そのじゅうに
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葬式は滞りなく行われた。河内家は身内だけの小さな葬式で、武装や親交のあった者は香典のみ受け付けられたが、名前だけは葬式に参加する事を許された。
母ちゃんも、ユキちゃんも、責めてくれなかった。鉄生さんは、お兄ちゃんは私のせいで死んだのに。
「名前ちゃん、鉄生が……あの子が、助けた命を、責められる訳が無いでしょう」
そもそも、私がちゃんとしていれば、皆と絡んでいなければ、お兄ちゃんが死ぬことは無かったのに
『ごめんなさい』
『ごめん、なさい』
鉄生が死んだ事は瞬く間に広がった。死因も、犯人の事も。犯人は鈴蘭を辞めた人間であった、捕まった時、俺は命令されただけなんだと主張していたと言う。
そしてその場に、将五と名前が居て、鉄生は名前を庇って刺されたという事も。
鈴蘭は辞めた生徒とはいえこの学校に居たから、と沈痛な気持ちでそれを聞き、原田は名前になんと声をかければいいか解らず、クロサーに肩を叩かれる。鳳仙だって武装とは仲良くはしてなかったけれど、それでも、死だなんて、誰も思っていなかったから。
ガシャンと倉庫に激しい音が響く。憤怒の表情を浮かべた天地は箕月を探せ、と命令した。もう、逃げた後だと言うのに。
将五は村田家の部屋に引き籠もり、名前は苗字家に引き篭った。十三が将五に「放っておいてくれ」と言われ、次に名前を見に行くと鍵が開いておらず、十三や幼馴染だけが知る外から二階に上がる方法で上り、部屋を見るとカーテンの合間から部屋の隅で布団にくるまってピクリとも動かない名前が見えた。
「十三さん」
山田だった。鉄生が死んだ翌日から名前に会いに来たが、ことごとく帰れと言われ、それでも毎日欠かさずに来ていたのだった。
ゆっくり降りて、首を振る。そうですか、と呟いた山田の顔色は悪かった。
将五は勿論、名前は事情聴取を受けた。どちらも錯乱していて、親が居ないので十三が急ぎ呼ばれたのだが、その聴取も中々酷いものだった。
「痴情のもつれですか?」
「結局お前が刺したのか?それとも、この子が刺したのか?」
それが十三が到着してすぐ聞いた言葉だった。十三が頭に血を登らせると二人を助けられないと怒りを押し殺し、そんな事実はない、死んだ男は彼女の兄のような男で、弟の兄貴分だったと。状況を聞く限り、鉄生が名前を庇った事は間違いないと。
だから頼むから二人を休ませてやってくれと頼むも、思い出したくもない心無い言葉を浴びせられた。それを救ったのは、戸亜留市警察署の所長である名前のクラスメイトの父と、巡査長である十三が昔から世話になっていた人であった。
二人は取り調べを行った職員を厳しく叱り、状況証拠的にもそれしか考えられない、とにかく今は休ませてあげてと帰してくれた。
だがその聴取も相まってか二人はずっと塞ぎ込んでいる。名前は鉄生の母親と妹と共に葬式に参加したが、終わると同時に実家に引き篭った。飯を食っているかすら解らない。窓をコン、と叩いただけで叫び出してしまうのだ。
一度、山田が十三に「窓割っていいですか」と断りを入れたが、その直後に名前の悲鳴が響いた。急いで駆け付け、その時には将五も酷ぇ顔で窓から名前の部屋を見るが、名前が窓から色んな物を投げている最中だった。十三と山田が確認すると、全て刃物。カッター、ハサミ、ペーパーナイフ。部屋にある全ての刃物が、名前の手で投げ捨てられた。すぐに、窓は閉められてしまってどうしようも無くなったのだけど。
この日、葬式でも物を食っていなかったと聞いて十三が許可を出して山田が一階の窓を小さく割り、中に侵入した。十三と共に二階、名前の部屋の前に立ち、声をかける。
「名前」
無言
「……名前、」
十三と顔を見合わせる。将五の部屋は鍵もかかっていなくて、十三が無理やり口に物を突っ込んだけれど、名前の家には今日やっと入れたのだ。山田がドアを荒々しく開ける。丸くなった布団から、ギラギラと光る目が見えた。
『こないで』
「名前、」
『でてって』
「なんか、食べよう?十三さん、ご飯作って、」
『出ていって!!!!!』
げほ、と噎せる。十三が慌てて布団を剥ぎ取ると、この数日しか経っていないのに痩せこけた、否、やつれた名前の姿があった。色んな感情が込み上げるのをぐっと我慢して、十三が名前を担ぎ上げ、村田家へ直行した。抵抗する力も、残っていなかった。
「十三さん、俺おじや作ります」
