そのじゅういち
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しばらく山田の家に世話になっていたのだが、そろそろ家に戻る事になった。と、いうかそろそろ十三に会いたくなってきた。まぁ村田家で襲撃とか自殺行為だろうしね。
「村田の将五が詳しい話とか聞いてきそうじゃない?」
『ん~、今んとこ言う気は無いかな。十三も……うん、特に、十三には。将五には言わない方が楽しそうなんだけど、十三、多分凄く……悲しむかもしれないから』
「ふうん。ま、いんじゃない?名前がそう思うならそれでいいと思うよ」
『あっ』
「なに」
名前が弄っていた携帯から顔を上げて山田を見る。ちょっとソワソワするような、ワクワクするような、そんな顔。
『あのね山田、夏休みにね、紹介したい奴いるの』
「紹介???珍しいじゃん。誰?」
名前はえへ、と笑って『元々友達だったけど、改めてちゃんと友達になりてえ奴』と答えた。
『同じ加地屋だったんだけど、中三の終わり頃引っ越してさ。夏休み入ったらこっち戻ってきて、明けから常磐に入るらしい』
「……加地屋のでそんな仲良いのいたの?俺聞いた事ねーんだけど」
『ま~~~~ワンチャン戻らねーと思ってたし。アイツ戸亜留が好きじゃないからね。でも、多分山田は凄く好きだと思うし……喧嘩にも、なるかな』
「えっ怖い人?やだ~山田怖い人嫌いだよか弱いから」
『やかまし……。いや、多分大丈夫。アイツ、武装と幼馴染連中以外には仏だし』
名前を阿賀島尊、何がなんでも俺は俺を突き通す最高の男だよ、と言うと山田は一瞬真顔になった。京華時代にそんな名前をめちゃくちゃ聞いたことがある気がするし、しかもめちゃくちゃ不穏な呼び名を付けられていた男の気がする。
名前が元々、身内かそれ以外というカテゴリしか無かったのを知っている。だから、山田を初めての友達、と呼んだ。つまりそれまで、どれだけ仲が良くても友達と認める者は居なかったということ。
『私がつまらん意地張ってさ、アイツ、怒ってくれてたのに。身内じゃなくて友達って言われて、拒絶されたと思い込んでさ。謝る前にあの野郎引っ越しやがって。ちょこちょこ連絡はしてたけど、謝って、改めて友達になるのは、直接言いてえからさ』
「……そこまで、名前の中では大きい奴なの?」
『ん~、お前とつるみ出してから思ったけど、新旧相棒組って感じする』
「そこまで????山田くん焼きもち妬いちゃうけど。良いんですか?!焼きもち妬いて良いんですか?!」
『喧しいなお前』
ケラケラ笑うと、山田もふ、と笑った。しばらく気を張っていたから、普通に笑えて嬉しいのだ。そしてわ言う。「名前が認める奴なら、まぁ良いけど」と。それに対して名前はゲッッソリした顔で首を振った。
『山田、悪いこと言わないけど、そういう言い方はやめときな』
「えっ今更?」
『アイツ、誰かの為に、っていう言葉が一番嫌いなんだ。ま、山田は大丈夫だと思うけどね』
ますますどんな奴なんだ……と思った所で村田家に到着。家の前では十三がいつも通りですよ、みたいな顔でバイクの洗車をしていた。こういう時は本当に不器用だなと笑って、十三、と声をかけた。洗う手をピタッと止めて、緩くこちらを見た。周りを威圧するような目付きだが、どう声をかけていいか迷っている時の癖のようなものだった。
そうなってしまえば名前もちょっとなんて喋ろ、と止まってしまった。普通にただいまと言うつもりだったのに、そういやめちゃくちゃ心配かけちまったな、と今更思ってしまったので。
これ、怒られるのではと山田を見るとめちゃくちゃ困ったように笑って行っておいで、と言った。そうじゃない。困った時に逃げ出しそうになるのは悪い癖なのだが、今回はもう目の前に十三の手が迫っていた。
「名前」
『う゛。……ただいま』
「おかえり。……中に、入れ。山田、お前は?」
「いーえ。今日は兄弟水入らずでどーぞ」
「悪いな」
『……山田。送ってくれてありがと。気を付けて帰って』
「おっけー!」
山田はそのまま帰った。背中を見送って、ちょっと嫌な沈黙が降りる。ミンミンとうるせぇ蝉の声、額を流れる汗。この間も、ずっと十三はバイクを洗う手を止めない。
「……冷凍庫に、パルフェが入ってる」
『うん、』
「先、入って食ってろ」
『……うん』
どうしても気まずくて、そのまま家に入った。怒ってるなら怒ってるで言ってくれたら楽なのに、と思いながら手を洗って冷凍庫を開ける。十三手作りのパルフェを取り出し、茶の間で食べながら携帯を弄る。なにせ情報は生命線なので。
