そのじゅう
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「俺ァよ」
十希夫の掌が名前の頬を撫でる。未だその表情は見えない。聞いたことも無い低い声に思わずじわりじわりと内臓が鷲掴みされるかのような意地の悪い痛みに襲われる。
「黒澤弟から、これ聞いた時よ。腹ン中燃えるかと思った」
『とっ、きー、』
「お前の周りが物騒なのは、まぁ解りきった事だが、お前が直接狙われるたァ思いもしなかった。自分でも驚いたぜ、こんなに怒りが抑えられねえのは初めてだ」
頬を撫でる手がするりと胸ぐらを掴む。いやまさかなと思いながらも冷や汗が背筋を伝った。月明かりで徐々に顕になる十希夫の目は、明らかな怒気を持って名前を突き刺した。
「お前が無事な上で、黒澤弟が犯人を探してよ。それからどうしようが俺は良かったよ。お前、舐められてただで済ますような可愛い性格じゃねえのは解ってるからな。……でもな、ありゃあなんだ?死んだって構わねー!!?ふざけんじゃねぇぞ!!!」
グンッと引かれて締まる首に顔を歪めた。怒鳴られるのは慣れているけれど、凄まれるのも慣れているけれど、こんな真正面から全部ぶつけて怒りに来られるのは好誠さん以来でぎゅっと心臓が縮こまるような感じがする。
ただ、先程から抱く疑問が大きくなる。好誠さんは、私の兄のような男だ。十三は親のようであって、諭すように怒るし、幼馴染達は私を強く怒れない。そんな中で、あの人は私を正しい道に進ませる為に真正面から怒ってくれる貴重な人だ。
でも十希夫くんは?だって、十希夫くんは“鈴蘭の人”だ。無意識に一線だって引いてしまってる。なのに、一年の時もそうだけど何故ここまで怒ってくれるのか。何故、
『なんで、そこまで心配してくれるの?』
そう言うと、十希夫くんはびくりと震えて、胸ぐらを掴む力を少し緩めた。
『解らないよ、だって私は十希夫くんの後輩って言ったってただの知り合いでしょ。なんでそこまで怒ってくれるの』
十希夫はなるほどな、と内心頭を抱えた。名前が鈴蘭の連中に一線を引いているのは知っている。軍司達の世代でも、可愛がって貰っていたが完全に心は開いちゃ居なかった。クロサーは友達の兄だと言うのにたまに話していても目が笑っていないし、鈴蘭の生徒に後ろから話しかけられると物凄い勢いで振り向いてしまう所も見た事がある。
それが、今の所発動しないのは己と花のみだと解っていた。特に自分を見るや安心しきった顔をするのも。花の方の家に行くのは幼馴染が居るからで、クロサーの家に行くのは弟が居るから。でも、鈴蘭の人間の家に単体で行くのは、あんな気の抜けた顔で涎垂らして部屋で寝られるのは自分だけだと、解っていた。十希夫はそんな名前を素直ではないが本当に可愛く思っていたし、困っているのであれば助けたいと思っている。可愛い後輩を助けられるのは先輩の特権なので。
でも、名前は自覚がなかった。名前は鈴蘭全体に一線を引いていると思っていた。花も好きだし、先輩方もまぁ普通に好き。十希夫は、本当に、“兄ちゃん”でなく“先輩”だと。身内以外の信頼出来る人間が友哉しか居なかった名前に、十希夫の行動は解る筈もない。
これはもうちょっと恥ずかしいけれどちゃんと言うしかねえか、と、はぁ~~~~~~、とクソでかい溜め息を吐き出して、ゴツン!!!!と十希夫の額が名前の額に激突する。しかも押し付けたまま離さなかったので衝撃が逃げずにダイレクトに伝わり名前はギャッ!と悲鳴を上げた。押し付けられたままのおでこがヒリヒリする。
「お前にとっちゃただの知り合いでもな、俺にとっちゃお前は可愛い後輩なんでな」
『え゛』
「随分肝が冷えた。お前、解るか。そんな可愛い後輩がよ、殺されかけたんだ。許せると思うか」
『えっえっえっ』
「それでもし捕まってよ、マワされでもしてみろ。俺ァお前に触れた男、全員殺さなきゃならねえだろうが」
『え゛っっっっ』
とんでもねえ低い声で言われて恐怖と罪悪感が湧く。なんならまだ頭が痛ぇし涙がちょろっと出て来た。嘘、名前の両目からは脱水でも起こるんじゃないかというくらい涙が溢れ出ている。しかも十希夫は喧嘩の時は熱いが基本クールな男なので顔は一切の“無”。余計怖い。
「お前が楽しそうだからなんも言わねえだけだ、じゃなかったらお前に触れる男の全てを許す訳ねェだろうよ」
それは、完全に先輩と後輩を逸脱した発言だったけれど、二人共まだ気付いて居なかった。
「お前、名前が十希夫に連れていかれる時止めると思ったぜ」