「頼む、将五の分もまだだから多目に頼めるか、俺は風呂に入れてくる」
「うっす」
やだ、離してと弱い力で暴れる名前をキュッと抱いて、名前を風呂場に連れてった。目頭が熱くなる、名前の唇はもう噛みすぎてズタズタであった。
名前と将五の傷が少しでも癒える事無く、死んだ日から十日が経った。どちらも無気力に、でも十三の目があるのでなんとか飯を無理やり口に入れられる、なんとか風呂に突っ込まれる、そんな状態だった。
この日、河内家の墓に武装は集結。十三は本当に済まない、頼むと山田に頼み龍信から送られた香典を供えに行った。
町が悲しみに包まれた、鉄生の死を嘆いた。清広は鉄生が死んだ場所に花を供え、静かに涙を流していた。
「~、……~!だろ!?だから、苗字名前のせいで……」
「……?」
ふと、近くから鉄生が庇った、あの可愛い女の名前が聞こえた。清広にとっても、名前は可愛い妹分で、心のどこにだって、彼女のせいで鉄生が死んだなんて考えは無かった。
「苗字名前のせいで武装の頭が死んだんだってよ!!」
「マジ!?アイツ最近調子乗ってたからな!大人しくなるんじゃねーか」
清広は瞬時に沸騰するような怒りに襲われた。だって名前は己が認めた頭が護った女だ、こんなクソッタレな連中に無条件で懐いてくる女だ。鉄生に何死んでやがると怒りは、涙はすれど、名前を恨むなど一切許されない。あれは、あの女のせいではないのだ。
「テメ、」
「は~~~~~いピピーーーーーッ!!!名前っち警察だ!てをあげろ~!!!!遅いよドーーーーン!!!!」
今までふざけた事を話していた二人を変な事を叫ぶジャラジャラとアクセサリーを付け、タンクトップじゃ隠せないタトゥーが覗く男が蹴り飛ばした。清広がは?と声を上げるも、追撃が止まない。
「なに?誰?お前誰の許可得て名前っちの名前出してンの?え?きーてる?えへえへ聞いてないからころっちっち~!!!!」
ガコッ!!!!と良い音がして、男の足が振り下ろされる。酷い悲鳴だ、恐らく腕が折られている。
「ンね、誰か死んだん?」
急にこっちに話しかけるな。流石に展開に追い付けなくて言葉が出なかった清広のジャケットを見て男は「ゲッッ!!」と嫌な顔をする。
「お前武装じゃん!くっそ!第一村人が武装とかなに?呪われてんの?こっわ」
「……なんだ、テメェ」
「ど~でもいいや。ンね、ドブネズミ元気?」
「は????」
母ちゃんも、ユキちゃんも、責めてくれなかった。鉄生さんは、お兄ちゃんは私のせいで死んだのに。
「名前ちゃん、鉄生が……あの子が、助けた命を、責められる訳が無いでしょう」
そもそも、私がちゃんとしていれば、皆と絡んでいなければ、お兄ちゃんが死ぬことは無かったのに
『ごめんなさい』
『ごめん、なさい』
鉄生が死んだ事は瞬く間に広がった。死因も、犯人の事も。犯人は鈴蘭を辞めた人間であった、捕まった時、俺は命令されただけなんだと主張していたと言う。
そしてその場に、将五と名前が居て、鉄生は名前を庇って刺されたという事も。
鈴蘭は辞めた生徒とはいえこの学校に居たから、と沈痛な気持ちでそれを聞き、原田は名前になんと声をかければいいか解らず、クロサーに肩を叩かれる。鳳仙だって武装とは仲良くはしてなかったけれど、それでも、死だなんて、誰も思っていなかったから。
ガシャンと倉庫に激しい音が響く。憤怒の表情を浮かべた天地は箕月を探せ、と命令した。もう、逃げた後だと言うのに。
将五は村田家の部屋に引き籠もり、名前は苗字家に引き篭った。十三が将五に「放っておいてくれ」と言われ、次に名前を見に行くと鍵が開いておらず、十三や幼馴染だけが知る外から二階に上がる方法で上り、部屋を見るとカーテンの合間から部屋の隅で布団にくるまってピクリとも動かない名前が見えた。
「十三さん」
山田だった。鉄生が死んだ翌日から名前に会いに来たが、ことごとく帰れと言われ、それでも毎日欠かさずに来ていたのだった。
ゆっくり降りて、首を振る。そうですか、と呟いた山田の顔色は悪かった。
将五は勿論、名前は事情聴取を受けた。どちらも錯乱していて、親が居ないので十三が急ぎ呼ばれたのだが、その聴取も中々酷いものだった。
「痴情のもつれですか?」
「結局お前が刺したのか?それとも、この子が刺したのか?」
それが十三が到着してすぐ聞いた言葉だった。十三が頭に血を登らせると二人を助けられないと怒りを押し殺し、そんな事実はない、死んだ男は彼女の兄のような男で、弟の兄貴分だったと。状況を聞く限り、鉄生が名前を庇った事は間違いないと。