“天狗の森で花と光政タイマン張ってるよ。村田が立ち会ってるから、しばらくは帰らないと思う”
とうとうあそこでぶつかったか。ま、三年になってからだと背負うものも余計多くなるから闘るなら確かに今だよね。
綺麗にパルフェを食べ終わると、背後に十三が立っていた。いや軽くホラーよ。何を言うわけでなく、秒でパルフェの容器を片付けられた。自分で洗えるんだが?と言えば無言で洗い終えてこちらに戻り、ピ、ピ、ピ、とエアコンを操作し始めた。
十三は極度の、面倒な暑がりなので夏場家に居る時はとんでもなく温度を下げる。一緒に居たら寒いレベルだ。本人曰く、寒い中でタオルケット被って昼寝するのが至高なんだと。
『えっ温度下げるなら私部屋行くよ』
「行くな」
『は?』
「行くな」
ぐっ、と十三が名前の腕を引く。なんやねんと戸惑いながらすっぽり十三の腕の中に収まると、そのままテレビを見初めてしまった。こんなにぎゅうぎゅうに抱っこされるのはいつぶりだったか、昔、友達の阿賀島と共に三代目の奴等からリンチを受けた時以来かもしれない。
「……石、どこに当たった」
『ここ』
当たった場所を指さすと、十三の大きい手が髪をかき分けた。もう邪魔くさいからガーゼを外して乾かしているけれど、傷は結構深い。顔の擦り傷は無くなってきたけど少しはあるし。
「……肝が、冷えたぞ」
『うん』
それきりまたテレビを見始めてしまった。私は十三に抱っこされて寒くないから良いけど、普通に暇。
多分、十三は昔ならこんな怪我日常茶飯事だったことを思い出したのだ。ただ、それを私が負うのが嫌なだけで。……前、俺とお前は違うと心配の末言われ、喧嘩になったことがあった。だから、言わないだけ。
解っている、心配するのは解っている。結局の所どれだけ馬鹿をしても男と女は違うから。
でも今回は無理だ、これは男を使った女同士の戦いだ。これに関しては、私も引き下がれないけど、……言うべきことは、ある。
『心配かけて、ごめんね十三兄』
「あぁ、本当にな」
夕方将五が帰ってきて、名前の靴があったから例の怪我の件を詳しく聞こうと思ったがキンッキンに冷えた部屋で己の兄に抱かれて爆睡している名前を見たら起こすことなんて出来なかった。
しばらく山田の家に世話になっていたのだが、そろそろ家に戻る事になった。と、いうかそろそろ十三に会いたくなってきた。まぁ村田家で襲撃とか自殺行為だろうしね。
「村田の将五が詳しい話とか聞いてきそうじゃない?」
『ん~、今んとこ言う気は無いかな。十三も……うん、特に、十三には。将五には言わない方が楽しそうなんだけど、十三、多分凄く……悲しむかもしれないから』
「ふうん。ま、いんじゃない?名前がそう思うならそれでいいと思うよ」
『あっ』
「なに」
名前が弄っていた携帯から顔を上げて山田を見る。ちょっとソワソワするような、ワクワクするような、そんな顔。
『あのね山田、夏休みにね、紹介したい奴いるの』
「紹介???珍しいじゃん。誰?」
名前はえへ、と笑って『元々友達だったけど、改めてちゃんと友達になりてえ奴』と答えた。
『同じ加地屋だったんだけど、中三の終わり頃引っ越してさ。夏休み入ったらこっち戻ってきて、明けから常磐に入るらしい』
「……加地屋のでそんな仲良いのいたの?俺聞いた事ねーんだけど」
『ま~~~~ワンチャン戻らねーと思ってたし。アイツ戸亜留が好きじゃないからね。でも、多分山田は凄く好きだと思うし……喧嘩にも、なるかな』
「えっ怖い人?やだ~山田怖い人嫌いだよか弱いから」
『やかまし……。いや、多分大丈夫。アイツ、武装と幼馴染連中以外には仏だし』
名前を阿賀島尊、何がなんでも俺は俺を突き通す最高の男だよ、と言うと山田は一瞬真顔になった。京華時代にそんな名前をめちゃくちゃ聞いたことがある気がするし、しかもめちゃくちゃ不穏な呼び名を付けられていた男の気がする。
名前が元々、身内かそれ以外というカテゴリしか無かったのを知っている。だから、山田を初めての友達、と呼んだ。つまりそれまで、どれだけ仲が良くても友達と認める者は居なかったということ。
『私がつまらん意地張ってさ、アイツ、怒ってくれてたのに。身内じゃなくて友達って言われて、拒絶されたと思い込んでさ。謝る前にあの野郎引っ越しやがって。ちょこちょこ連絡はしてたけど、謝って、改めて友達になるのは、直接言いてえからさ』
「……そこまで、名前の中では大きい奴なの?」