「なんで?それが兄貴とか、そうね。幼馴染連中とか他の奴等なら止めてたかも。まだ話終わってないし」
「俺もかよ。十希夫は?」
「う~~~ん。……あのさぁ、俺十希夫さん巻き込んだ時、名前を狙ってた男のLINE見せたんだけど、なんて言ったと思う?」
皆名前は大丈夫なのか、とか。怪我の具合を聞いたり、その犯人に殺意を覚える奴等ばかりだった、それが当たり前。でも、十希夫は殺意を堪えながらも、言ったのだ。
“「で、名前はなんて言ってる」”
友哉は呆気に取られてしまった。心配の言葉だとか、そんなものはかけられると思っていたけれど、まさか鈴蘭のこの人が言うと思っていなかった、名前を知り尽くした発言だったから。
“「どうせ動くんだろう。あのじゃじゃ馬が、やられっぱなしの訳がねぇ」
「……俺が、動かせませんよ」
「無理に決まってるだろ。黒澤弟、お前は名前より力も強ぇし頭も良い。でも、アイツは大局を見据える能力に長けた……テッペンに居るのが似合う女だ。多分、お前が知らないだけでもう動いてるぜ」”
事実、それは本当の事だった。自分よりも付き合いが短い癖にと苛立ったのは否定しないが、十希夫が名前を引き摺って行った時安心したのもまた事実だった。
「アイツに足りないのは、身内以外の味方だからね。ま、多分あの人はそれだけじゃないけど」
「………………………………………………………………俺の部屋臭くなってねえかな」
「おいコラクソ兄貴お前不安になるようなこと言う……………………………………ちょっと見てくる」
「待て待て待て待て待て待て、流石に十希夫はそんな節操無しじゃねえから九里虎じゃあるまいし」
「お前等の世代を信用出来るか!!!!顔が悪いのブッチャーさんとお前と光義さん位だろうが!!!!アイツ遊んでてもおかしくねえぞ!!!」
「おうコラテメェ今実の兄の顔を悪いって言いやがったなそこに直れ」
「え?俺の顔が母さん似でめちゃくちゃ可愛い顔なの妬まないで貰っていいです?爺ちゃん似だもんなお前。厳つければなんでもいいと思うなよ」
「友哉ーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
「やんのかゴルァーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「俺ァよ」
十希夫の掌が名前の頬を撫でる。未だその表情は見えない。聞いたことも無い低い声に思わずじわりじわりと内臓が鷲掴みされるかのような意地の悪い痛みに襲われる。
「黒澤弟から、これ聞いた時よ。腹ン中燃えるかと思った」
『とっ、きー、』
「お前の周りが物騒なのは、まぁ解りきった事だが、お前が直接狙われるたァ思いもしなかった。自分でも驚いたぜ、こんなに怒りが抑えられねえのは初めてだ」
頬を撫でる手がするりと胸ぐらを掴む。いやまさかなと思いながらも冷や汗が背筋を伝った。月明かりで徐々に顕になる十希夫の目は、明らかな怒気を持って名前を突き刺した。
「お前が無事な上で、黒澤弟が犯人を探してよ。それからどうしようが俺は良かったよ。お前、舐められてただで済ますような可愛い性格じゃねえのは解ってるからな。……でもな、ありゃあなんだ?死んだって構わねー!!?ふざけんじゃねぇぞ!!!」
グンッと引かれて締まる首に顔を歪めた。怒鳴られるのは慣れているけれど、凄まれるのも慣れているけれど、こんな真正面から全部ぶつけて怒りに来られるのは好誠さん以来でぎゅっと心臓が縮こまるような感じがする。
ただ、先程から抱く疑問が大きくなる。好誠さんは、私の兄のような男だ。十三は親のようであって、諭すように怒るし、幼馴染達は私を強く怒れない。そんな中で、あの人は私を正しい道に進ませる為に真正面から怒ってくれる貴重な人だ。
でも十希夫くんは?だって、十希夫くんは“鈴蘭の人”だ。無意識に一線だって引いてしまってる。なのに、一年の時もそうだけど何故ここまで怒ってくれるのか。何故、
『なんで、そこまで心配してくれるの?』
そう言うと、十希夫くんはびくりと震えて、胸ぐらを掴む力を少し緩めた。
『解らないよ、だって私は十希夫くんの後輩って言ったってただの知り合いでしょ。なんでそこまで怒ってくれるの』
十希夫はなるほどな、と内心頭を抱えた。名前が鈴蘭の連中に一線を引いているのは知っている。軍司達の世代でも、可愛がって貰っていたが完全に心は開いちゃ居なかった。クロサーは友達の兄だと言うのにたまに話していても目が笑っていないし、鈴蘭の生徒に後ろから話しかけられると物凄い勢いで振り向いてしまう所も見た事がある。