だから頼むから二人を休ませてやってくれと頼むも、思い出したくもない心無い言葉を浴びせられた。それを救ったのは、戸亜留市警察署の所長である名前のクラスメイトの父と、巡査長である十三が昔から世話になっていた人であった。
二人は取り調べを行った職員を厳しく叱り、状況証拠的にもそれしか考えられない、とにかく今は休ませてあげてと帰してくれた。
だがその聴取も相まってか二人はずっと塞ぎ込んでいる。名前は鉄生の母親と妹と共に葬式に参加したが、終わると同時に実家に引き篭った。飯を食っているかすら解らない。窓をコン、と叩いただけで叫び出してしまうのだ。
一度、山田が十三に「窓割っていいですか」と断りを入れたが、その直後に名前の悲鳴が響いた。急いで駆け付け、その時には将五も酷ぇ顔で窓から名前の部屋を見るが、名前が窓から色んな物を投げている最中だった。十三と山田が確認すると、全て刃物。カッター、ハサミ、ペーパーナイフ。部屋にある全ての刃物が、名前の手で投げ捨てられた。すぐに、窓は閉められてしまってどうしようも無くなったのだけど。
この日、葬式でも物を食っていなかったと聞いて十三が許可を出して山田が一階の窓を小さく割り、中に侵入した。十三と共に二階、名前の部屋の前に立ち、声をかける。
「名前」
無言
「……名前、」
十三と顔を見合わせる。将五の部屋は鍵もかかっていなくて、十三が無理やり口に物を突っ込んだけれど、名前の家には今日やっと入れたのだ。山田がドアを荒々しく開ける。丸くなった布団から、ギラギラと光る目が見えた。
『こないで』
「名前、」
『でてって』
「なんか、食べよう?十三さん、ご飯作って、」
『出ていって!!!!!』
げほ、と噎せる。十三が慌てて布団を剥ぎ取ると、この数日しか経っていないのに痩せこけた、否、やつれた名前の姿があった。色んな感情が込み上げるのをぐっと我慢して、十三が名前を担ぎ上げ、村田家へ直行した。抵抗する力も、残っていなかった。
「十三さん、俺おじや作ります」
「頼む、将五の分もまだだから多目に頼めるか、俺は風呂に入れてくる」
「うっす」
やだ、離してと弱い力で暴れる名前をキュッと抱いて、名前を風呂場に連れてった。目頭が熱くなる、名前の唇はもう噛みすぎてズタズタであった。
名前と将五の傷が少しでも癒える事無く、死んだ日から十日が経った。どちらも無気力に、でも十三の目があるのでなんとか飯を無理やり口に入れられる、なんとか風呂に突っ込まれる、そんな状態だった。
この日、河内家の墓に武装は集結。十三は本当に済まない、頼むと山田に頼み龍信から送られた香典を供えに行った。
町が悲しみに包まれた、鉄生の死を嘆いた。清広は鉄生が死んだ場所に花を供え、静かに涙を流していた。
「~、……~!だろ!?だから、苗字名前のせいで……」
「……?」
ふと、近くから鉄生が庇った、あの可愛い女の名前が聞こえた。清広にとっても、名前は可愛い妹分で、心のどこにだって、彼女のせいで鉄生が死んだなんて考えは無かった。
「苗字名前のせいで武装の頭が死んだんだってよ!!」
「マジ!?アイツ最近調子乗ってたからな!大人しくなるんじゃねーか」
清広は瞬時に沸騰するような怒りに襲われた。だって名前は己が認めた頭が護った女だ、こんなクソッタレな連中に無条件で懐いてくる女だ。鉄生に何死んでやがると怒りは、涙はすれど、名前を恨むなど一切許されない。あれは、あの女のせいではないのだ。
「テメ、」
「は~~~~~いピピーーーーーッ!!!名前っち警察だ!てをあげろ~!!!!遅いよドーーーーン!!!!」
今までふざけた事を話していた二人を変な事を叫ぶジャラジャラとアクセサリーを付け、タンクトップじゃ隠せないタトゥーが覗く男が蹴り飛ばした。清広がは?と声を上げるも、追撃が止まない。
「なに?誰?お前誰の許可得て名前っちの名前出してンの?え?きーてる?えへえへ聞いてないからころっちっち~!!!!」
ガコッ!!!!と良い音がして、男の足が振り下ろされる。酷い悲鳴だ、恐らく腕が折られている。
「ンね、誰か死んだん?」
急にこっちに話しかけるな。流石に展開に追い付けなくて言葉が出なかった清広のジャケットを見て男は「ゲッッ!!」と嫌な顔をする。
「お前武装じゃん!くっそ!第一村人が武装とかなに?呪われてんの?こっわ」
「……なんだ、テメェ」
「ど~でもいいや。ンね、ドブネズミ元気?」
「は????」