『ん~、お前とつるみ出してから思ったけど、新旧相棒組って感じする』
「そこまで????山田くん焼きもち妬いちゃうけど。良いんですか?!焼きもち妬いて良いんですか?!」
『喧しいなお前』
ケラケラ笑うと、山田もふ、と笑った。しばらく気を張っていたから、普通に笑えて嬉しいのだ。そしてわ言う。「名前が認める奴なら、まぁ良いけど」と。それに対して名前はゲッッソリした顔で首を振った。
『山田、悪いこと言わないけど、そういう言い方はやめときな』
「えっ今更?」
『アイツ、誰かの為に、っていう言葉が一番嫌いなんだ。ま、山田は大丈夫だと思うけどね』
ますますどんな奴なんだ……と思った所で村田家に到着。家の前では十三がいつも通りですよ、みたいな顔でバイクの洗車をしていた。こういう時は本当に不器用だなと笑って、十三、と声をかけた。洗う手をピタッと止めて、緩くこちらを見た。周りを威圧するような目付きだが、どう声をかけていいか迷っている時の癖のようなものだった。
そうなってしまえば名前もちょっとなんて喋ろ、と止まってしまった。普通にただいまと言うつもりだったのに、そういやめちゃくちゃ心配かけちまったな、と今更思ってしまったので。
これ、怒られるのではと山田を見るとめちゃくちゃ困ったように笑って行っておいで、と言った。そうじゃない。困った時に逃げ出しそうになるのは悪い癖なのだが、今回はもう目の前に十三の手が迫っていた。
「名前」
『う゛。……ただいま』
「おかえり。……中に、入れ。山田、お前は?」
「いーえ。今日は兄弟水入らずでどーぞ」
「悪いな」
『……山田。送ってくれてありがと。気を付けて帰って』
「おっけー!」
山田はそのまま帰った。背中を見送って、ちょっと嫌な沈黙が降りる。ミンミンとうるせぇ蝉の声、額を流れる汗。この間も、ずっと十三はバイクを洗う手を止めない。
「……冷凍庫に、パルフェが入ってる」
『うん、』
「先、入って食ってろ」
『……うん』
どうしても気まずくて、そのまま家に入った。怒ってるなら怒ってるで言ってくれたら楽なのに、と思いながら手を洗って冷凍庫を開ける。十三手作りのパルフェを取り出し、茶の間で食べながら携帯を弄る。なにせ情報は生命線なので。
“天狗の森で花と光政タイマン張ってるよ。村田が立ち会ってるから、しばらくは帰らないと思う”
とうとうあそこでぶつかったか。ま、三年になってからだと背負うものも余計多くなるから闘るなら確かに今だよね。
綺麗にパルフェを食べ終わると、背後に十三が立っていた。いや軽くホラーよ。何を言うわけでなく、秒でパルフェの容器を片付けられた。自分で洗えるんだが?と言えば無言で洗い終えてこちらに戻り、ピ、ピ、ピ、とエアコンを操作し始めた。
十三は極度の、面倒な暑がりなので夏場家に居る時はとんでもなく温度を下げる。一緒に居たら寒いレベルだ。本人曰く、寒い中でタオルケット被って昼寝するのが至高なんだと。
『えっ温度下げるなら私部屋行くよ』
「行くな」
『は?』
「行くな」
ぐっ、と十三が名前の腕を引く。なんやねんと戸惑いながらすっぽり十三の腕の中に収まると、そのままテレビを見初めてしまった。こんなにぎゅうぎゅうに抱っこされるのはいつぶりだったか、昔、友達の阿賀島と共に三代目の奴等からリンチを受けた時以来かもしれない。
「……石、どこに当たった」
『ここ』
当たった場所を指さすと、十三の大きい手が髪をかき分けた。もう邪魔くさいからガーゼを外して乾かしているけれど、傷は結構深い。顔の擦り傷は無くなってきたけど少しはあるし。
「……肝が、冷えたぞ」
『うん』
それきりまたテレビを見始めてしまった。私は十三に抱っこされて寒くないから良いけど、普通に暇。
多分、十三は昔ならこんな怪我日常茶飯事だったことを思い出したのだ。ただ、それを私が負うのが嫌なだけで。……前、俺とお前は違うと心配の末言われ、喧嘩になったことがあった。だから、言わないだけ。
解っている、心配するのは解っている。結局の所どれだけ馬鹿をしても男と女は違うから。
でも今回は無理だ、これは男を使った女同士の戦いだ。これに関しては、私も引き下がれないけど、……言うべきことは、ある。
『心配かけて、ごめんね十三兄』
「あぁ、本当にな」
夕方将五が帰ってきて、名前の靴があったから例の怪我の件を詳しく聞こうと思ったがキンッキンに冷えた部屋で己の兄に抱かれて爆睡している名前を見たら起こすことなんて出来なかった。