流石に頼めないから……ごめんタケちゃんめちゃくちゃ容赦なさそうで怖いから山田、頼んでいいか』
「顔?」
「ぶっ殺すぞ」
『十三の前で顔殴れなんて言えるか馬鹿タレが。背中叩いて、気合い入れて』
ウス、と山田が返事した瞬間めちゃくちゃいい笑顔の阿賀島がシーーーっと指を口に寄せて、バチンッ!と強めに叩いた。名前は悶絶し、タケ…………と唸りながら、立ち上がる。
『十三』
「あぁ」
『私、今まだ泣けないの。多分、終わるまで泣けない』
「……あぁ」
『十三兄、お願い。私が全部終わらせたら、一緒にお墓参りに行ってくれる?』
「あぁ、勿論だ」
『ありがとう、に、……にい、ちゃん』
全く吹っ切れていない。でも、立ち上がるしかなかった。こういう時、名前には責任を負わせたくない阿賀島だったが、責任を負わせることで立ち上がれることをよく知っていたから。
じわじわと思考が戻る。まず何から手を付けるか、名前は阿賀島と山田に向き直り、情報のすり合わせを始めるのだった。