それが、今の所発動しないのは己と花のみだと解っていた。特に自分を見るや安心しきった顔をするのも。花の方の家に行くのは幼馴染が居るからで、クロサーの家に行くのは弟が居るから。でも、鈴蘭の人間の家に単体で行くのは、あんな気の抜けた顔で涎垂らして部屋で寝られるのは自分だけだと、解っていた。十希夫はそんな名前を素直ではないが本当に可愛く思っていたし、困っているのであれば助けたいと思っている。可愛い後輩を助けられるのは先輩の特権なので。
でも、名前は自覚がなかった。名前は鈴蘭全体に一線を引いていると思っていた。花も好きだし、先輩方もまぁ普通に好き。十希夫は、本当に、“兄ちゃん”でなく“先輩”だと。身内以外の信頼出来る人間が友哉しか居なかった名前に、十希夫の行動は解る筈もない。
これはもうちょっと恥ずかしいけれどちゃんと言うしかねえか、と、はぁ~~~~~~、とクソでかい溜め息を吐き出して、ゴツン!!!!と十希夫の額が名前の額に激突する。しかも押し付けたまま離さなかったので衝撃が逃げずにダイレクトに伝わり名前はギャッ!と悲鳴を上げた。押し付けられたままのおでこがヒリヒリする。
「お前にとっちゃただの知り合いでもな、俺にとっちゃお前は可愛い後輩なんでな」
『え゛』
「随分肝が冷えた。お前、解るか。そんな可愛い後輩がよ、殺されかけたんだ。許せると思うか」
『えっえっえっ』
「それでもし捕まってよ、マワされでもしてみろ。俺ァお前に触れた男、全員殺さなきゃならねえだろうが」
『え゛っっっっ』
とんでもねえ低い声で言われて恐怖と罪悪感が湧く。なんならまだ頭が痛ぇし涙がちょろっと出て来た。嘘、名前の両目からは脱水でも起こるんじゃないかというくらい涙が溢れ出ている。しかも十希夫は喧嘩の時は熱いが基本クールな男なので顔は一切の“無”。余計怖い。
「お前が楽しそうだからなんも言わねえだけだ、じゃなかったらお前に触れる男の全てを許す訳ねェだろうよ」
それは、完全に先輩と後輩を逸脱した発言だったけれど、二人共まだ気付いて居なかった。
「お前、名前が十希夫に連れていかれる時止めると思ったぜ」
「なんで?それが兄貴とか、そうね。幼馴染連中とか他の奴等なら止めてたかも。まだ話終わってないし」
「俺もかよ。十希夫は?」
「う~~~ん。……あのさぁ、俺十希夫さん巻き込んだ時、名前を狙ってた男のLINE見せたんだけど、なんて言ったと思う?」
皆名前は大丈夫なのか、とか。怪我の具合を聞いたり、その犯人に殺意を覚える奴等ばかりだった、それが当たり前。でも、十希夫は殺意を堪えながらも、言ったのだ。
“「で、名前はなんて言ってる」”
友哉は呆気に取られてしまった。心配の言葉だとか、そんなものはかけられると思っていたけれど、まさか鈴蘭のこの人が言うと思っていなかった、名前を知り尽くした発言だったから。
“「どうせ動くんだろう。あのじゃじゃ馬が、やられっぱなしの訳がねぇ」
「……俺が、動かせませんよ」
「無理に決まってるだろ。黒澤弟、お前は名前より力も強ぇし頭も良い。でも、アイツは大局を見据える能力に長けた……テッペンに居るのが似合う女だ。多分、お前が知らないだけでもう動いてるぜ」”
事実、それは本当の事だった。自分よりも付き合いが短い癖にと苛立ったのは否定しないが、十希夫が名前を引き摺って行った時安心したのもまた事実だった。
「アイツに足りないのは、身内以外の味方だからね。ま、多分あの人はそれだけじゃないけど」
「………………………………………………………………俺の部屋臭くなってねえかな」
「おいコラクソ兄貴お前不安になるようなこと言う……………………………………ちょっと見てくる」
「待て待て待て待て待て待て、流石に十希夫はそんな節操無しじゃねえから九里虎じゃあるまいし」
「お前等の世代を信用出来るか!!!!顔が悪いのブッチャーさんとお前と光義さん位だろうが!!!!アイツ遊んでてもおかしくねえぞ!!!」
「おうコラテメェ今実の兄の顔を悪いって言いやがったなそこに直れ」
「え?俺の顔が母さん似でめちゃくちゃ可愛い顔なの妬まないで貰っていいです?爺ちゃん似だもんなお前。厳つければなんでもいいと思うなよ」
「友哉ーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
「やんのかゴルァーーーーーーーーーッ!!!!!!」